2026年9月16日、ご縁をいただいた北海道有朋高等学校+北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)へお邪魔させていただきました。
北海道有朋高等学校は、多様な学習歴・生活背景をもつ生徒をケアしている学校であり、北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)は道内の小規模校・離島校へ教育資源を届ける広域的な配信拠点として位置付けられているセンターです。
短時間の訪問ながら、教育の本質と教師たる存在の関係的意味とは何たるかを改めて考えさせられる、極めて有意義な時間となりました。
①「教育機会の量」の拡大と「教育の質」の保障との関係(科目開設だけでなく、生徒が理解し、参加し、進路実現につなげられたか)
②柔軟性と伴走支援の関係(生徒が自分のペースで学べる一方、自己管理の困難から学習が停滞するリスクに対してどのようなケアがなされているのか)
③学校を単独組織としてではなく、ネットワークとして捉える視点(有朋高校の実施校・協力校方式とT-baseの配信校・受信校方式という教育資源を学校間で共有する制度の成果は、中心となる学校の力量のみならず、各学校の役割分担、情報共有、責任関係の設計に左右される)
など、引き続き「分有」概念について理解を深めていきたいです。
改めてご縁をいただきました坂本建一郎さんに心から感謝申し上げます。
以下、メモ。
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●北海道有朋高等学校の特徴
(1)2つの課程を併設する公立高校
・有朋高校には、次の2課程(単位制による定時制課程、通信制課程)が置かれている。
・単位制課程は3部制の完全単位制で、生徒が自らの生活状況や進路希望に応じて時間割を組むことを基本とする。学年ではなく、修得単位を積み上げて卒業を目指す仕組み。
・通信制課程では、「リポート」「スクーリング」「テスト」が学習の3本柱。毎日の登校を前提としないため、健康、仕事、家庭事情、不登校経験などを抱える生徒にも学びを継続しやすい。
(2)北海道全域を対象とする通信制教育
・札幌市の有朋高校を「実施校」とし、道内32校を「協力校」とする広域的な仕組みを構築している。生徒は原則として居住地に近い協力校でスクーリングを受けることができる。
・担任は札幌の実施校に所属し、協力校の教員は面接指導日の対応を担う。このため、本校と協力校の間で、学習状況、生徒理解、相談情報をどのように共有するかが運営上の重要点となる。
(3)多様な年齢・学習歴の生徒を受け入れる学校
・中学校時代に不登校であった生徒、高校を中途退学した者、就労しながら学ぶ者、学び直しを求める成人など、多様な背景の学習者を受け入れている。
・新入学だけでなく、転入学、編入学、再入学、一部科目履修にも対応。教育や社会につなぐ「セーフティネット」としての性格あり。
(4)学習・心理・進路を統合した支援
・通信制課程では、近年、3領域(①学習支援、②心理・相談支援、③キャリア・進路支援)を切れ目なくつなぐ支援体制の整備が進められている。
・大学生等の学習指導員、公認心理師等による相談、オンライン相談、地域若者サポートステーション等との連携を通じて、リポートの未提出や欠席を単なる学習上の問題として処理せず、その背景にある心理的・社会的要因を捉えようとしている。
(5)制度上の自由度と自己管理の難しさを併せもつ
・登校頻度や履修方法の柔軟性は大きな利点。一方、学習計画の作成、リポート提出、スクーリング出席などについて、生徒自身に相当程度の自己管理が求められる。
・従って、制度上の柔軟性だけでなく、「困ったときに誰かとつながれる仕組み」「小さな停滞を早期に把握する仕組み」が教育成果を左右する。
私からは、北海道有朋高等学校に対しては、①生徒像と入学経路、②教育課程・学習設計、③生徒支援、④協力校との連携、⑤学習評価・卒業・進路、⑥今後の制度設計についてイメージを膨らませることができました。
●北海道高等学校遠隔授業配信センターの特徴
(1)小規模校・離島校の教育条件を保障する道立の配信拠点
・T-baseは、北海道有朋高等学校内に2021年4月に設置。教員配置の少ない小規模校や離島校に対し、専門教員が遠隔授業を配信する仕組み。
・目的は、単純な教員不足への対応ではなく、居住地域にかかわらず、大学進学から就職までの多様な進路希望に対応できる科目を保障することにある。
(2)道内35校を結ぶ広域ネットワーク
・2026年度の受信校は35校で、内訳は地域連携校33校、離島校2校。宗谷、根室、檜山、オホーツクなどを含む、広域かつ人口分散型の北海道に適した教育インフラ。遠隔授業は2021年度の第1学年から開始され、2023年度に全学年への配信体制が整備。
(3)専任教員による継続的な授業配信
・配信専任教員を配置し、受信校の教育課程に組み込まれた正規の授業を継続的に配信する「配信拠点型」。
・映像教材を視聴させるだけではなく、配信教員と受信校の生徒がリアルタイムでやり取りする同時双方向型の授業を基本とする。生徒の反応や理解度をどのように見取るかが、授業設計上の中心課題となる。
(4)対面授業と遠隔授業の組合せ
・遠隔授業だけで完結させず、配信教員が受信校を訪問する対面授業も実施している。これにより、生徒との関係形成、実験・実習、学習状況の直接把握を補完している。遠隔と対面を二者択一とせず、両者を組み合わせて教育効果を高めている点が重要。
(5)授業配信を超えた進路支援
・通常授業に加えて、夏季・冬季・春季の講習、進路情報の提供、公務員ガイダンス等を実施。
・T-baseは「授業の配信所」というより、小規模校のカリキュラムと進路支援を補完する広域的な教育センターとして捉えるべき。
(6)遠隔授業の専門性を蓄積する研究拠点
・教員同士による授業公開や研究協議を行い、遠隔授業の方法を継続的に改善している。現在は、生徒の手元や学習過程の把握、動機付け、生成AIを活用した授業改善などにも取り組んでいる。
・一方、受信校の増加に伴い、配信スペース、専任教員の確保、時間割調整、対面授業に伴う出張などが課題。
私からは、①設置目的・政策的位置付け、②配信科目・教育課程、③授業づくりと生徒の見取り、④配信教員と受信校教員の役割、⑤効果検証、⑥教員組織・研修、⑦運営上の課題と将来構想について想いを馳せる時間となりました。