信州大学 教育基盤構築センター 荒井英治郎研究室

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「学校改革をすすめる校長研修のありかたワーキンググループ」

本日の午前中は、「学校改革をすすめる校長研修のありかたワーキンググループ」(長野県教育委員会事務局 学びの改革支援課)の第2回会合。

 

従来の知識伝達型から脱却し、学校改革をマネジメントする校長を育成するための新しい研修体系や改善案について議論が行われていて、末席に加えさせていただいております。

 

私からは、年間を通じた探究プロセスの構築や、現場の課題を的確に把握する「アセスメント能力」、関係者の合意形成を図る「ケースメソッド」の重要性、新任校長の孤独感を解消するためのメンター制度やピア・ラーニングといった伴走支援の仕組みづくりなどについて話題提供させていただきました。

 

提案のコアは、校長研修を「知識や技能を習得する場」から「学校改革を継続的に実践し、省察する仕組み」へと転換することにあります。特に、重要なのは、校長自身の成長を研修の最終成果とせず、教職員との関係性や学校の組織文化の変化、さらには子どもの学びの改善までを視野に入れる点です。その意味で、今後の検討では、「どのような研修を実施するか」という内容・方法の議論に加えて、「研修を通じて学校にどのような変化を生み出すのか」という成果の議論を深める必要があります。

 

今後、校長個人の学びにとどまらず、教職員の協働や組織全体の変容へとつなげるための具体的な方策が検討されていることを切に願っています。


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●「校長が学ぶ研修から、学校が学び続けるための研修」
(校長個人の能力向上を目的とする研修から、学校組織の変革につながる研修への転換)

 

[研修デザイン上のポイント]


①年間の研修を一つの学習プログラムとして構造化すること

・今回の案では、春期研修で自校の学校づくりのテーマを設定し、秋期研修で実践 を交流する構想が示されている。この方向性をさらに発展させ、春期に課題を設定 し、校内で実践し、マネジメント研修で中間省察を行い、秋期に実践を交流するとい う、一連の探究プロセスとして設計してはどうか。
・研修を個別の機会として捉えるのではなく、年間を通じて学校改革を進める仕組 みとして位置付けることが重要。

 

②校長に求められる3つの資質能力を、一体的に育成すること

・今回の案では、ファシリテーション能力やマネジメント能力の育成については具体 的な内容が示されているが、アセスメント能力の育成については、まだ検討の余地 がある。
・学校の現状をデータや関係者の声から的確に把握し、教職員との対話を通じて 課題を共有し、組織として改善を進める。この一連の過程を経験できる研修が望ま しい。

 

③校長個人の能力形成と学校組織の変容を結び付けること

・校長が新しい知識や方法を獲得するだけでは、学校は必ずしも変わらない。
・校長の学びが教職員との関係性や組織文化の変化につながり、最終的に子ども たちの学びや育ちに還元されることが、研修の本来の目的。
・したがって、研修の成果についても、参加者の満足度や理解度だけではなく、研 修後の行動変容や学校経営上の変化を捉える仕組みが必要ではないか。

 

④校長の孤独を解消するための継続的な支援体制を具体的に構想すること

・校長同士の交流や情報交換の機会を設けることには意義があるが、日常的な悩 みや困難を安心して相談できる関係性は、単発の研修だけでは形成されにくい。
・郡市校長会との連携を進める上で、研修機会の提供とともに、校長同士のピア・ ラーニングなど、年間を通じた伴走支援の仕組みを検討すべきではないか。
・校長研修の改革は、研修内容や方法の変更にとどまるものではない。これからの 学校改革に必要な校長像とは何か、その校長像を実現するために、どのような経 験や学習機会が必要なのかを問い直す取り組みでもある。その意味で、校長にな る前のキャリア形成まで視野に入れた、連続性のある育成体系の構想が重要。

 

[方向性]
→研修の目的を知識の獲得だけに置かず、自校の実践を変えることに置く

 

①校長育成指標とすべての研修を結び付ける。

②研修内容を「学ぶべき内容」「学びたい内容」「県の施策展開に必要な内容」に分 類する。

③講義・対話・省察を一体化する。

④ケースメソッドを導入し、実践的な判断力を育成する。 ⑤県教育委員会と郡市校長会の役割を明確化する。

 

[ポイント]


①研修を年間の探究プロセスとして設計する

・4つの研修を個別に実施するのではなく、「課題設定→校内実践→中間省察→実践交流→次年度への改善」という一連の学習過程として構造化する。研修と日常の学校経営を結び付けることが重要。

 

②校長に必要な3つの能力を一体的に育成する

- アセスメント能力:学校の現状や課題を的確に把握する。
- ファシリテーション能力:教職員の対話と協働を促す。
- マネジメント能力:人的・物的資源を調整し、組織を動かす。

 

③ケースメソッドを通じて、正解のない問題に対応する力を育てる

・単なる判断の練習ではなく、価値観や利害が対立する「適応課題」への対応力を育成する。重要なのは、唯一の正解を見つけることではなく、多様な立場を理解し、納得解を形成する過程。

 

④多様な教職員を生かす組織づくりを重視する

・「若者文化への理解」を、世代・経験・専門性の違いを生かす組織マネジメントへ発展させる。心理的安全性、教職員の主体性、働き方改革、人材育成を一体的に考える必要がある。

 

⑤校長の孤独を解消する継続的な支援を整備する

・ 研修時の交流だけでは不十分。メンター制度、少人数のピア・ラーニング、オンラインでの実践共有、安心して相談できる窓口など、年間を通じた伴走支援が求められる。

 

⑥研修成果を校長の行動と学校組織の変化から評価する

・研修の満足度や知識の習得だけではなく、校長の行動変容、教職員の協働、学校の組織文化の変化を把握する。既存の学校評価等を活用し、評価のための事務負担を増やさない工夫も必要。

 

⑦校長就任前からの連続的な育成体系を構想する

・校長になってからの研修だけでなく、ミドルリーダー、教頭・副校長、校長登用前、新任校長、経験校長という各段階に応じた育成を体系化する必要がある。

 

[論点]

01 研修の連続性

年間を通じて、自校の改革課題を探究し続ける仕組みを構築できるか。

02 個人の学びから組織の変容へ

校長の能力向上を、教職員の協働や子どもの学びの改善にどう結び付けるか。

03 自律性と継続的支援の両立

校長自身が研修課題を選択できる仕組みと、孤立させない伴走支援をどう実現するか。
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【コメント】「何のためのキャリア教育か」@第2回飯田市みらい創造教育研究委員会

【コメント】「何のためのキャリア教育か」@第2回飯田市みらい創造教育研究委員会

 

2026年10月26日、第2回飯田市みらい創造教育研究委員会の場で、「何のためのキャリア教育か」と題したお話をオンラインでさせていただきました。

 

キャリア・パスポートが、児童生徒に対して「将来の夢を持つこと」や「前向きな成長を記述すること」を暗黙に要求するものとなれば、かえって自己理解を狭める危険があります。

 

改めて、キャリア形成とは、目標に向かって一直線に進むことだけではなく、迷い、葛藤、失敗、方向転換もまた重要な経験であるという理解を丁寧に共有していくことが重要だと感じています。

 

やはり問われるのは、大人が、子どもの成長を、どう捉えるのか、です。

 

貴重な機会を、どうもありがとうございました。

 

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●キャリア・パスポートが抱える5つの課題

課題① 記録の形式化・形骸化
・学期末や年度末に、決められた項目を記入するだけの活動になりやすい。過去の記録を読み返し、自分の経験を捉え直す活動が十分に組み込まれていない。
・中学生で、教科の学習と関連付けて活用している生徒は26.7%、授業外で自主的に読み返している生徒は10.8%にとどまる。

課題② 教員の負担と活用方法の不明確さ
・中学校の学級担任調査では、48.4%がコメントを書く時間の不足、44.7%が活用方法の不明確さを課題としている。
・教員にとって、キャリア・パスポートが新たな事務作業になっている可能性がある。

課題③ 教科学習・探究活動との接続不足
・小学校では、キャリア・パスポートに教科学習の記録や振り返りを含めている学校は45.9%である。
・学校行事等の記録に偏り、日常的な授業や探究活動における学びとのつながりが十分ではない。

課題④ 校種間の接続と継続性の不足
・小・中・高を通じて記録を引き継ぐことが想定されているが、紛失、様式の相違、引き継いだ記録の未活用等が課題となっている。
・さらに、教員の異動や担当者の変更によって、学校における取組の継続性が損なわれるおそれもある。

課題⑤ 子どもの多様性への対応
・将来の夢、目標、成功体験等を一律に記入させることが、すべての子どもに適しているとは限らない。
・不登校の子ども、障害のある子ども、将来の見通しを描きにくい子ども等については、記録の方法や内容を柔軟に調整する必要がある。
・また、個人的な悩みや家庭状況を含む記録について、本人の意思に反した共有や評価への転用を避けることが重要である。
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●今後の展望と改善の方向性

①「記録の蓄積」から「対話を通じた意味付け」へ

・子どもが書いた内容に対して、大人が正解や評価を与えるのではなく、その経験の意味を一緒に考えることが重要となる。
・例えば、「何ができたか」だけでなく、「何に気付いたか」「何を大切にしたいと考えたか」「以前と考え方がどう変わったか」といった問いを重視する。
・キャリア・パスポートを、教師と子ども、子ども同士の対話を促す教材として再定位する必要がある。

②「特別活動中心」から「教育課程全体との接続」へ
・特別活動を要としつつ、教科学習、総合的な学習・探究の時間、学校行事、地域活動等での学びをつなぐことが求められる。
・とりわけ探究活動との相性はよい。探究のテーマ設定、試行錯誤、他者との協働、振り返りといった経験を、自分自身の成長や生き方と結び付けられるためである。

③紙の記録から、柔軟なデジタル・ポートフォリオへ
・2025年度調査では、デジタル化したキャリア・パスポートを用いている高等学校は19.8%であった。
・今後は、一人一台端末等を利用した継続的な記録、写真・動画・音声等による多様な表現、過去の記録の検索・比較などが期待される。
・ただし、デジタル化そのものを目的化してはならない。本人が記録の閲覧・共有を主体的に管理できる仕組みや、校種間で安全に引き継ぐ仕組みの整備が前提となる。

④「将来の職業」から「自分らしい生き方」へ
・キャリア・パスポートを職業選択のための準備資料に限定せず、子どもが自分の興味関心や価値観、他者との関係、社会とのつながりを考えるための教材へと発展させる。
・将来の夢が決まっていなくてもよい。目標が変わってもよい。
・そうした柔軟性を保障することが、子どもの主体的なキャリア形成につながる。

⑤「学校だけの記録」から「学習生態系全体の記録」へ
・今後は、学校での学びに加え、地域活動、ボランティア、スポーツ・文化活動、フリースクール等での経験を含め、多様な学びを本人の意思に基づいて記録できる仕組みが重要となる。
・これにより、学校に適応しているかどうかにかかわらず、子ども自身の成長や学びの連続性を確認できる可能性がある。

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【書評】アンディ・ハーグリーブス他『学校のウェルビーイング』『月刊高校教育』2026年11月号,43頁

【書評】アンディ・ハーグリーブス他『学校のウェルビーイング』『月刊高校教育』2026年11月号,43頁

 
このたび学事出版さんの『月刊高校教育』(2026年11月号)に、ハーグリーブスらの『学校のウェルビーイング』の書評を執筆させていただきました。
 
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b673582.html


本書は、現代の教育現場において広く語られる「ウェルビーイング」という概念を、単なる個人の幸福感や心理的ケアとしてではなく、学校教育のあり方そのものを根本から問い直すための教育改革論として提示したものです。

著者は、テストの点数や数値目標ばかりを重視してきた従来のグローバルな改革動向が、子どもや教師を疲弊させてきたと鋭く批判するだけでなく、貧困や過度な競争といった構造的な問題を放置したまま個人の努力に還元する風潮に警鐘を鳴らし、ウェルビーイングを人間関係や社会経済的条件まで含む包括的な概念として捉え直す試みを行っています。

そして、これからの学校教育を支える柱として、3つの方向性(①「すべての人の繁栄」、②「テクノロジーの倫理的活用」、③「自然とのつながりの回復」)を提示し、ウェルビーイングは単なる学力向上のための道具や代替品ではなく、子どもや教師だけでなく社会や地球全体がともに豊かに生きるための新たな改革原理として提起するに至っています。

ここでのウェルビーイングを支える「三つの力」とは次のようなものです。
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① すべての人の繁栄(Prosperity for All)

経済成長や学力向上を社会・教育の成功と同一視せず、貧困や不平等の改善、すべての人の尊厳と生活の質を重視する。

② テクノロジーの倫理的活用(Ethical Technology Use)

技術の導入自体を目的化せず、学び、人間関係、健康、主体性に与える影響を踏まえて活用を判断する。

③自然とのつながりの回復(Restorative Nature)

自然との直接的な関わりを通して、心身の健康のみならず、環境への責任や持続可能な社会の形成を重視する。
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この3つは、学校内部の教育実践だけでは完結するものでなく、ウェルビーイングを社会経済、技術、自然環境との関係から捉える枠組みです。

また、本書では、「子どもをいかに幸福にするか」という問いを超えて、「すべての人がよりよく生きるために、学校はどうあるべきか」を問いを設定しています。

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①ウェルビーイングは、子ども個人の心理的な問題だけでなく、学校や社会の制度・環境によって左右される。
②ウェルビーイングは、学力向上のための手段ではなく、教育の目的そのものを問い直す原理である。
③ウェルビーイングの実現には、個人への働きかけだけでなく、学校文化や教育制度、社会構造の変革が必要である。
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本書から導かれる実践的・政策的示唆は、次の5点です。
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①「子どもを変える支援」から「子どもを取り巻く環境を変える支援」へ転換すること。

②学力向上とウェルビーイングを対立させず、双方を教育の本質的な目的として位置づけること。

③ウェルビーイングを個人の幸福感だけで測定せず、学校への所属感、意思決定への参加、学びの選択可能性、関係性などを含めて評価すること。

④子どものウェルビーイングと教師のウェルビーイングを切り離さず、学校組織や働き方改革を含めて検討すること。

⑤学校だけにウェルビーイング実現の責任を負わせず、行政、福祉、地域社会などとの共同責任として捉えること。
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本書の最大の意義は、ウェルビーイングを「子どもを幸福にするための教育技法」ではなく、「教育の目的と学校改革の価値基準を問い直す概念」として提示したことにあります。

このことは、子ども個人にポジティブな思考やレジリエンスを身につけさせることだけでは実現できず、子どもを取り巻く学校環境、社会制度、人間関係を変革することが不可欠であることを示唆しています。さらに、ウェルビーイングを測定可能な新しい成果目標に置き換えるだけでは、従来の学力中心・成果管理型改革の論理を乗り越えることはできません。

本書の核心は、ウェルビーイングを高める方法論の提示ではなく、「何をもってよい学校、よい教育、よい社会とするのか」という価値判断そのものの再検討にあるといえます。

ウェルビーイングを単なる個人の幸福感や心理的健康として捉えるのではなく(ウェルビーイングの「脱心理学化」)、教育の目的、学校制度、社会構造、自然環境との関係から捉え直すべきだという主張を私たちはどのように受け止めるべきでしょうか。


興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。

 

【連載】荒井英治郎「政策トレンド30(連載「働き方改革を『アンラーン』する 第43回)」『内外教育』第7358号,2026年10月6日,12-14頁

【連載】荒井英治郎「政策トレンド30(連載「働き方改革を『アンラーン』する 第43回)」『内外教育』第7358号,2026年10月6日,12-14頁

 

時事通信社の『内外教育』誌上で、「働き方改革を『アンラーン』 する」と題した連載をさせていただいております。


https://edu-naigai.jiji.com/article/category/4
 
第43回のテーマは、「政策トレンド30」 として、2020年3月公表され、2025年3月に改訂されている「学校体育施設の有効活用に関する手引き」に着目して、学校プールをめぐる課題を、単なる施設管理の問題としてではなく、教員の働き方改革や地域資源のあり方を見直すという視点から論じました。

https://edu-naigai.jiji.com/article/3548

ポイントは、以下の通りです。
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●学校プールの管理は、特定の教員や校長に過度に依存させず、学校設置者が組織的な管理体制を構築することが基本とされること。自動給水停止システム、複層的チェック、管理員配置、民間委託等が選択肢となること。 

●学校体育施設は、学校教育だけの施設ではなく、地域スポーツ、健康づくり、地域コミュニティー形成を支える「公共資源」へ転換することが求められていること

●学校施設開放では、学校・教育委員会・首長部局・地域団体・民間事業者の役割と責任を明確化し、教職員に利用調整、鍵管理、料金徴収、清掃等を残さない仕組みが重要となること。    

●千代田区、浦添市、一宮市等では、民間委託、シルバー人材センター、指定管理者制度によって、教員のプール管理負担を軽減していること。

●新改築時には、学校専用施設としてではなく、地域利用を前提とした動線、安全管理、バリアフリー、屋内温水化、PFI等を含む施設設計が重要となること。
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 文部科学省とスポーツ庁は、学校教育の負担軽減と働き方改革を推進するため、学校プールの管理や学校体育施設について教員が単独で担う仕組みからの脱却を求めています。

 学校プールの管理には、水質管理や清掃、設備の点検、事故への対応など、さまざまな仕事があります。こうした仕事を一人ひとりの教員に任せるこれまでの仕組みには、やはり限界があります。そこで、指定管理者制度や業務委託、専門職員の配置、ICTや自動化などを組み合わせながら、学校設置者が組織として管理する仕組みに変えていく必要があります。

また、学校の体育施設は、全国のスポーツ施設の中でも大きな割合を占めており、地域にとって重要な資源でもあります。そのため、学校だけが使う施設として考えるのではなく、地域のスポーツや健康づくり、地域の人たちがつながる場として活用していくことも大切です。

ただし、地域の人たちに開放する場合には、児童生徒と一般利用者の動線を分けることや、水深や利用者の年齢への配慮、監視体制の整備、衛生管理や熱中症対策など、安全面への十分な配慮が欠かせません。

これからは、学校プールを新しくつくったり改修したりする段階から、地域での利用も視野に入れて設計していくことが求められます。学校の教育活動に支障が出ないようにしながら、複数の学校でプールを共有したり、地域のプールとして活用したりする方向を考えていくことが重要となります。


ご関心のある方はぜひご一読ください。

 

 

 

【連載「コンパス」第55回】「課題に対し求められる向き合い方─意見聴き合い 試行錯誤」

【連載「コンパス」第55回】「課題に対し求められる向き合い方─意見聴き合い 試行錯誤」

 

「適応課題」に向き合うとは、答えを出すことを諦めることではない。完全な答えを条件反射的に示さなければならないという思い込みを手放し、対話と試行を重ねることである。

 

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 2026年10月12日付の『信濃毎日新聞』の「教育面」(コンパス)に、第55回目の連載原稿を寄稿しました。

 今回のテーマは、「2つの課題に向き合う際の組織の健全性」です。

 学校が直面する課題は、既存の知識や手順で対処できる「技術的問題」と、人々の価値観や行動様式の変革を伴う「適応課題」の2つに大別されます。

 不登校支援などの複雑な問題において、適応課題を誤って技術的処理だけで済ませてしまうと、表面的な解決にとどまり本質的な現状改善に至りません。

 本当の「解決」には、即座に出す答えへの固執を手放し、対話と試行錯誤を通じて当事者の関係性や自身の姿勢を問い直すことが不可欠となります。

不確実性や不安を引き受けてこのような適応課題に向き合う姿勢こそが、学校組織の真価を問い直し、新たな学校文化を築く鍵となると考えています。

 関心・興味のある方がいらっしゃいましたら、ご一読いただき、ご感想・ご意見をお寄せください。

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【連載「コンパス」第55回】「課題に対し求められる向き合い方ー意見聴き合い 試行錯誤」

 学校は、日々さまざまな課題に直面する。学力保障、DX対応、不登校支援、保護者との関係づくり。これらは「解決すべきもの」として並列に扱われがちである。しかし、事柄の性質に応じて求められる取り組みや向き合い方は一様ではない。


 リーダーシップ研究で知られるロナルド・ハイフェッツらは、組織が直面する課題を考える際、「技術的問題」(Technical Problems)と「適応課題」(Adaptive Challenges)を区別する。ポイントは、一つの課題に両者が併存することも多い点である。


 「技術的問題」とは、既存の知識や方法、専門性や権限を用いて対応可能な問題である。例えば、ICTツールの操作を新たに学ぶためには、専門知識の習得や手順の整備が有効であり、課題解決の担い手や道筋は比較的明確である。


 一方、「適応課題」は、既存の方法だけでは対応できず、人の価値観や行動様式の変化を要する問題である。当事者が自らの信念や習慣、他者との関係性を問い直し、新たな対応能力を磨いていく必要があるため、当事者の参加が不可欠となる。


例えば、不登校支援であれば、場やスタッフの確保に加え、子どもの声を聴いて関わり方を調整しているか、登校を関係形成の条件としていないか、出席日数の増加だけを成果と捉えていないかが問われることになる。試行錯誤の過程では、思考も錯誤し、自らの認識の誤りや偏りに気づかされることもある。こうなると、支援する側は、自らの認識や振る舞いを問い直さざるを得ない。


ところで、陥りがちな罠は、「適応課題」を「技術的問題」として処理してしまうことである。問題の所在を他者にのみ求めれば、自らを問わずに済む。しかし、その結果、課題解決に向かっているつもりでも、現状維持につながっていることがままある。


登校につながる手だてだけに着目していては、子どもが何を望み、周囲との関係をどう受けとめているかという、子どもの意味世界を見落としかねない。子どもの自己決定を尊重し、社会的自立を支える場合も、「子ども」と「大人」という関係性そのものを問い直さなければ、そのコミュニケーションは「定型業務」の範疇にとどまりかねない。


「適応課題」に向き合うとは、答えを出すことを諦めることではない。完全な答えを条件反射的に示さなければならないという思い込みを手放し、対話と試行を重ねることである。この営みには、慣れ親しんだ実践を否定されたように感じる不安や、大切にしてきた価値を失う痛みも伴い得る。だからこそ、他者と共に、何を続け、何を変えるかを問い、異なる意見を聴き合える場づくりが必要となるのである。


組織の健全性と真価が問われるのは、揺らぎや不確実性を引き受け、「適応課題」に向き合うときである。技術的な対応を生かしつつ、対話や内省を積み重ねること。それが、子ども理解を深め、学校風土や学校文化を更新する契機となる。

(あらい・えいじろう 信州大教育基盤構築センター准教授)

 

【フィードバック】「教職員の「働きがい」と「働きやすさ」を両立していくためにできること」@「活き活き×やりがい職場調査」フィードバック

【フィードバック】「教職員の「働きがい」と「働きやすさ」を両立していくためにできること」@「活き活き×やりがい職場調査」フィードバック


2026年9月25日と10月8日の2日間、長野県教育委員会と協働して実施している「活き活き×やりがい職場調査」に関して、参画いただいた学校に対するフィードバックを行いました。

ストレスチェックが「個人」に対する健康診断であるとするならば、「活き活き×やりがい職場調査」は、学校組織に対する健康診断となります。

私は、教職員の「働きがい」と「働きやすさ」の両立を目指し、学校の働き方改革をWHY(なぜ)、WHAT(何を)、HOW(どのように)の3つの視点から整理することが多いです。

①働き方改革では、業務の「贅肉」を削減しつつ、教育活動の質を支える「筋肉」を維持・強化することが重要であること。
②長時間労働の背景にある職場環境や組織文化を見直し、業務の外部化・分業化・協業化とともに、効率と効果の両面から改善を進める必要があること
③個人の努力に依存せず、心理的安全性、相互承認、信頼関係、対話を基盤とした組織開発が求められること。

働き方改革を単なる時間削減にとどめず、教職員が活き活きと働き、専門性を発揮できる持続可能な学校組織への転換として位置付けるべく、現在地を踏まえて次の一歩をどう踏み出すか、その一助になればと思っております。

ご参加いただいた先生方、ありがとうございました。

 

 

連載】荒井英治郎「政策トレンド30(連載「働き方改革を『アンラーン』する 第43回)」『内外教育』第7358号,2026年10月6日,10-12頁

連載】荒井英治郎「政策トレンド30(連載「働き方改革を『アンラーン』する 第43回)」『内外教育』第7358号,2026年10月6日,12-14頁

 

時事通信社の『内外教育』誌上で、「働き方改革を『アンラーン』 する」と題した連載をさせていただいております。


https://edu-naigai.jiji.com/article/category/4
 
第43回のテーマは、「政策トレンド30」 として、2020年3月公表され、2025年3月に改訂されている「学校体育施設の有効活用に関する手引き」に着目して、学校プールをめぐる課題を、単なる施設管理の問題としてではなく、教員の働き方改革や地域資源のあり方を見直すという視点から論じました。

 

https://edu-naigai.jiji.com/article/3548

 

ポイントは、以下の通りです。
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●学校プールの管理は、特定の教員や校長に過度に依存させず、学校設置者が組織的な管理体制を構築することが基本とされること。自動給水停止システム、複層的チェック、管理員配置、民間委託等が選択肢となること。 

●学校体育施設は、学校教育だけの施設ではなく、地域スポーツ、健康づくり、地域コミュニティー形成を支える「公共資源」へ転換することが求められていること

●学校施設開放では、学校・教育委員会・首長部局・地域団体・民間事業者の役割と責任を明確化し、教職員に利用調整、鍵管理、料金徴収、清掃等を残さない仕組みが重要となること。    

●千代田区、浦添市、一宮市等では、民間委託、シルバー人材センター、指定管理者制度によって、教員のプール管理負担を軽減していること。

●新改築時には、学校専用施設としてではなく、地域利用を前提とした動線、安全管理、バリアフリー、屋内温水化、PFI等を含む施設設計が重要となること。
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 文部科学省とスポーツ庁は、学校教育の負担軽減と働き方改革を推進するため、学校プールの管理や学校体育施設について教員が単独で担う仕組みからの脱却を求めています。

 学校プールの管理には、水質管理や清掃、設備の点検、事故への対応など、さまざまな仕事があります。こうした仕事を一人ひとりの教員に任せるこれまでの仕組みには、やはり限界があります。そこで、指定管理者制度や業務委託、専門職員の配置、ICTや自動化などを組み合わせながら、学校設置者が組織として管理する仕組みに変えていく必要があります。

また、学校の体育施設は、全国のスポーツ施設の中でも大きな割合を占めており、地域にとって重要な資源でもあります。そのため、学校だけが使う施設として考えるのではなく、地域のスポーツや健康づくり、地域の人たちがつながる場として活用していくことも大切です。

ただし、地域の人たちに開放する場合には、児童生徒と一般利用者の動線を分けることや、水深や利用者の年齢への配慮、監視体制の整備、衛生管理や熱中症対策など、安全面への十分な配慮が欠かせません。

これからは、学校プールを新しくつくったり改修したりする段階から、地域での利用も視野に入れて設計していくことが求められます。学校の教育活動に支障が出ないようにしながら、複数の学校でプールを共有したり、地域のプールとして活用したりする方向を考えていくことが重要となります。


ご関心のある方はぜひご一読ください。