信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【書評】「高橋寛人『教育公務員特例法制定過程の研究― 占領下における教員身分保障制度改革構想』」『図書新聞』 2020年1月11日号,5面

【書評】「高橋寛人『教育公務員特例法制定過程の研究― 占領下における教員身分保障制度改革構想』」『図書新聞』 2020年1月11日号,5面


図書新聞』2020年1月11日号に高橋寛人先生の『 教育公務員特例法制定過程の研究』 の書評を執筆させていただきました。 貴重な機会をどうもありがとうございました。


 本書は、教育の専門性や教職の特性、戦前・ 戦中の学問の自由に対する侵害の反省を踏まえて、 国公私立学校全ての教員を対象とする身分保障制度を構築しようと した教員身分法案の構想が、 最終的には公務員法の特別法たる教育公務員特例法として公布され る過程を分析したものです。


 教員の身分保障のアイディアの変容過程は、隣接制度( 国家公務員法地方公務員法私立学校法教育委員会法など) の制度化の状況と、様々な関係者(文部省、 GHQ民間情報教育局(CIE)教育課、民政局(GS) 公務員課、法務局(LS)立法・司法課、 対日合衆国人事行政顧問団、教育刷新委員会、大学基準協会、 全国大学教授連合など)の利益・選好が複雑に絡み合う過程です。


教員身分法案(教育行政刷新要綱案→学校教育法要綱案→ 教員身分法案要綱案)→国立・公立学校教員法要綱案→ 教育公務員法要綱案→教育公務員の任免権等に関する法律案→ 教育公務員特例法といった名称の変遷は、 紆余曲折の過程を如実に示しています。


 教育(行政)の独自性・特殊性・ 専門性を前提視しない改革姿勢が先鋭化される今日において、 戦後改革期における芳醇な制度構想論議から得られる知見は少なく ありません。


歴史研究は、過去の清算にとどまるものでは決してなく、 新たな未来を展望する航海図を描く意義を有します。


ぜひご一読ください。