【書評】荒井英治郎「書評:児美川孝一郎『新自由主義教育の40年』」『月刊高校教育』2024年12月号,99頁
このたび学事出版さんの『月刊高校教育』(2024年12月号)に、児美川孝一郎『新自由主義教育の40年』の書評を執筆させていただきました。
この国の未来には、「絶望」しかないのでしょうか。
「現代の資本主義が、国家権力の掌握を通じて、自らの意図に沿った方向に国家と社会を組み替えていく企て」(16頁)と定義される新自由主義。
空気やウイルスのように肉眼では見えず、変幻自在、他方で、私たちの生活の隅々まで行き渡る新自由主義は、なぜ、ここまで「抗いがたい」のでしょうか。
本書は、この問いを中心に据え、「キャリア教育の現在」、「大学教育の変容」、「教育労働の現在」、「教育改革のゆくえ」等のテーマを軸に新自由主義の輪郭を炙り出すものとなっています。
感情研究の知見によれば、「希望」という感情は、「絶望」の後にしか生まれず、「絶望」を感じたことのある人間のみ「希望」を持つことができるといいます。
自身の「当たり前」を問い直す営みは、えてして迷いや痛みを伴います。ただ、この試みなくして、生き方をコントロールされる人生とは異なる、彩り豊かな世界を描くという希望のプロジェクトへの参画は困難なはずです。
問い、問われ、捉え直していくこと。
興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。