【授業方法】「『ソクラテス・メソッド』と『グループ・ワーク』の併用」『教職支援センターニューズレター』第5号(2017年春号)
本務校で所属している教職支援センターで季刊発行されている『ニューズレター』に授業紹介として、私の授業にて採用している方法について、以下のような内容を書かせていただきました。
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教育学(教育行政学・教育法学・教育経営学)を専門とし、「教育」を取り巻くヒト・モノ・カネを研究している私の担当科目(教職科目)は、「教育学概論」、「教育行政学概論」、「教育法学概論」、「教育経営学概論」、「教育社会学概論」、「現代社会と子どもの学習」、「学校教育の歴史と現状」などです。バラエティに富んだ授業を担当していますが、ほぼ全ての授業を通じて一貫しているのは、ソクラテス・メソッドを用いて「問いを重視した対話型授業」を行っている点と、その媒介ツールとして「グループ・ワーク」を併用している点です。
以下、2つの方法について日頃から意識していることを述べたいと思います。
第1は、「ソクラテス・メソッド」です。
このメソッドは、教員が一方的に講義を行うのではなく、学生と学生、学生と教員の間のディスカッション形式を軸としながら授業を展開させていくというものです。諸説ありますが、このメソッドは、①「テーマ設定」、②「論点マップ」、③「クエスチョンハンドリング」、④「論点整理」から構成されると説明されることが多いものです。①「テーマ設定」では、学生にとって身近なテーマを選択し、「具体的な問い」を複数設定します。授業では、個別具体的な問いから抽象的な問いに至るまで、様々な角度から「問い」を提示します。②「論点マップ」では、「問い」に対して想定される議論の展開を描き、論点をマッピングしていきます。学生の皆さんは就学前教育、初等中等教育とこれまで豊富な教育経験を体感・蓄積してきていますが、その教育を取り巻く、あるいは方向づけている制度・法・ルールにはどのようなメリットとデメリットがあるのか、また主にマスメディア等を通じて構築され、巷で溢れる「教育問題」は誰にとっての「問題」であるかなど、問題認識に至る過程とその要因、問題の構造を論理的に考える機会を提供するように心がけています。③「クエスチョンハンドリング」では、グループから出された意見や視点を時間の許す限り丁寧に拾い上げます。この段階では、次に述べる「グループ・ワーク」の取り組みが成否を握るカギとなります。④「論点整理」では、議論の全体の構図を再度描きながら、グループから出された意見の共通点や相違点、さらには取り上げられなかったアプローチや見解を紹介し、学生個人の意見を全体の構図の中に位置付けるようにしていま す。
第2は、「グループ・ワーク」です。
グループワークの方法については、授業の特性や受講人数の多寡によって柔軟に変えていますが、私がグループ・ワークを活用する理由は、①全体像を考える、②分析的に考える、③他の視点で考えるといった議論における多様な視点をぜひとも習得してもらいたいと考えているためです。学生の皆さんがこれまで受けてきた教育経験は、多種多様であり学生にとっては唯一無二のものであることに間違いありません。ただ他方でその教育経験は絶対的な「正しさ」を有するものであるとは限りません。従って、「教職」をキャリア選択の1つに位置付けている学生には、ぜひ個人の教育経験を一度相対化してもらいたいと考えています。この点に、特定のテーマに基づいて、他の学生と意見交換をすること、すなわち、グループ・ワークやグループ・ディスカッションの意義があると考えています。なお、より教育効果を引き出すために下図のような多様な方法論を取り入れて授業展開を行っています(森時彦他編『ファシリテーターの道具箱』ダイヤモンド社,2008年、より引用)。
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教育方法論に関する専門的トレーニングを本格的に受けてきたわけではない中で、試行錯誤している毎日です。高大接続が謳われる中で、現場の諸先生方からも多くの知見を摂取できたらと考えています。