信州大学 教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【解説】荒井英治郎「「多様な子どもを包摂するシステム(【逐条解説】2027 学習指導要領「諮問」①)」『教職研修』2025年5月号,35頁

【解説】荒井英治郎「「多様な子どもを包摂するシステム(【逐条解説】2027 学習指導要領「諮問」①)」『教職研修』2025年5月号,35頁


教育開発研究所から依頼をいただき、2027年の学習指導要領の改訂論議の前提となる「諮問」の中でも、「多様な子どもを包摂するシステム」に関して、背景と課題を論じました。

 

こちらは、以下の諮問文を踏まえての執筆となります。
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不登校児童生徒や特定分野に特異な才能のある児童生徒など、各学校が編成する一つの教育課程では対応が難しい子供を包摂するシステムの構築に向け、教育課程上の特例を設けること等についてどのように考えるか。
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今次の諮問では、「各学校が編成する一つの教育課程では対応が難しい」代表例として、多様な背景を有する不登校児童・生徒と、特定分野に特異な才能のある児童・生徒を並列に記載しています(同じ課題群として、特別支援教育対象や外国人の児童・生徒も想定されます)。
両事例は、学習活動や日常・学校生活に困難が生じやすい共通点を持ち、既存システムから排除される「マイノリティ」です。

 

それに対して、私からは、①「私的な問題」が「公共的な課題」として設定された点は、高く評価できること、②多様な子どもを包摂するシステムの構築は、教育課程の「特例」や「例外」対応だけで必要にして十分か、それとも既存システムそれ自体の再編をも伴うものとして再設計すべきか、議論の土俵の明確化が肝要となること、③「多様」な個性・特性・背景を有する子どもに対して、「特別」な内容や方法を用いることは、どのような根拠から正当化されるのか、学校から社会に移行した彼女らにとって、「特例」として受けた教育や学んだ事柄が社会的にどのような意味を持ち、社会は「可能性が開花した」彼女らの存在を共感的に受けとめていくことができるのか、学校段階間や学校と社会をつなぐ制度設計や、社会的合意形成のあり方も射程に含めた議論の展開が期待されること、④本諮問テーマは、教育課程の質量、領域固有で多様な「才能」や「個性」(得意や困難)を評価する視点と制度構築の要・不要に留まらない、「多様性」と「包摂性」のジレンマという普遍的な問いを、私たち市民へ投げかける挑戦状ともなっていることを指摘しました。

 

ご関心のある方は、ぜひご笑覧下さい。

 

引き続きよろしくお願いします。