信州大学 教育基盤構築センター 荒井英治郎研究室

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【トーク】「主体性は、どのように育まれるのかー「個人」から「関係性」へー」@「生徒が主体性を育む交流会(長野県松本深志高等学校)

【トーク】「主体性は、どのように育まれるのかー「個人」から「関係性」へー」@「生徒が主体性を育む交流会(長野県松本深志高等学校)


2026年10月3日(土)、「生徒の主体性を育む交流会」を松本深志高等学校にて対面で開催いたしました。
 
当該交流会は、長野県高等学校長会の生徒の主体性を育む専門委員会と長野県教育委員会学びの改革支援課が共催している企画でして、信州大学教育基盤構築センターは連携パートナーとして関わらせていただきました。


今年度は実行委員会、当日参加者、そして、生徒に伴走する大学生メンターを合わせて、過去最大規模で開催する運びとなり、6つのテーマに分かれて議論を行い、最後はプレゼンテーションしていただきました。
 

私からは最後にお時間を頂戴して、「主体性は、どのように育まれるのかー「個人」から「関係性」へー」と題して、学校における生徒の主体的な学びやキャリア形成を支援するための心理的な条件など、主体性の育み方とチップスについて話題提供させていただきました。


本日の議論の成果は、今年の12月24日に開催される長野県議会の皆様との「対話」(『こんにちは県議会です』)にもつながるものとして位置付けられています。
 
関係者の皆様、終日お疲れ様でした。

 

【話題提供】「不登校支援の質を考えるー制度のストレッチとアンラーンー」@NPO法人カタリバ「みんなの不登校支援ダイアログ2026」

【話題提供】「不登校支援の質を考えるー制度のストレッチとアンラーンー」@NPO法人カタリバ「みんなの不登校支援ダイアログ2026」

 

2026年9月27日、NPO法人カタリバさん主催の「みんなの不登校支援ダイアログ2026」の分科会①「公教育で、不登校の子どもを受けとめるにはー不登校の子どもを包摂する学校・地域のあり方を考える─」にて、「不登校支援の質を考えるー制度のストレッチとアンラーン─」と題した話題提供をさせていただきました。

 

既存の教育制度や思考の枠組みを解体して学び直す「アンラーン」の重要性を説きつつ、長野県の信州型フリースクール認証制度等の挑戦事例をご紹介いたしました。

 

極めて限られた時間ではありましたが、課題の捉え方とそれに対するアプローチのエッセンスをお伝えすることはできたのではないかと思います。

 

貴重な機会をどうもありがとうございました。

 

【講演】「多様で多層な学びの「仕組み化」の方法ー公教育制度のストレッチとアンラーンー」@彩の国共育研究サークル学びの杜

【講演】「多様で多層な学びの「仕組み化」の方法ー公教育制度のストレッチとアンラーンー」@彩の国共育研究サークル学びの杜

 

2026年9月26日、「彩の国共育研究サークル学びの杜」様からご依頼いただき、「多様で多層な学びの「仕組み化」の方法ー公教育制度のストレッチとアンラーン─」と題した講演をオンラインでさせていただきました。

 

主なテーマは、日本の公教育制度の特徴を踏まえつつ、固定観念を捉え直すことで、いかにして多層的で多様な学びをシステムとして組み込むことができるのか、というものでした。

貴重な機会をありがとうございました。

 

 

 

【コメント】研究開発制度@大阪教育大学附属平野小学校

2026年9月17日、国の研究開発制度の仕事として、大阪教育大学附属平野小学校の取り組みについて僭越ながらコメントさせていただきました。


 当該取り組みは、教科横断的な学習を題材や活動の共通性にとどめず、各教科で形成する概念と、概念形成に至る方略の両面から検討を加えていくという大きなチャレンジです。今後は、研究的には、「何を実施したか」から「誰に、どのような条件で、どのような変容が生じたか」へと焦点をシフトさせていくことが重要で、「方略を発揮したこと」と「方略を獲得し、別の文脈へ転移できたこと」を区別し、質問紙、成果物、学習過程、児童の説明を組み合わせて検証することが求められてきます。

 

 昨年からの変化を捉えた場合、個人的には、①教育課程を「足し算」から「組み替え」へ転換したこと、②教科の本質と実社会の課題を接続したこと、③探究を「活動」から「資質・能力の形成」へ進めたこと、④学校組織としての研究基盤が形成されていることなどが確認できました。

 

私なりの「めがね」では、取り組みの特徴は以下など。

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①新教科「未来探究科」による教育課程全体の再編
・本研究は、新しい探究活動を教育課程に追加するものではなく、生活科、総合的な学習の時間、特別活動、道徳、各教科の一部を「未来探究科」に統合し、カリキュラム・オーバーロードの解消を目指すものである。年間245~280時間という大規模な時数を確保している点に特徴がある。
→本研究の核心は、単なる「探究学習の充実」ではなく、教科等の配置原理そのものを再検討する教育課程の研究である。

 

②「自然・地域・文化・健康」の四領域
・未来探究科は、社会的要請に基づく実用的な学びと、各教科に蓄積された学問的な学びを、「自然・地域・文化・健康」の4領域で包摂しようとしている。
→環境教育、主権者教育、健康教育等を個別に追加せず、より大きな領域に統合する構想は、カリキュラム・オーバーロードへの具体的な対応となっている。

 

③「概念」と「方略」による教科横断
・社会科、理科、外国語、家庭科、道徳は主として「概念」、国語科、算数科、音楽科、体育科、図画工作科は主として「方略」を軸として整理されている。それぞれを未来探究科の学習対象や領域スキルと結び付け、教科と探究を往還させる構想。
→教科横断を題材の共通性だけで捉えず、「何を理解するか」という概念と、「どのように理解を形成するか」という方略によって説明しようとした点に理論的意義がある。

 

④4つの方略と領域スキル
・未来探究科には、社会的、科学的、表現的、哲学的という4つのプロセスが設定され、さらに「言語・合意・情報」「言語・再現・データ」等の領域スキルが置かれている。
→方略を個別技能の集合ではなく、目的に応じて活動や技能を選択する一連の過程として捉えている点が重要。

 

⑤パフォーマンス課題による評価
・評価では、制作物だけでなく、児童が「なぜそのスキルを選んだのか」という目的や意図を捉えようとしている。
→表面的な技能の有無ではなく、状況判断や自己決定を評価対象とする考え方は妥当。

 

⑥CTによる個別最適な学びと協働的な学びの接続
・プロジェクト学習の前後に15分間の「CT(Coordinate Time)」を設け、児童が学習保証、活動の自己調整、自らの認知特性や学び方の理解に取り組む構想となっている。
→探究活動だけでは不足し得る基礎的学習や振り返りを、児童自身が調整する時間として制度化した点に意義がある。

【ヒアリング】北海道有朋高等学校+北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)

2026年9月16日、ご縁をいただいた北海道有朋高等学校+北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)へお邪魔させていただきました。

 

北海道有朋高等学校は、多様な学習歴・生活背景をもつ生徒をケアしている学校であり、北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)は道内の小規模校・離島校へ教育資源を届ける広域的な配信拠点として位置付けられているセンターです。

 

短時間の訪問ながら、教育の本質と教師たる存在の関係的意味とは何たるかを改めて考えさせられる、極めて有意義な時間となりました。

 

①「教育機会の量」の拡大と「教育の質」の保障との関係(科目開設だけでなく、生徒が理解し、参加し、進路実現につなげられたか)

 

②柔軟性と伴走支援の関係(生徒が自分のペースで学べる一方、自己管理の困難から学習が停滞するリスクに対してどのようなケアがなされているのか)

 

③学校を単独組織としてではなく、ネットワークとして捉える視点(有朋高校の実施校・協力校方式とT-baseの配信校・受信校方式という教育資源を学校間で共有する制度の成果は、中心となる学校の力量のみならず、各学校の役割分担、情報共有、責任関係の設計に左右される)

 

など、引き続き「分有」概念について理解を深めていきたいです。
改めてご縁をいただきました坂本建一郎さんに心から感謝申し上げます。

 

以下、メモ。
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●北海道有朋高等学校の特徴
(1)2つの課程を併設する公立高校
・有朋高校には、次の2課程(単位制による定時制課程、通信制課程)が置かれている。
・単位制課程は3部制の完全単位制で、生徒が自らの生活状況や進路希望に応じて時間割を組むことを基本とする。学年ではなく、修得単位を積み上げて卒業を目指す仕組み。
・通信制課程では、「リポート」「スクーリング」「テスト」が学習の3本柱。毎日の登校を前提としないため、健康、仕事、家庭事情、不登校経験などを抱える生徒にも学びを継続しやすい。

 

(2)北海道全域を対象とする通信制教育
・札幌市の有朋高校を「実施校」とし、道内32校を「協力校」とする広域的な仕組みを構築している。生徒は原則として居住地に近い協力校でスクーリングを受けることができる。
・担任は札幌の実施校に所属し、協力校の教員は面接指導日の対応を担う。このため、本校と協力校の間で、学習状況、生徒理解、相談情報をどのように共有するかが運営上の重要点となる。

 

(3)多様な年齢・学習歴の生徒を受け入れる学校
・中学校時代に不登校であった生徒、高校を中途退学した者、就労しながら学ぶ者、学び直しを求める成人など、多様な背景の学習者を受け入れている。
・新入学だけでなく、転入学、編入学、再入学、一部科目履修にも対応。教育や社会につなぐ「セーフティネット」としての性格あり。

 

(4)学習・心理・進路を統合した支援
・通信制課程では、近年、3領域(①学習支援、②心理・相談支援、③キャリア・進路支援)を切れ目なくつなぐ支援体制の整備が進められている。
・大学生等の学習指導員、公認心理師等による相談、オンライン相談、地域若者サポートステーション等との連携を通じて、リポートの未提出や欠席を単なる学習上の問題として処理せず、その背景にある心理的・社会的要因を捉えようとしている。

 

(5)制度上の自由度と自己管理の難しさを併せもつ
・登校頻度や履修方法の柔軟性は大きな利点。一方、学習計画の作成、リポート提出、スクーリング出席などについて、生徒自身に相当程度の自己管理が求められる。
・従って、制度上の柔軟性だけでなく、「困ったときに誰かとつながれる仕組み」「小さな停滞を早期に把握する仕組み」が教育成果を左右する。
 私からは、北海道有朋高等学校に対しては、①生徒像と入学経路、②教育課程・学習設計、③生徒支援、④協力校との連携、⑤学習評価・卒業・進路、⑥今後の制度設計についてイメージを膨らませることができました。

 

●北海道高等学校遠隔授業配信センターの特徴
(1)小規模校・離島校の教育条件を保障する道立の配信拠点
・T-baseは、北海道有朋高等学校内に2021年4月に設置。教員配置の少ない小規模校や離島校に対し、専門教員が遠隔授業を配信する仕組み。
・目的は、単純な教員不足への対応ではなく、居住地域にかかわらず、大学進学から就職までの多様な進路希望に対応できる科目を保障することにある。

 

(2)道内35校を結ぶ広域ネットワーク
・2026年度の受信校は35校で、内訳は地域連携校33校、離島校2校。宗谷、根室、檜山、オホーツクなどを含む、広域かつ人口分散型の北海道に適した教育インフラ。遠隔授業は2021年度の第1学年から開始され、2023年度に全学年への配信体制が整備。

 

(3)専任教員による継続的な授業配信
・配信専任教員を配置し、受信校の教育課程に組み込まれた正規の授業を継続的に配信する「配信拠点型」。
・映像教材を視聴させるだけではなく、配信教員と受信校の生徒がリアルタイムでやり取りする同時双方向型の授業を基本とする。生徒の反応や理解度をどのように見取るかが、授業設計上の中心課題となる。

 

(4)対面授業と遠隔授業の組合せ
・遠隔授業だけで完結させず、配信教員が受信校を訪問する対面授業も実施している。これにより、生徒との関係形成、実験・実習、学習状況の直接把握を補完している。遠隔と対面を二者択一とせず、両者を組み合わせて教育効果を高めている点が重要。

 

(5)授業配信を超えた進路支援
・通常授業に加えて、夏季・冬季・春季の講習、進路情報の提供、公務員ガイダンス等を実施。
・T-baseは「授業の配信所」というより、小規模校のカリキュラムと進路支援を補完する広域的な教育センターとして捉えるべき。

 

(6)遠隔授業の専門性を蓄積する研究拠点
・教員同士による授業公開や研究協議を行い、遠隔授業の方法を継続的に改善している。現在は、生徒の手元や学習過程の把握、動機付け、生成AIを活用した授業改善などにも取り組んでいる。
・一方、受信校の増加に伴い、配信スペース、専任教員の確保、時間割調整、対面授業に伴う出張などが課題。
私からは、①設置目的・政策的位置付け、②配信科目・教育課程、③授業づくりと生徒の見取り、④配信教員と受信校教員の役割、⑤効果検証、⑥教員組織・研修、⑦運営上の課題と将来構想について想いを馳せる時間となりました。

【コメント】研究開発制度の実地視察@北海道岩見沢市立緑中学校

2026年9月15日は、国の研究開発制度の実地調査の仕事で、北海道岩見沢市立緑中学校に訪問。

 当該中学校では、1単位時間を45分に短縮して生み出した「余白」の時間を、生徒の主体的な学びや教員の働き方改革へと再配分するチャレンジを行っています。また、「5つの力」(挑戦力、課題対応力、協働力、コミュニケーション力、メタ認知力)を学校全体の共通言語としており、学校教育目標と日常の授業・学校生活を接続する概念として用いています。私なりの「めがね」では、取り組みの特徴は以下など。

 

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(1)教育課程の柔軟化を学校課題の解決に結び付けている点
・研究の出発点には、①確かな学力の定着、②生徒の主体性、③生徒・教職員の時間的ゆとりという3つの課題がある。教育課程の特例が制度活用自体を目的とせず、学校課題の解決手段として位置付けられている点は意義深い。
→制度上の特例を起点とするのではなく、生徒と教職員の課題から教育課程を組み直している点は重要。「なぜ45分なのか」という問いに対して、学校課題との関係から説明できる構造となっている。

 

(2)授業時数を維持しながら、年間101単位時間相当の「余白」を創出している点
・年間1015単位時間は維持しつつ、1単位時間を50分から45分へ変更し、年間で約45675分、101単位時間相当の時間を生み出す構想。その時間を、生徒の学び、生徒と教師の対話、教員研修へ再配分している。
→時間を一律に特定活動へ充当するのではなく、学習、対話、自治、研修という複数の目的へ再配分している点が特徴。「教育課程の柔軟化」と「学校における働き方改革」を別々に扱わず、相互に支え合う仕組みとして捉える試み。

 

(3)「教職員の自己犠牲を前提としない教育」を明確に掲げている点
・学校教育の充実を、教職員の追加負担によって実現しようとしない点は重要。
→今後は、理念に留めず、時間外在校等時間、休憩取得、教材研究時間、会議時間、心理的負担感等を継続的に把握することが求められる。

 

(4)45分授業を、単なる「効率化」から「学びの質の向上」へ発展させている点
・当初(1年次)は、授業内容を45分に収めることが主要課題となりやすかったが、教員の関心も、時間短縮への対応から、生徒の活動時間、単元デザイン、目標共有、学習の自己調整へと移行している。
→45分授業は、50分間の内容を圧縮して詰め込む取組ではない。教師の説明、教材、活動、評価の関係を単元単位で再構成し、生徒が自ら考え、表現し、振り返る時間を確保する取組として捉える必要がある。

 

(5)「自己調整学習」を共通の学習過程として位置付けている点
・外国語科と理科の双方において、①見通し、②選択、③遂行・探究、④他者参照、⑤省察という学習過程が組み込まれている。単なる自由進度やICT活用ではなく、「自らの学びを調整する力」の育成を目標としている。
→自己調整学習を「生徒に任せること」と同一視せず、教師が目標、教材、選択肢、他者参照、振り返りを意図的に設計している。自己調整は、自己完結ではなく、教師や仲間への援助要請を含む資質能力として捉えることが重要。

 

(6)言語活動と自己調整が一体的に設計されている点(外国語科)
・関係代名詞の知識を習得するだけでなく、「スポーツに関わる人物のよさや役割を相手に伝える」という目的と場面を設定し、紹介、応答、質問を含む言語活動を構成。
→「関係代名詞を使えたか」という形式面だけでなく、相手への伝達、聞き取り、反応、質問、楽しさまで振り返りの対象としている。

 

(7)自由進度と概念統合を結び付けている点(理科)
・「食べる・息をする・出す」を消化、吸収、呼吸、循環、排出という個別知識に分解した上で、最終的に細胞の呼吸を軸として統合的に説明する単元構成。
→学習順序の選択が、生徒の好みだけに委ねられず、最終的な概念統合へ収束するよう設計。

 

(8)「5つの力」を学校全体の共通言語としている点
・「5つの力」を、学校教育目標と日常の授業・学校生活を接続する概念として用いている。
→学校目標を抽象的な標語にとどめず、授業、エデュタイム、生徒会活動、教員研修を結ぶ言葉として用いている点は重要。
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研究の焦点の移行が、「45分授業への対応を中心とする段階」から「5つの力」を軸として授業、エデュタイム、自治活動、教員研修を統合し、主体性が生まれる学校システムを構築する段階へとシフトしていることが物語っているように、「時間の短縮」という外形的な教育課程改革から、「主体性が生まれる学校システムの構築」という質的な学校改革への発展を図ろうとしています。

今後は、「取組を実施したか」ではなく、①5つの力をどのような理論で説明するのか、②5つの力が高まったことをいかなるエビデンスで示すのか、③個別の授業実践を学校全体の仕組みとしてどのように定着させるのかという点に関しても問われてくることになり、「45分で効率よく教える学校」ではなく、「生徒と教職員が、自ら学び方と学校の在り方を問い直し、改善し続ける学校」へと変わっていくことができるのか、引き続き定点観測させていただくとともに、アクションリサーチ的にもコミットメントしていけたらとも感じました。

 

ご対応いただきました関係者の皆様、お疲れ様でした。