【解説】荒井英治郎「伴走型教育行政の未来像(【逐条解説】2027 学習指導要領「諮問」②)」」『教職研修』2025年6月号,35頁
教育開発研究所から依頼をいただき、2027年の学習指導要領の改訂論議の前提となる「諮問」の中でも、「伴走型教育行政の未来像」に関して、背景と課題を論じました。
こちらは、以下の諮問文を踏まえての執筆となります。
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〇 各学校における創意工夫ある柔軟な教育課程編成を促進し、多様な取組の展
開に資するよう、教育 DX の一層の推進を含む教育委員会に対する支援の強化、指導主事等の資質・能力の向上の在り方についてどのように考えるか。
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「管理」「指導」から、「伴走」「支援」へ。
「『令和の日本型学校教育』を推進する地方教育行政の充実に向けた教育研究協力者会議」が教育委員会の制度運用の成果・課題を整理した報告書(令和5年7月)は、教育委員会は、指導等を通じた管理運営に留まらず積極的な支援を行っていくことの必要性を改めて喚起していました。
今次の諮問には、学校現場の「創意工夫」「柔軟性」「多様な取組の展開」を保障するために必要な教育委員会への支援策と、指導主事の資質・能力の向上策の検討が盛り込まれています。
教育課程の充実には、それを支えるサブシステム(教育委員会や指導主事)の不断の改善も不可欠であるため、「車の両輪」が同時記載された点は、意義深いです。今後は、市町村教育委員会が求める支援強化策と、指導主事の資質・能力論にどのような関係性が見出されていくのか、注視すべきです。
指導行政の専門性は、何によって担保されるのか。その象徴が指導主事の存在感であると(再)定位されるならば、役割規定に対する納得感の醸成とモチベーションの向上のための研修機会を制度的に保障していくなど、キャリア発達の観点を含めた「育ち」と「学び」のシステムの再構築が喫緊課題となります
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また、子どものウェルビーイングと学校現場のエンゲージメント、そして、教育行政の活性化が連動関係にあるという前提に立てば、慢性的な緊張感が続く教育現場の「コリ」をほぐし、学びの「可動域」を広げていくために、教育行政像の刷新も並行して取り組まれていかなければなりません。
ご関心のある方は、ぜひご笑覧下さい。
引き続きよろしくお願いします。