信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【論文】清水優菜・荒井英治郎「公立進学高校における部活動と進路自己効力,グリットとの関連」国士舘大学初等教育学会編『初等教育論集』第25号,2024年3月,31-39頁。

【論文】清水優菜・荒井英治郎「公立進学高校における部活動と進路自己効力,グリットとの関連」国士舘大学初等教育学会編『初等教育論集』第25号,2024年3月,31-39頁。


このたび、「公立進学高校における部活動と進路自己効力,グリットとの関連」(国士舘大学の清水優菜先生と共著)と題した論文が国士舘大学初等教育学会の『初等教育論集』に掲載されました。

 本稿の目的は,公立進学高校における部活動と進路自己効力,グリットとの関連について,運動部と文化部という部活動の種類を考慮して検討することです。
 高等学校における部活動は,制度的には「生徒の自主的,自発的な参加により行われる」教育課程外の学校教育活動であり,「スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意する」もの(文部科学省, 2018)と位置付けられていますが,日本の高校教育を特徴づける一翼を担っています。
 平成29年7月にスポーツ庁委託事業として実施された「運動部活動等に関する実態調査」(スポーツ庁, 2018)において,部活動に参加している高校生は約81%と報告されているように,数多の高校生が何らかの部活動に参加していることが窺えます。このような現況を踏まえれば,高校における部活動は,生徒が自主的,自発的にスポーツや芸術活動を享受するだけの場に留まらず,生徒の指導機会や進路形成のきっかけといった教育的役割,さらには社会とのつながりをつくることや出身家庭の文化的格差の縮減といった社会的役割を担っているとい
えます。  本研究では,学校階層高位の高校,中でも公立進学高校における部活動への参加の有無が生徒に与える効果について,運動部と文化部という部活動の種類を考慮して検討しました。特に、本研究では,部活動参加の効果測定変数として,進路自己効力(career self-efficacy)とグリット(Grit)を取り上げました。

 以下、得られた知見です。
 
 第一に,運動部に所属している生徒ほど,進路自己効力とグリットの中でも努力の粘り強さは高い傾向にあることが示されました。しかし,その分散説明率は極めて低い水準であったため,公立進学高校において,運動部活動に参加することは,進路自己効力と努力の粘り強さを向上・改善する効果・機能を有するものの,その寄与はごくわずかに過ぎない可能性が示唆されました。  

 第二に,文化部に所属している生徒は,2 年生から3 年生にかけて,努力の粘り強さは高い傾向にあることが示されました。しかし,その分散説明率は極めて低い水準であったため,公立進学高校において,文化部活動に参加することは,2 年生から3 年生にかけて,努力の粘り強さを向上・改善する効果・機能を有するものの,その寄与はわずかに過ぎない可能性が示唆されました。畢竟するに,公立進学高校において,部活動に参加することは,進路自己効力とグリットを向上・改善する効果・機能を有するものの,その寄与はごくわずかに過ぎないと指摘せざるを得ません。公立進学高校などの学校階層高位の高校では,大学受験などの進学が主たる関心ごとであるため,部活動よりも普段の授業などの学業的な場面が,進路自己効力とグリットの向上・改善にとりわけ大きな効果・機能を有するのかもしれません。


ご関心のある方は、以下からアクセスください。

https://www.kokushikan.ac.jp/faculty/Letters/department/primary_education/journal/file/25_14.pdf