信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【ご報告】「塩尻市子どもの貧困対策推進計画」の策定

【ご報告】「塩尻市子どもの貧困対策推進計画」の策定

 

昨年、座長として関わらせていただきました「塩尻市子ども・若者応援協議会」で検討をしてまいりました「塩尻市子どもの貧困対策推進計画」が2022年3月に策定され、このたび情報が公開されました。

 

https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/43/22508.html

 

定量的調査」と「定性的調査」の両方を行い、塩尻市の状況を踏まえた上で計画策定を行いました。他の自治体でも同様の傾向があるものと思われます。ぜひ子どもの育ちの支援のあり方を考えていただく参考になればと思っております。

以下、塩尻市の生きづらさを抱えた子どもたちの現状の概括となります。

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課題1
現状:相対的貧困家庭では、経済・時間の不足から、子ども・保護者の生活環境が整わない現状がある。 【アンケート調査より】 •国の調査では、子どもの7人に1人が貧困状態にあり、塩尻市も国と同程度の割合で貧困状態があると考えられます。 •相対的貧困家庭の約半数は、ひとり親家庭となっています。 •相対的貧困家庭の保護者は、ひとり親や非正規雇用である割合が高く、転職ニーズも大きくなっています。 •離婚によるひとり親家庭の多くが養育費を受け取っていない状況にあります。 •相対的貧困家庭では、食事が規則正しく摂れていない傾向があります。

課題2
現状:相対的貧困家庭では、子どもの学習や体験の不足により、社会を生き抜く力を身につけることが困難となり、貧困の連鎖の要因となっている。 【アンケート調査、国統計資料、研究資料等より】 •貧困は連鎖する傾向があります。 •相対的貧困家庭は、親子間の関わりが少なく、室内遊び、塾・習い事の活動が少なくなっています。また、子どもの家事負担が大きくなっています。 •一般家庭と相対的貧困家庭とを比べると学校以外の勉強時間に大差はありませんが成績には差が出ています。 •良質な就学前教育は、貧困の予防につながると考えられます。 •相対的貧困家庭は、子どもの進学に関して経済的な理由から躊躇している割合が高くなっています。 •高校卒業後の進路は、世帯の経済力に大きく影響を受けます。 •相対的貧困家庭の子育ての悩みは、教育に関する経済的なものが多くなっています。

課題3
現状:相対的貧困家庭への社会的支援が不足する傾向があり、また、早期の支援が必要にもかかわらず、必要な支援が届いていない可能性がある 【アンケート調査より】 •相対的貧困家庭は、孤立する傾向があります。 •ひとり親家庭など、支援が必要な家庭に、支援が届いていない可能性があります。
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以下、塩尻市の子どもの貧困対策に関する基本方針と施策の展開の概括となります。

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基本方針1
生活の安定のための支援により、家庭の養育環境を整える

施策の展開
施策1 経済的支援 子どもとその保護者が安心して暮らせる生活環境を実現するため、子どもの成長段階、家庭の状況等に応じて経済的負担を軽減し、家庭の養育環境の改善に取り組みます。 施策2 妊娠・出産・子育ての支援 妊娠期から保護者の心身の状況、養育環境等を把握しながら、様々な困難を抱える妊婦・家庭を支援することで、家庭の養育環境を支えます。また、養育に大きな困難を抱える家庭の子どもを社会全体で養育する体制づくりを推進します。 施策3 生活の支援 複合的な課題を抱える生活困窮世帯等に対し、家計、住環境、食生活等に着目しながら、家庭の状況に応じ、自立に向けた支援を行います。また、児童養護施設入所等の退所後の家庭の養育環境を整える支援を推進します。 施策4 保護者の就労支援 家庭と仕事の両立など、ひとり親等が抱える課題に対し、保護者の就労支援を推進します。また、様々な家庭状況についての理解が進むよう、事業者等への啓発や支援を推進します。


基本方針2
子どもの「学び」と「経験」を保障し、未来を切り拓く力を育む

施策1 成長段階に応じた学習等の支援 子どもが自分らしい人生を切り拓いていく力を身につけられるよう、子どもの成長段階や家庭の状況に応じた教育、学習・多様な経験の機会、居場所を提供することで、貧困の連鎖を防ぎます。 施策2 子どもの進学・進路選択に関する支援 子どもが希望する進路を選択できるよう、相談支援や家庭の状況に応じた進学・就労支援を行うことで、貧困の連鎖を防ぎます。


基本方針3
関係機関の連携により、切れ目のないきめ細かな支援を行う

施策1 相談体制の充実 様々な困難を抱える子どもや家庭が、孤立することがないよう、各々の課題を早期に発見し、 必要な支援につなぐ相談体制の充実を図ります。また、相談職員の資質向上や専門性を高めるため、研修の実施などによる相談体制の強化を図ります。 施策2 支援が必要な子ども・家庭を支える連携体制の充実 貧困によって生ずる様々な困難を抱える子どもや家庭を誰一人取り残さないよう、関連機関との連携や庁内連携を強化することで、切れ目のない支援・きめ細かな支援を届ける体制を構築します。 施策3 情報発信の充実 子育てに関するサービス等の情報を得ることが困難な家庭に向けた情報発信を強化するとともに、子どもの貧困に関する地域全体の理解を深める啓発活動を推進します。
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