信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【学会発表】「不登校児童生徒の教育機会の保障問題─「出席扱い」と「学習評価」のマネジメントに着目して─」@日本学校教育学会第36回研究大会

【学会発表】「不登校児童生徒の教育機会の保障問題─「出席扱い」と「学習評価」のマネジメントに着目して─」@日本学校教育学会第36回研究大会

 

2022年8月6日、日本学校教育学会第36回研究大会の場で、「不登校児童生徒の教育機会の保障問題─「出席扱い」と「学習評価」のマネジメントに着目して─」と題した発表をいたしました。

 

 感染症の拡大は、登校(出席・欠席・遅刻、出席停止・忌引など)、学びの携帯(オンデマンド/リアルタイム、デジタル/対面など)、学校の機能(①学力保障:学習的機能、②健康保障:福祉的機能、③関係保障:社会的機能)に関する根源的な問いを投げかけており、戦後日本の公教育制度を正当化してきた鍵概念(教育を受ける権利、教育の機会均等、公教育と私教育との関係など)の再検討を要請するに至っています。

 

 例えば、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議教育・人材育成WGは2022年4月1日に「Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ(案)」を公表、政策の一つとして「子供の特性を重視した学びの『時間』と『空間』の多様化」を掲げ、「多様な子供達に対してICTも活用し個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実させていく」こと、より具体的に言えば、「多様な人材・協働体制」の下で、学校や「コーチ」としての教師が「学年に関係なく」「教室以外の選択肢」をマネジメントし、「子供主体の学び」(「教科等横断・探究・STEAM」的な学び)を実現していくことを謳っています。


 また、経済産業省産業構造審議会教育イノベーション小委員会・学びの自律化・個別最適化WGは、「レイヤー構造型思考」と「教育エコシステム論」を軸に、教育DX(学習資源の組み合わせ)と「場の選択肢」の多様化の推進を展望しています。これらの提言の実現は、戦後日本の公教育制度の再編を促すものとなっています。

 そこで、本発表では、「不登校児童生徒の教育機会の保障問題─「出席扱い」と「学習評価」のマネジメントに着目して─」と題して、長野県の地方自治体が不登校児童生徒の教育機会を保障すべく、どのような取り組みを展開しているのか、「出席扱い」と「学習評価」に焦点を当てながら、教育行政・学校におけるマネジメントの課題を明らかにしました。


 取り上げた事例は、①不登校支援コーディネーターとスクールソーシャルワーカーとの連携、②民間施設(フリースクール等)と連携した支援体制の構築、③地域資源を活用した多様な学びの仕組みづくり、④不登校の子どもの状況なニーズに応じた学びの環境づくり、⑤民間学習塾との連携をきっかけとした学習評価の再検討、⑥その他の取り組み事例です。

 

 不登校児童生徒の学校外での学びに対して、教育行政や学校は子どもや保護者等と適切なコミュニケーションをとりながら支援方策を検討することが不可欠となりますが、課題は少なくありません。「不登校児童生徒」の教育機会の保障を検討することは、逆説的に通常教室等における子どもたちの学びのあり方をも再吟味する契機となります。教育機会の保障の成否は、教育行政及び学校のマネジメント能力に依存することになりますが、このことは校長の意思決定のあり方と教育委員会との関係をも問うものとなります。

 

こちらのテーマに関しては、引き続きライフワークとしてもコミットしていきたいと考えています。