信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【分担執筆】河野桃子編『はじめての教職論』学事出版,2021年4月

【分担執筆】河野桃子編『はじめての教職論』学事出版,2021年4月

 

このたび、河野桃子編『はじめての教職論』(学事出版)に
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①「教育の担い手としての教員」
②「学校と地域の連携」
③「『子どもの貧困』との向き合い方」
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の3つのテーマに関してコラムを執筆させていただきました。

 

 

①では、ケン・ロビンソンとルー・アロニカの『才能を磨く―自分の素質の生かし方、殺し方』(大和書房、2014年)をたよりに、国家が教育分野に無関心ではいられない理由(①経済的な理由、②文化的な理由、③社会的な理由、④個人的な理由)に焦点を当てながら、教育制度には、時に(いや、常に)対立する多様な期待が込められていること、教育の担い手として教員は第一義的な存在として位置付けられているという事実に向き合わなければならない点に必然的に教職を生業とすることの難しさがあること、だからこそ自分自身の教育哲学を研ぎ澄ますとともに、社会的要請のアンテナの感度を高めていくことが不可欠となることを書かせていただきました。

 

 

②では、成長期の子どもには、生活環境の中心的基盤である地域社会との関わり合いを通じて、社会性や規範意識を育むことに寄与して、社会化の担い手としての役割が期待されてきたのに対して、現在の地域はどのように変容しつつあるのか、地域全体で学びを展開していく「子供も大人も学び合い育ち合う教育体制」の構築をどのように捉えていくべきかを概括しました。教職志望者においては、抽象的な地域をイメージするだけにとどまらず、子どもを取り巻く家庭環境、そして地域社会の状況が子どもの発達にいかなる影響を与え得るのかという観点を絶えず問い続けることが必要であることを書かせていただきました。

 

 

③では、「子どもの貧困」問題の現状と課題を概括した上で、子どもたちは夢や希望が「ない」のではなく夢や希望という価値をまだ「知らない」可能性があること、人間は「自律性」「有能感」「関係性」を実感できる環境が安定的に確保されてはじめて充実した日常生活を送ることができるとした場合、学校として、教師として、何ができるか考え続けることが必要であることを書かせていただきました。

 

当該テキストはとても読みやすい内容構成になっておりますので、ぜひお手に取ってみてください。貴重な機会をどうもありがとうございました。

 

 以下、出版社のHP(https://www.gakuji.co.jp/script/bkDtl.php?prodid=978-4-7619-2690-8
からの目次の抜粋です。

 

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目次
はじめに

第1講 教員の働き方への社会的注目
教職は「ブラック」?
物理的な「多忙」
精神的な「多忙感」
教員の「多忙感」のその他の原因?
【コラム1】教育の担い手としての教員

第2講 教職に求められていること
江戸時代の教師
明治時代の教師
教職の多様性・複雑性
【コラム2】学校と地域の連携

第3講 教育の役割と特性1
教育をめぐる様々な見立て
教育の役割
「野生児」の教育
【コラム3】キャリア教育

第4講 教育の役割と特性2
「野生児」にとっての教育
「社会化」に伴う「暴力性」
改めて、教育の役割とは
【コラム4】発達障害

第5講 教育の多様性
自由と強制は矛盾しないのか?
シュタイナー教育とは
オルタナティブ教育とは
【コラム5】不登校

第6講 教員にとっての学び
学び続ける教員像
資質能力を高める教員研修
潜在的カリキュラムに関わる自己教育
【コラム6】学校教育と博物館

第7講 教員にとってのリフレクション
リフレクションとは
省察的実践者」とは
「はじめ」「なか」「おわり」のリフレクション
【コラム7】学校におけるリスクマネジメントとは

第8講 体罰について
体罰と懲戒
歴史のなかの体罰
体罰が肯定される理由?
体罰の問題点はどこにあるのか
【コラム8】子ども虐待

第9講 現代の能力観
新学習指導要領の「育成を目指す資質・能力の三つの柱」
方法としてのアクティブ・ラーニング
非認知能力への関心
「垂直的序列化」の問題
【コラム9】「子どもの貧困」問題との向き合い方

第10講 教職とサービス業
「教師聖職者論」のその後
「教職=サービス業」という視線の強まり
「教職=サービス業」と見ることのメリット・デメリット
「ユーザー」が望む教育が「良い教育」?
第11講 これからの共生社会に向けて
インクルーシブ教育とは
わが国の障害児教育の歴史から
特殊教育から特別支援教育への転換
インクルーシブ教育を推進するための特別支援教育
「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」
第12講 教育とケアの関係性
教育のベクトル123についての再検討
教育のなかの「教育的まなざし」と「福祉的まなざし」
教育とケアの関係性
まとめ:皆さんにとって「教職」とは?
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