信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【論文】清水優菜・荒井英治郎「大学生における「批判的思考態度」と「課題価値」の特徴―国立大学法人信州大学の学生を事例に―」『教職研究』第13号,信州大学教職支援センター,2022年3月,1-13頁

【論文】清水優菜・荒井英治郎「大学生における「批判的思考態度」と「課題価値」の特徴―国立大学法人信州大学の学生を事例に―」『教職研究』第13号,信州大学教職支援センター,2022年3月,1-13頁

 

 

 『教職研究』の第13号に「大学生における「批判的思考態度」と「課題価値」の特徴―国立大学法人信州大学の学生を事例に―」と題した共著論文を執筆いたしました。

 

 

 大学進学率が50%を超えるなど、大学教育の大衆化が進む今日、大学教育においては「学士力」や「社会人基礎力」などの学修アウカムへの着目が集まっており、各大学では学びの質保障のためにFDや教学IRによる教育環境や授業改善が活発に展開されています。

 

 

 ただし、教育工学研究の知見に基づけば、学修アウトカムを育成するには教育環境や授業改善などの外的条件だけではなく、学生が有する資質・能力や動機づけなどの内的条件を改善することも重要であることは言うまでもありません。

 

 

 しかし、大学や大学生を対象とした大規模調査では、大学生の資質・能力や動機づけは深刻な状況にあることが示唆されています。このような現状を鑑みると、個別大学においては、在学生が有する資質・能力や動機づけの傾向を把握した上で、その特徴に応じて教育環境や授業改善などの外的条件を整備していく必要があります。

 

 

 そこで、本論文では信州大学の学生が有する資質・能力と動機づけの傾向を把握し、今後の大学(学部)教育に対する示唆を得ることを目的としました。具体的には、信州大学の学生が有する批判的思考態度と課題価値のプロフィール類型と類型ごとの特徴をPerson-centered approach により検討しました。

 

 

 その結果、次の5 つのプロフィールが得られました。

 

 すなわち、①批判的思考態度と課題価値の両方が低水準である「低態度・低価値プロフィール」、②批判的思考態度と課題価値の両方が相対的に高い「中高態度・中高価値プロフィール」、③批判的思考態度は相対的に高いが、課題価値は相対的に低い「低価値プロフィール」、④課題価値は高い水準にあるが、批判的思考態度は相対的に低い「低態度プロフィール」、⑤批判的思考態度と課題価値の両方が高水準である「高態度・高価値プロフィール」です。

 

 この5 つのプロフィールを批判的思考態度と課題価値の相関関係で整理すれば、低態度・低価値プロフィールと中高態度・中高価値プロフィール、高態度・高価値プロフィールは正の相関、低価値プロフィールと低態度プロフィールは負の相関を示すものです。正と負の相関関係の両方に対応するプロフィールが認められたことは、Person-centered approach ならではの知見です。

 

以下からダウンロード可能となっておりますので、ご関心のある方はアクセスください。


https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/records/2000839#.Ykp-mC_3KaA