信州大学 教職支援センター 荒井英治郎研究室

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荒井英治郎「政策トレンド⑮(連載「働き方改革を『アンラーン』する 第28回)」『内外教育』第7255号,2025年7月1日,10-12頁

荒井英治郎「政策トレンド⑮(連載「働き方改革を『アンラーン』する 第28回)」『内外教育』第7255号,2025年7月1日,10-12頁

 

時事通信社の『内外教育』誌上で、「働き方改革を『アンラーン』する」と題した連載をさせていただいております。

 

https://edu-naigai.jiji.com/publication/latest

 

第28回のテーマは、前回に引き続いての「政策トレンド15」です。

 

https://edu-naigai.jiji.com/article/1955

 

 中央教育審議会は、2019年1月25日に答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指 導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」を公表しています。  今次の働き方改革の目指す理念は、「教師のこれまでの働き方を見直し、教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになる」ことでした(2㌻)。

 

「〝子供のためであればどんな長時間勤務も良しとする〟という働き方は、教師という職 の崇高な使命感から生まれる」が、「その中で教師が疲弊していくのであれば、それは〝子供のため〟にはならない」(2㌻)という指摘は、何のための働き方改革かという原点を示すものとして重要です。教師の働き方と子どもの育ちと学びは連動関係にあるというわけです。また答申では、難易度が高い学校における働き方改革は、他業界の働き方改革の「リーディングケース」にもなり得ると位置付けられていました(7㌻)。

 

今回は、業務再編の方向性に関して、業務の「外部化」「分業化」「協業化」というキー ワードに即して捉え直してみました。

 

第1は、業務の「外部化」です。「自分」の組織で行っていた業務を「外部」の組織に委託(アウトソーシング)し、業務の効率化やコストの削減を図ることを指します。コールセンター業務や経理業務の委託、システム開発の外注などのイメージを持たれる方も多いでしょう。確かに必ずしも専門的な知識やスキルを有しない業務を「素人」が担当し続けている状況は、組織の生産性にとっても、個人のエンゲージメントにとっても不利益が多いです。学校において、専門的な知識やスキルがないにもかかわらず、やらざるを得なくなっている業務にはどのようなものがあるでしょうか。外部化によって、その組織は「コア」とされる業務に集中することができ、また、専門組織に委託した業務は質の高いサービスとして「衣替え」されていく可能性もあります。他方、外部化には当該業務に関するノウハウがその組織に蓄積されなくなることや、業務の進捗共有コストが別途生じる側面もあります。さらに、そもそも「先立つもの」(予算・経費)がなくては健全な外部化は実現しません。質の低下を招くことさえあり ます。物事には常に光と影があるのです。  

 

第2は、業務の「分業化」です。企画・実施・評価など、業務過程を細分化し、各担当者が各過程を担うことを指します。製造業では製造ラインを「設計」「加工」「組立」「検査」等に細分化し、工程ごとに別チームが担当することがあります。このように、分業化には、業務の過程を細分化し、各担当者を割り当てる方法もあれば、ある組織が抱えている複数業務の担当者を組織内で再編する方法もあります。前者は、学校内に企画委員会を設置し委員会内での検討を経て、職員会等で情報共有を図っていくなど、なじみがあるかもしれません。後者は、業務を分野・領域別に分類した上で業務担当(授業担当、進路指導担当、部活動担当など)を再割り当てする方法です。私学ではこうしたスタイルで働き方改革を推進している例もあります。業務の分業化は、業務の効率化や専門性の向上とともに、業務の標準化・規格化ももた らし得ます(ところで、学校業務の標準化・規格化は「悪」でしょうか)。また、業務過程の細分化は、業務責任の分有化を意味するため、責任の所在が不明確となったり、業務の全体像を把握することが難しくなるという側面もあります。  

 

第3は、業務の「協業化」です。他の組織等との協力・連携・協働を通じて、共通の目的を実現することを指します。異業種の組織同士が新商品を共同開発したり、自治体と企業が連携して地域活性化プロジェクトを進めたりする例が近年増えていますが、教育分野では学校と地域団体が連携して防災教育を行うこと等もここに含めてもいいかもしれません。協業化のポイントは「目的の共有」にありますが、異質な他者とのコミュニケーションが不可避となるため、業務の進め方に対する考え方の違いや、業務そのものに対する価値観の違いなど、「分かり合えなさ」に違和感や絶望を感じることだってあるでしょう。他方で、互いの組織の強みを生かしながら、持っているリソースを補完し合うことで、新たな価値を創造する可能性も秘めている点は注目すべきです。

 

ご関心のある方はぜひご一読ください。

引き続きよろしくお願いします。