信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室に関するブログです。

【司会】「ラウンドテーブル 中等教育における探究的な学習と「課題研究」 教育の重要性と可能性」

【司会】「ラウンドテーブル 中等教育における探究的な学習と「課題研究」 教育の重要性と可能性」


8月30日に宮城教育大学で開催されました第77回日本教育学会 のラウンドテーブル「中等教育における探究的な学習と「 課題研究」教育の重要性と可能性」 の司会を担当させていただきました。


現在、長野県におきまして「探究学習」 に関して微力ながらお手伝いさせていただいている身としては、 とてもいい機会を得まして、非常に濃密な2時間となりました。

 


当該ラウンドテーブルの趣旨は、以下の通りです。


------------------------------ ------------------------------ --------
 「総合的な学習の時間」が学習指導要領で創設されて早20年。 「総合的な学習の時間」は、 身の回りにある様々な問題状況について、自ら課題を見付け、 自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、 よりよく問題を解決していく生徒の姿が期待されてきた。 しかしながら、これまでの単純な「教える-学ぶ」 という関係から新しい教師-生徒関係を想定しながら「 総合的な学習の時間」を作り上げていくことは、 決して平坦な道のりではなかった。その一方で、 知識基盤社会に進んでいくなかで、このような問題発見- 解決型プロセスの学びに対するニーズは高まっている。例えば、 SSHやSGHに認定された学校では、多くの「探究」 の授業が実施されるようになっている。 そして新学習指導要領では、高校においてさまざまな教科で「 探究」を冠した科目が設置され、「総合的な探究の時間」 もスタートする。


「探究」と称する形で中等教育の学習過程における問題発見- 解決型プロセスを導入することは目新しく感じるかもしれないもの の、本来、 研究者が行っている研究プロセスには組み込まれているものである 。特に、社会科学の研究では、 自らの問題関心に基づいた課題発見と解決のプロセスの修得が独立 した研究者たるためには必須とされている。 このような社会科学の研究プロセスの導入を高校段階の探究活動に 組み込むことは、中等教育における問題発見- 解決型学習の実施円滑化にとどまらず、 生徒たちが卒業した後の大学などでの研究活動や創造的な職業キャ リアの形成にも大いに役立ちうるはずである。


本ラウンドテーブルでは、『課題研究メソッド』(啓林館) を著した岡本尚也氏をはじめ、 上記のような問題意識を共有する社会科学の研究者と現職教員たち による中学校・ 高等学校において行なった教育実践についての報告を基調として、 探究的な学習をより良くしていく方向性を研究者と現職教員の垣根 を越えて議論する場としたい。
当日の進行は、以下の予定である。はじめに、企画者の相澤から、 本ラウンドテーブルの趣旨説明と、大学教員の視点から「 課題研究」「中高現場での社会調査実習」 について報告が行われる。児玉は、中学高校教員の視点から「 課題研究」「中高現場での社会調査実習」について報告を行う。 岡本からは中高現場における「課題研究」 についてのより詳細な報告がある。そして後半では、 これらを受ける形での自由討論を予定している。
------------------------------ ------------------------------ --------

 


なお、私の方で今後の論点として検討すべき事柄として、 次のような点を提起させていただきました。


------------------------------ ---------
・「探究的な学び」と「探究学習」と「課題研究」の異同は何か
・「探究的な学び」の阻害要因は何か(組織体制、文化、 規範など)
・「探究的な学び」の評価は、どのようにしていくか( プロセス評価、ポートフォリオ、パフォーマンス評価、 ルーブリック評価)
・「探究的な学び」の評価の「調査書」 への変換をどのように考えたらよいのか
・「探究的な学び」と既存の「教科目」 や教科外活動との関係をどのように考えたら良いのか
・「探究的な学び」を通して、何が残るのか( 非認知的能力自己肯定感、自尊心など)
・「探究的な学び」と認知能力・ 非認知的能力との関係はどのようなものか
・教育課程における妥当な「時間配分」の標準はあるのか
・小・中・高・大学における「探究的な学び」の質の違いは何か
・「課題研究」 のメソトロジーを学ぶことの意味とモチベーションの維持の関係を どのように考えるか
・「プレゼン至上主義」「這い回る経験主義」 の再訪をどのように考えるか
・「個人研究」と「共同研究」のバランスをどのように考えるか
・「課題解決学習」と「課題発見学習」 の関係をどのように考えるか
・「大きな問い」を「小さな問い」 へと因数分解することを方法論としてパッケージ化することは可能 か
・「課題研究」の普遍化・一般化の先にあるのは、規格化・ 陳腐化か
------------------------------ ---------

 


上記の論点に関して今後も定点観測をするとともに、 アクションリサーチもしていけたらと考えております。


企画者の相澤真一先生(中京大学)、報告者の児玉英靖先生( 洛星中学・高等学校)、岡本尚也先生(一般社団法人Glocal Academy理事長)、そしてご参加いただいた会員の皆様、 お疲れ様でした。 これを機会に引き続きよろしくお願いいたします。