信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【雑誌】荒井英治郎「多様化する教育ニーズと学校教育」『教職研修』2023年1月号

【雑誌】荒井英治郎「多様化する教育ニーズと学校教育」『教職研修』2023年1月号

 

教育開発研究所さんからご依頼いただき、2023年1月号の『教職研修』に「多様化する教育ニーズと学校教育」と題した論考を寄稿させていただきました(特集「学校はこれから何をめざすことになるのか」)。

 

 感染症の拡大は、これまで不問とされてきた「登校」や「授業」概念の曖昧さ、学校が果たすべき役割の多義性に対して、根本的な問いを投げかけ、公教育制度を正当化してきた鍵概念の再検討を要請しています(動揺する公教育と翻弄される学校)。

 

 他方、文科省経産省内閣府といった中央省庁の各種提言に対する学校の受け止めは、「積極・待望論」と「消極・懐疑論」に見事なまでに二分されているように感じています。学校の「心証」は、業界全体に蔓延する多忙感の存在や自校でハンドリングできる権限の少なさに対する忸怩たる思いもさることながら、多様化する教育ニーズに翻弄され、新たな政策動向に向き合うこと自体困難となっていることに由来している可能性があります。

 

改めて言うまでもありませんが、学校には、多様な子どもが「在籍」しています。一例を挙げても、①学習・行動面で著しい困難を示し、しんどい日々を送っている発達障害又はその可能性がある子、②不登校又は不登校傾向の子、③知能指数のベルカーブ正規分布でIQ130以上あり、柔軟性を欠く教室での学びに思うように向き合えない、特定分野に特異の才能のある子(いわゆるギフテッド)、④「生活言語」に留まらず「学習言語」の習得の課題が深刻化している外国由来の子、⑤経済的困難と日常生活を営む上で必要なものの欠乏状態に置かれ、成長段階の多様な機会にアクセスできない子ども、⑥困難家族(身体・知的障害や精神疾患・依存症の父母、要介護状態の祖父母)の世話や介護、幼いきょうだいの見守りをしているヤングケアラー、⑦教育投資家族、⑧日常的にたんの吸引が必要な医療的ケア児、HSC、LGBTQ、いじめ・児童虐待対応など、教育ニーズの多様化のスピードは止まることを知りません。

 

この状況に対して、本稿では、公教育の目的を実現していくために必要なリソースやネットワークを効果的に活用し、関係者の利害と役割を調整していく「リレーション・マネジメント」の重要性を指摘しました。

 

 学校が「学習する組織」として存在感を示し「協働」を体現していく。そして、その学校を中核とした「学習するコミュニティ」が形成されていく。ここに新しい学校像の本質があります。

 

ご興味のある方はぜひご一読ください。
貴重な機会をどうもありがとうございました。