信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【連載「コンパス」第22回】「学校と地域の関係構築─「協働」という成功体験が鍵」

【連載「コンパス」第22回】
「地域に開かれた学校」から「地域とともにある学校」への転換は容易ではない。しかし、目指すべき段階は、学校と地域が二人三脚しながら未来社会を創造していく「地域とともに歩む学校」や「学校とともに歩む地域」である。
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 2022年12月14日付の『信濃毎日新聞』の「教育面」(コンパス)に、第22回目の連載原稿を寄稿しました。
 
 今回のテーマは「学校と地域の関係構築」です。
 
社会構造の変化は、個人の価値観や生活意識、ライフスタイルを多様化させただけでなく、私たち大人が地域活動に参加する機会をも減少させる方向で機能していますが、子どもの目には、大人の背中はどう映っているでしょうか。

住民が学校運営や支援に関わる「コミュニティ・スクール」や地域学校協働活動は、他者との関わり合いを意図的に増やしながら、子ども大人も共に学び合い、支え合い、育ち合う共助体制の構築を目指す仕掛けに他なりませんが、委員の名誉職化や協議会開催の形式化、手段と目的を履き違えた運用など形骸化の声も既に漏れ聞こえてきます。

コミュニティ・スクールと地域学校協働活動は、「車の両輪」の関係びあり、両者をつなぐのが未来の子ども像・学校像・地域像を描く「ビジョン」です。

そして、ビジョンを中核に据えて両者を一体的に推進することで、学校と地域の関係は強固となり、相乗効果の兆しも生まれてくるはずです。
そこで、成否の鍵を握るのは「協働」という成功体験の有無です。

ではその成功体験は誰が仕掛けるべきでしょうか。

地域コミュニティの「担い手論」から未来社会の「創り手論」へ、学校と地域の関係性を巡る熟議を改めて始めてみてはどうでしょうか。未来の学校と地域は誰かが創ってくれるものではありません。

 関心・興味のある方がいらっしゃいましたら、ご一読ください。
 
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「学校と地域の関係構築─「協働」という成功体験が鍵」
 
 社会構造の変化は、個人の価値観や生活意識、ライフスタイルを多様化させただけでなく、私たち大人が地域活動に参加する機会をも減少させる方向で機能している。子どもの目には、大人の背中はどう映っているだろうか。

 

 これに対し、住民が学校運営や支援に関わる「コミュニティ・スクール」や地域学校協働活動は、他者との関わり合いを意図的に増やしながら、子ども大人も共に学び合い、支え合い、育ち合う共助体制の構築を目指す仕掛けに他ならない。

 

 コミュニティ・スクールは学校運営協議会を置く学校を指し、学校運営協議会は法律に基づき教育委員会より任命された協議会委員が一定の権限と責任を持って学校運営のあり方を協議する合議制機関である。

 

 校長が作成する学校運営の基本方針を承認することの他、学校運営や教職員の任用に関して意見を述べることが想定されているが、委員の名誉職化や協議会開催の形式化、手段と目的を履き違えた運用など形骸化の声も既に漏れ聞こえる。

 

 学校・行政からの情報提供を受け教育現場の実態に対する理解が深まれば深まるほど、「一介」の協議会委員が教職員の任用などの権限を行使することに尻込みしてしまうのも無理はない。委員が果たすべき役割の再考が求められている。

 

 他方、地域学校協働活動の売りは、登下校の見守り、学校環境整備、授業補助、放課後子ども教室、土曜日の教育活動、家庭教育の支援など、活動の多様さにある。ただ、活動の継続性をどう担保していくか「担い手」問題は常に付きまとう。

 

 今年9月公表の文部科学省のデータによれば、コミュニティ・スクールは全都道府県で導入済みで、対前年度比増加校数・増加率ともに過去最高を記録した。約43%という公立学校の導入率は、低いか、高いか。もう半分か、まだ半分か。

 

 コミュニティ・スクールと地域学校協働活動は、「車の両輪」であり、両者をつなぐのが未来の子ども像・学校像・地域像を描く「ビジョン」である。そして、ビジョンを中核に据えて両者を一体的に推進することで、学校と地域の関係は強固となり、相乗効果の兆しも生まれてくる。成否の鍵を握るのは「協働」という成功体験の有無にある。

 

 地域コミュニティの「担い手論」から未来社会の「創り手論」へ、学校と地域の関係性を巡る熟議を改めて始めてはどうか。歩みを止めてはならない。未来の学校と地域は誰かが創ってくれるものではない。
(あらい・えいじろう 信州大教職支援センター准教授)
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