信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【いただきもの】末冨芳編『一斉休校 そのとき教育委員会・学校はどう動いたか?』明石書店,2022年

【いただきもの】末冨芳編『一斉休校 そのとき教育委員会・学校はどう動いたか?』明石書店,2022年

 

日本大学の末冨先生からお送りいただきました。どうもありがとうございます。早速読ませていただきました。

 

本書の目的は、「2020年2月27日の安倍総理の全国一斉休校要請から、2020年4月の緊急事態宣言による休校期間延長を経て、6月半ばまでに順次休校解除をしていくプロセスに焦点を当て、教育委員会がいつ誰とどのように休校開始を判断し、学校や児童生徒・保護者にどのように対応したのか」を明らかにすることとされています。

 

本書では、8自治体(熊本市北九州市さいたま市、世田谷区、明石市、尼崎し、奥尻町三鷹市)のケーススタディと2自体(足立区、港区)のショートレポート、さらには、32都道府県と120市区町村によるアンケート調査の結果を併用しながら、「あの日」に迫ります。

 

忘れもしない全国一斉休校。みなさんにとって、ご家族にとって、いかなるインパクトを与えたものだったのでしょうか。本書を手に取り今一度自分自身の「振る舞い」を問い返すことで、「あの日」の経験を改めて糧に「これから」を歩むことができるのではないかと思います。

 

また、本書が焦点を当てた個別自治体の奮闘の裏には、「なぜ全国一斉休校時に、学校の動きを封じ児童生徒のケアにも取り組まない自治体・教育委員会が存在したのか」(289頁)という問いが控えています。

 

そして、この問いに真摯に向き合うことが今なお教育関係者に問われているのであり、そのことが教育業界に対する信頼の構造を再構築していく糸口になるのではないかと思っています。

 

以下、出版社からの目次の転記です。

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はじめに[末冨芳]

第1部 一斉休校――教育長・教育委員会・校長は何を経験したか?

第1章 熊本県熊本市[末冨芳]
 1 リスク予測にもとづく2月28日の臨時教育委員会開催
 2 休校長期化予測にもとづく教育委員会・学校の対応
 3 教育委員会のリスク予測のもとでの一斉休校と学校運営
 4 オンライン授業の効果
 5 コロナ禍前からの改革がスピード感を増した

第2章 福岡県北九州市[元兼正浩]
 1 他の市町村より早く「第2波」に見舞われた北九州市
 2 保護者の意見が二分する中での教育長の苦渋の決断
 3 国の要請を受け臨時休業にむけた市教委通知
 4 児童預かり対応をめぐる関係機関との調整の苦労
 5 「第2波」に見舞われた北九州市教委の判断と対応
 6 北九州市の経験から私たちは何を学ぶか

第3章 埼玉県さいたま市佐藤博志]
 1 一斉休校要請への対応――緊迫した地方教育行政の現場
 2 一斉休校の期間と方針
 3 休校期間の対応
 4 分散登校とその後
 5 校長の対応
 6 まとめ

第4章 東京都世田谷区[末冨芳]
 1 世田谷区における一斉休校の概況
 2 一斉休校決定のプロセス――教育長の専決と首長部局・世田谷区健康危機管理対策本部の決定・判断
 3 感染者数の急増と入学式への対応の苦慮
 4 区の補助制度・貸与端末に支えられたBYOD方式での4月9日動画配信開始
 5 迅速な昼食支援、「潜む」困難な子どもたち
 6 分散登校を通じた児童生徒のフォローアップ
 7 ICTを前提とした、新しい学び、新しい教育経営へ

第5章 兵庫県明石市[柏木智子]
 1 明石市の概要
 2 学校の臨時休業と再開における意思決定過程
 3 一斉臨時休業中の子どもの生活と学習への支援策
 4 学校再開後の気づきや課題

第6章 兵庫県尼崎市[柏木智子]
 1 尼崎市の概要
 2 学校の臨時休業と再開における意思決定過程
 3 一斉臨時休業中の子どもの生活と学習への支援策
 4 一斉休校を経ての課題

第7章 北海道奥尻郡奥尻町[篠原岳司]
 はじめに 感染症拡大に揺れた離島の高校
 1 町立移管した奥尻高校と島留学の取り組み
 2 早朝午前6時30分からの卒業式――2020年2・3月
 3 奥尻島に戻れない島留学生たち――止まらない感染症拡大に揺れた2020年4・5月
 4 奥尻町から学べること――先回りの決断を支えた町役場・町教委・高校の協働のシステム

第8章 東京都三鷹市[末冨芳]
 1 新型コロナパンデミックの中で、その先へ進む三鷹市
 2 全国一斉休校開始時の首長・議会・教育委員等とのコミュニケーション
 3 子どものウェルビーイングの重視――居場所の確保、昼食の提供、地域での子どもの見守り体制
 4 「学校嫌いをつくらない」休校中の学びの保障の基本方針
 5 全国一斉休校・GIGAスクール政策のその先へ――「個別最適」な学びの保障、スクール・コミュニティの創造へ

ショートレポート1 東京都足立区[末冨芳]
 「突然来た夏休み」――全国一斉休校の開始/チーム学校体制によるターゲット型支援/ネットワークに支えられた学びの保障/学校再開後の児童生徒の個別支援体制

ショートレポート2 東京都港区[末冨芳]
 長期化した一斉休校の中での柔軟な対応/「学びの保障」における柔軟性/相談体制・家庭の支援体制/一斉休校終了後の課題と対応

第2部 全国教育委員会アンケートを通じた一斉休校の検証[末冨芳]
 1 全国教育委員会アンケートの概要と特徴
 2 市区町村調査集計
 3 都道府県調査集計
 4 自由記述より

第3部 パンデミックと一斉休校――批判・課題、そして伝えるべき経験

第1章 パンデミック危機管理の中での教育委員会・学校[末冨芳]
 課題設定
 1 準備期間のない全国一斉休校要請の示した課題
 2 なぜ全国一斉休校時に教育委員会開催はされなかったのか?
 3 一斉休校期間の「多様性」
 4 「学びの保障」への取り組みと課題
 5 自治体間格差が著しい児童生徒の心のケアと福祉的支援
 小括――全国一斉休校は「上意下達の指導行政」にすぎなかったのか?

第2章 教育委員会と学校長の自律性――教育長のリーダーシップ/校長のリーダーシップ[佐藤博志]
 1 教育長のリーダーシップの概念と分析の視点
 2 意思決定
 3 課題の認識
 4 校長の自律性
 5 今後の政策構想
 6 教育長のリーダーシップ/校長のリーダーシップ
 7 新しいリーダーシップ理論へ――コネクティビズムの地平
 8 今後の課題

第3章 学校はどう動いたか?[元兼正浩]
 1 学校の自律性はどれほど発揮されたか
 2 学校アンケート調査の結果より
 3 学校の自律性はどのように発揮すべきなのか

第4章 一斉休校の中での子どもたちへのケアと支援[柏木智子]
 1 COVID-19下における子どもの生と学び
 2 各自治体の取り組み――兵庫県明石市の事例
 3 各自治体の取り組み――兵庫県尼崎市の事例
 4 民間団体によるケアと今後の方策

第5章 伝えていくべき経験と教訓――世界のパンデミック経験の中での日本[葉養正明]
 1 コロナ禍の世界の学校閉鎖
 2 学校閉鎖と脆弱な環境の中で育つ子どもたち
 3 わが国の一斉休校政策への教訓――大災害における子どもの学びの持続

 おわりに[末冨芳]
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https://www.akashi.co.jp/smp/book/b604141.html