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「2012年の教育改革案・調査報告等」『教育学研究』

ご依頼をいただきまして『教育学研究』第80巻第1号(2013年3月)に

「2012年の教育改革案・調査報告等」を執筆させていただきました。

 

冒頭に書かせていただいた部分の「要約」をピックアップ↓。

こうした政策データを定期的にまとめていくことも、

アーカイブの作業として重要かと思っています。

 

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45衆議院議員総選挙2009818日)で自由民主党が大敗を喫すると、非自民党を中心とする民主党政権が誕生し、日本で初の「民意」に基づく政権交代が実現した。

「政治主導」の政策決定を謳った民主党政権は、自民党政権の政策決定において重要な機能を果たした事前審査制や事務次官等会議を当初廃止し、「政務三役」(大臣、副大臣、政務官)を中核とする政策決定を重視した。また政権交代は政策決定過程のみならず、政策内容をも転換させる機運を生じさせた。例えば、マニフェストで掲げられていた教育費改革(高校の授業料無償化や子ども手当の創設)、教員制度改革(教員免許更新制の見直しや教員養成の修士課程化)、教育ガバナンス改革(教育監査委員会・学校理事会の創設)等は政策転換を明確に意図するものであり、行政刷新会議の事業仕分けによって全国学力・学習状況調査が悉皆調査方式から抽出・希望利用調査方式に変更されたことも、政策転換の象徴として位置づけられていた。しかし、第22参議院議員通常選挙2010711日)の結果により「ねじれ現象」が生じてからというもの、民主党は厳しい国会運営を強いられ、先行き不透明な混沌とした国政状況は、政権運営に対する失望感のみならず、教育政策に対する空虚感をも生じさせる結果となったといってよい。

 

これに対して、20121216日の第46衆議院議員総選挙の結果、野党第一党の自由民主党は単独で絶対安定多数の議席を確保することになり、再び政権交代が実現した。20099月に民主党政権は33か月(1,198日)で幕を閉じたことになる。

20121226日に発足した第二次安倍晋三内閣は、教育再生実行会議を設置するなど、今後は、民主党政権における教育政策の抜本的見直しがなされることは必至である。とはいえ、政権交代は前政権の「教育政策」に対する評価のみによって実現したわけではないため、今後は政権与党が提示する改革案の妥当性を慎重に吟味していくことが必要となる。

自助か公助か、大きな政府か小さな政府か、新自由主義社会民主主義か、政治主導か官僚主導か、学校選択か学校参加か、ナショナル・ミニマムかローカル・オプティマムかなど、ナイーブな対立軸を挙げれば枚挙に暇ないが、現代日本の教育改革の特徴は、戦後形成された教育制度のみならず、その制度を支える制度原理それ自体の再編を企図する点にある。教育政策の目的と手段は混同されやすく、手段の目的化が生じやすいという特徴があることを踏まえ、政策や制度の効果として期待し得る「順機能」のみならず、意図せず生じる「逆機能」にも目配りをしていくことが肝要となろう。

今後、中央政府レベルのみならず、地方政府レベルにおいて、いかなる質の議論が提起され、相互参照ないし政策波及されることになるのか。そして、そこでの教育政策は、政策科学における鍵概念である「政策学習」(policy learning)、「社会的学習」(social learning)、「知識活用」(knowledge utilization)、「教訓導出」(lesson-drawing)の観点を考慮し、「熟議」(deliberation)や「根拠(証拠)」(evidence-based)に基づいて形成されたものとなるのか、注視が必要である。

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