信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【論文】荒井英治郎「教員の研修権」佐々木幸寿編『学校法(教師のための教育学シリーズ3)』学文社,2017年4月,214-227頁。

【論文】荒井英治郎「教員の研修権」佐々木幸寿編『学校法(教師のための教育学シリーズ3)』学文社,2017年4月,214-227頁。

 

東京学芸大学佐々木幸寿先生にお声かけいただき、
第13章として、「教員の研修権」に関する章を執筆させていただきました。
http://www.gakubunsha.com/book/b286136.html

 

 教育界といえども、その行為は、例外なく法令に基づいて行われ、ときに保障され、ときに処分の対象となり得ます。他方、「教育法規」という領域には特別法が多いことが物語るように、教員だけ「特別扱い」されていることが少なくありません。

 

このことは、知識の教授だけでなく子どもとの人格的な触れ合いを通じて個性・能力に応じた適切な指導を行うことが教員には要請されるという、その職務と責任の特殊性が理由とされてきました。

 

 では、不断の自己革新が求められる教職にとって、資質向上の方法論の代表格である「研修」をめぐる法的争点は、いかなる課題を提示してきたのか。

 

私の章では、法の理念と実態、教育界と世間の「まなざし」の間に生じる葛藤を意識した上で、教育実践に軸足を置いた「教員の研修権」のあり方を論じました。

 

 私の章では、
①教員研修法制の構造と現行の研修制度を概括し、
②「教員の研修権」をめぐる法的争点として、
・研修権の権利性や職務命令研修の強制性
・勤務場所外研修の承認要件、
・「自宅研修」や「教育研究集会への参加」のあり方
などに関して、行政解釈や判例の紹介を通じて検討し、教育実践・学校経営上の課題と今後の展望を論じました。

 

 

構成は、以下の通りです。
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第13 章 教員の研修権
第1 節 はじめに―教職の特殊性と教員の資質向上  
第2 節 教育研修法制の構造―研修の責務と自己研修  
第3 節 「教員の研修権」をめぐる法的争点  
第4 節 おわりに―「説明責任」時代における教員の自己革新と社会的承認 
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私の章はともかく、他章は学校と法の関係を問う上で必要不可欠な古くて新しいポイントに焦点を当てて論が展開されています。ぜひご一読ください。

 

 

なお、全体の章構成は、以下のとおりです。

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序章 国家と教育と法

第1 節 国家と教育  
第2 節 「学校法」と「学校法学」  
第3 節 学校法を学ぶための基礎知識  

第Ⅰ部 学校関係法を学ぶ

第1 章 日本国憲法―教育の基本理念に関する法律①―
第1 節 基本的人権の性質と国民の基本的人権享有(第11 条)  
第2 節 個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重(第13 条)  
第3 節 法の下の平等(第14 条①)  
第4 節 公務員の選定罷免権・全体の奉仕者(第15 条①,②)  
第5 節 思想及び良心の自由(第19 条)  
第6 節 信教の自由(第20 条①,②,③)  
第7 節 学問の自由(第23 条)  
第8 節 表現の自由(第21 条①,②)  
第9 節 教育を受ける権利,義務教育(第26 条①,②)  
第10 節 公の財産の用途制限(第89 条)  

第2 章 教育基本法―教育の基本理念に関する法律②―
第1 節 教育基本法改正  
第2 節 教育基本法の内容  

第3 章 学校教育に関する法律①
―学校制度,学校組織経営,教育課程と教科書―
第1 節 学校制度と法規定  
第2 節 学校組織と学校運営  
第3 節 教育課程と教科書  

第4 章 学校教育に関する法律②
―児童生徒・特別支援教育・健康教育・学校事務―
第1 節 児童生徒の身分の取扱い  
第2 節 特別支援教育  
第3 節 健康教育(学校保健,学校安全,学校給食)  
第4 節 学校事務(帳簿管理)  

第5 章 教職員に関する法律
第1 節 教職員の任命  
第2 節 服務  
第3 節 分限と懲戒  
第4 節 免許・資格,研修  

第6 章 教育行政組織,制度に関する法律
第1 節 教育行政とは  
第2 節 国と地方の教育行政機関  
第3 節 教育委員会による学校の運営  

第Ⅱ部 学校法

第7 章 教育法の変化と学校法という視点
第1 節 現代における教育法の変化  
第2 節 学校法という視点の重要性
  
第8 章 学校法の課題を考える
第1 節 我が国の学校法が抱える法的課題  
第2 節 学校法学において追求されるべき法理  
第3 節 学校における法的教育実践  

第Ⅲ部 教育課題に関する法

第9 章 いじめと法
第1 節 教育課題の現状:いじめの実態  
第2 節 いじめ事件における一般的な法的責任  
第3 節 いじめ防止対策推進法  
第4 節 教育課題に見られる法的な争点
  重大事件に見る学校法の視点(大津市立中学校いじめ自殺事件)  
第5 節 教育実践と法的対応の問題 

第10 章 体罰と教育実践―最高裁判決と体罰法制―
第1 節 学校教育における体罰の禁止と包括的支配権  
第2 節 学校教育法の規定と「懲戒」「体罰」  
第3 節 行政実例における「体罰」,通知の変化  
第4 節 最高裁判決にみる「有形力の行使」と「体罰」  
第5 節 法的教育実践への視点  

第11 章 18 歳選挙権と政治教育
第1 節 政治的教養の教育  
第2 節 教育基本法の統一的解釈  
第3 節 高校生等の政治的活動 
第4 節 主権主体の育成  

第12 章 学校と学習塾
第1 節 学習塾の興隆する社会  
第2 節 学校と学習塾をめぐる一般的な論点 
第3 節 学校と学習塾をめぐる法的争点―和田中「夜スぺ」裁判―  
第4 節 学習塾との連携が認められた背景  
第5 節 子どもの学びをどのように保障するのか  

第13 章 教員の研修権
第1 節 はじめに―教職の特殊性と教員の資質向上  
第2 節 教育研修法制の構造―研修の責務と自己研修  
第3 節 「教員の研修権」をめぐる法的争点  
第4 節 おわりに―「説明責任」時代における教員の自己革新と社会的承認 

第14 章 教師の労働と法
第1 節 教員の服務  
第2 節 教員の労働基本権  
第3 節 教員の労働条件 
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学校法 (教師のための教育学シリーズ)

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