信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室に関するブログです。

【論文】荒井英治郎・丸山和昭・田中真秀「日教組と給特法の成立過程」『教職研究』第9号,信州大学教職支援センター,2019年1月,86-140頁。

【論文】荒井英治郎・丸山和昭・田中真秀「日教組と給特法の成立過程」『教職研究』第9号,信州大学教職支援センター,2019年1月,86-140頁。


随分とご報告が遅れましたが、上記の論文を共同で執筆致しました。


本研究は、1971年に成立した「国立および公立の義務教育諸学校における教育職員の 給与等に関する特別措置法」、いわゆる「給特法」の成立過程について、主に当時の日教組側の資料を用いて分析したものです。


周知の通り、同法の趣旨は、一般行政職に認められている 時間外勤務手当(超過勤務手当)を支給しない代わりに、給与の4%分に該当する教職調整額を給与に上乗せすることにありますが、本論文では、給特法の成立前後における日教組内部の議論について、日教組側の資料、具体的には、日教組の年史、機関紙『日教組教育新聞』、そして、先行研究では十分に扱われてこなかった日教組大会議事録や日教組中央委員会議事録等の資料を用いて分析しました。


主な分析上の時期区分は、以下の通りです。
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①超過勤務問題に対する日教組の裁判闘争を背景に、文部省による教員給与改善措置費の予算要求を経て、自民党文教部会が法律改正による対応の模索をはじめる1967年8月から1968年12月までの期間

自民党・文部省案に対する対案として日教組が「二本立て要求」を示す1969年1月から1971年1月までの期間

③給特法の国会提出及び強行採決を経て、給特法闘争の総括と今後の方向性が議論された1971年2月から1971年10月までの期間
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給特法の成立過程とは、1960年代末から1970年代のはじめにかけて、日本の教員の内外の動向を踏まえながら、教師の本務労働は何か、本務労働を阻む雑務は何か、雑務をどのように排除できるのか、そして諸外国とは異なる授業時間以外の労働を含む日本の教師の状況において、どうすれば現実的な労働時間短縮を実現することができるのかを模索した時期でした。

 

ご関心のある方はぜひ一度お読みいただけましたら幸いです。