信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室に関するブログです。

【研修】「若手社員の育ち方/育て方ー「世代間ギャップ」を超えて」@信濃毎日新聞キャップ・デスク研修

信濃毎日新聞社のキャップ・デスク対象の研修として、「若手社員の育ち方/育て方ー「世代間ギャップ」を超えて」と題した研修を担当させていただきました。

 


9月27日は、長野本社で、28日は松本本社で開催です。

 


こちらは、主として、教育学、心理学、社会学、キャリア教育論などの知見を総動員して臨みましたが、2日間とも質疑応答の場で様々な観点からご質問もいただき、とても有意義な時間となりました。

【講演】「学校における働き方改革と学校事務職員の役割」@第1回長野上水内学校事務研究会研修会

【講演】「学校における働き方改革と学校事務職員の役割」@第1回長野上水内学校事務研究会研修会


9月20日信濃教育会館にて「第1回長野上水内学校事務研究会研修会」で講演をさせていただきました。

 

テーマは、「学校における働き方改革と学校事務職員の役割」です。

 

私の学校事務職員の皆さんに対する問題意識は、以下の通りです。

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①学校事務職員が「学校」で働く意義は、何か
②今後の学校事務職員に求められる資質・能力とは、何か
働き方改革の一環として、自分の業務量を減らすために、何ができるか
④教員の多忙化対策のために、何ができるか
⑤教員の業務で学校事務職員が分有できる業務はあるか
⑥若手職員を中心とした学校事務職員の力量を高めるためには、
どのような「取り組み」と「仕組み」(仕掛け)が必要か
⑦学校教育法第37条第14項「事務職員は、事務をつかさどる」を受けて、個人として、地区研として、県事研として、どのような取り組みが必要となるか
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このことを前提として、
昨今の学校における働き方改革が学校事務職員に投げかけていることは何か、

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 ・学校事務の適正化
・学校徴収金問題
・学校事務職員の業務改善
・変形労働時間制

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など、今後の議論の方向性を提示させていただきました。

 

質疑応答の時間では多くの質問をいただきまして、
私としてもいただいた論点に対して自分なりの応答をして参りたいと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

【講演】「これからの高校教育のあり方を考える」@ 長野県高等学校長会 生徒の主体性を育む専門委員会実践報告会・講演会

【講演】「これからの高校教育のあり方を考える」@ 長野県高等学校長会 生徒の主体性を育む専門委員会実践報告会・講演会

 


9月18日は、 長野県岡谷南高校で開催された生徒の主体性を育む専門委員会の場 で、「これからの高校教育のあり方を考える」 と題した講演をさせていただきました。


生徒向けには、「自分のキャリアをどのように展望していくか」、 教員向けには、「子どものキャリアを、 どのように展望していくか」とのテーマを前提に、


Q:これからどんな社会が到来するのか?
Q:日本の子どもの「学力」は、どのように捉えられているのか?
Q: これからキャリアを積んでいく上で何が大切になってくるのか?


の問いからアプローチさせていただきました。

 


長野県における高校改革は、「学びの改革」から「高校改革〜 夢に挑戦する学び〜」へフェーズが移行していますが、
高大接続改革、大学入学共通テスト(新テスト)、国語・ 数学の記述問題、英語の4技能(聞く・読む・話す・書く) など対応すべき課題は山積しています。


他方で、社会人として生きていく上で重要となる「非認知的能力」 (やり抜く力、忍耐力、誠実さ、自制心、楽観主義、責任感、 好奇心、学習・労働意欲、自信、努力、協調性、計画力など) を高校教育の時点でどのような機会を通じて育成していくことがで きるか、高校業界でも議論されてしかるべきだと考えています。


若手教員の参加が多かったこともありまして、 本来ならばもっと現場での課題を元に議論してみたかったですが 、またこのような機会があればと思っております。

 

 

なお、講演の前には以下の学校での実践報告会があり、 大変興味深く拝聴させていただきました。


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[北信]   篠ノ井高校犀峡校 「小さなキャンパスが拓く大きな可能性 地域連携フォーラム」 
[東信]   佐久平総合技術高校臼田キャンパス 「ボランティア部」の取組 
[中信]   梓川高校 「満蒙開拓団紙芝居プロジェクト」  
[南信]   阿南高校 郷土芸能「新野の雪まつり」の取組 
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引き続き、サブジェクティビティに想いを巡らせて参る所存です。

 

 

 

【地域連携】平成30年度生徒の主体性を育む夏合宿@長野県総合教育センター

【地域連携】平成30年度生徒の主体性を育む夏合宿@長野県総合教育センター

 

9月8-9日と2日間にわたり長野県総合教育センターにおきまして、「平成30年度生徒の主体性を育む夏合宿」が開催されました。

主催は、長野県高等学校長会(生徒の主体性を育む専門委員会」と長野県教育委員会ですが、そこに信州大学教職支援センターが大学生スタッフとともに、サポートする形で開催されました。


目的は以下の5つですが、私としては、高校生と大学生とが共に学び合う「コラーニング」の場になればと思い、微力ながらお手伝いさせていただきました。
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(1) 校内外における自主活動について高校生同士で情報交換する。
(2) 情報交換により広がった視野で、自らのこれまでの活動を見直す。
(3) 自らの活動を見直すことを通じ、これから取り組むべき活動を構想する。
(4) これから取り組むべき活動を実現するために必要な仲間を見つける。
(5) 仲間とともに新たな取組についての提言を考え、発信する。
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今回は、県内高校生82名が参加し、信州大学の学生11名がサポートするという過去最大の開催規模で、4つのカテゴリー(学習、課題活動、社会問題、人間関係)、以下の10のテーマに基づく熟議を行いました。

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1「長期休業 充実した夏休みについて」
2「現状の授業と私たちが考える理想の授業」
3「快適に勉強するためにー学習・設備環境グループ」
4「高校生の声を町の未来に」
5「生徒会に興味関心をもってもらうには」
6「部活動の関わり方」
7「日本における食料問題」
8「現代における私たちの生き方」
9「先生と生徒の関係」
10「生徒と先生の関係」
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主体性を育む夏合宿に関しては、第1回目からお手伝いさせていただいておりますが、
回を重ねるごとに、質量ともに「進化」してきているのではないかと感じています。

教職支援センターの地域連携部門長としては、
今後も個別学校の支援も行っていけたらと考えております。

当日はマスコミ取材やテレビ撮影もあり、そのこと自体も生徒や大学生にとっていい刺激となったようです。

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180909/KT180908SFI090003000.php

【学会発表】「給特法の成立過程と日教組」@ 第77回日本教育学会大会

【学会発表】「給特法の成立過程と日教組」@ 第77回日本教育学会大会


9月1日に宮城教育大学で開催されました第77回日本教育学会に おきまして「給特法の成立過程と日教組」とのタイトルで、
名古屋大学の丸山和昭先生、 川崎医療福祉大学の田中真秀先生と共同発表をさせていただきまし た。


 本研究は、1971年に成立した「 国立および公立の義務教育諸学校における教育職員の給与等に関す る特別措置法」の制度化過程について,主に, 給特法の成立前後における日教組の表面的な動向の背後にあった組 合内部の議論について, 日教組側の史料を用いて解明を試みました。 特に焦点を当てたのは, 文部省が教員給与改善措置費の予算要求を行った1967年8月か ら、 給特法の成立後に日教組と文部省の間で合意が成立した1971年 7月までの期間です。


以下は、発表要旨からの抜粋です。


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 給特法の成立過程は,日教組のロジックを中心に概括すると, 次のようなものであった。
 給特法成立の前提として重要なのは, 日教組が1960年代に超過勤務問題への対応として展開した裁判 闘争である。日教組側の主張が勝訴を重ねていたことが, 文部省が1967年8月に教員給与改善措置費の予算要求を行った 背景のひとつとなった。この文部省の姿勢に対し, 自民党文教部会が強硬な反対を示し, 対案として1969年1月に「 国立又は公立の学校の教育公務員の専門職としての職務の特殊性と 高度の責任にかんがみ、これに教職特別俸給調整額を支給する」 方針を掲げたことが,給特法を巡る議論の端緒である。
 自民党文教族の姿勢に対し、日教組が示した対応方針は「 労基法全面適用排除の方針を撤回させ、 教員に対しては超過勤務の命令が出せないよう法的措置をとらせる ことを前提として、超勤手当請求権を一時的に留保し、 包括超勤手当分として8%を支給させる」といったものであった。 しかし同時に日教組は, 自民党文教族案に対する対案提出の必要に迫られた。 1970年1月,日教組は、「① 測定可能な時間外労働に対しては超勤手当を要求、② 教育労働の特殊性にかんがみ、自主性、自発性、 創造性にもとづく時間外労働に対しては、定率(4~8%) の特別手当(調整額含む)を要求」, という二本立て要求を対案として提示した。 教育労働の一般性と特殊性の両立を求めるロジックであったといえ るだろう。
 しかし, 最終的に文部省の側から1970年2月に提出された給特法案は, 測定可能かどうかの区分を行なわず, 一律に調整額支給と労基法除外を行なうものであった。そのため, 日教組は法改正を要求するストライキを5月に決定するなど, 反対運動を展開した。国会でも三野党共同(社会・共産・公明) による修正案が出されるも,自民党強行採決が行われ, 5月24日,原案のままに給特法は成立することとなった。 ただし給特法の実施の在り方については, 法案成立後に日教組と文部省の間に交渉の機会ももたれている。 1971年7月には,日教組の槇枝書記長, 文部省の西岡政務次官両名の署名を含む合意議事録が成立し, 給特法問題の一応の決着が図られた。以後,日教組は, 合意内容に基づく各都道府県・職場レベルでの協定の締結と, 協定順守を求める運動を中心に, 継続的な超勤排除に取り組んでいくこととなった。
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あらためて、丸山先生、田中先生お疲れ様でした。

【司会】「ラウンドテーブル 中等教育における探究的な学習と「課題研究」 教育の重要性と可能性」

【司会】「ラウンドテーブル 中等教育における探究的な学習と「課題研究」 教育の重要性と可能性」


8月30日に宮城教育大学で開催されました第77回日本教育学会 のラウンドテーブル「中等教育における探究的な学習と「 課題研究」教育の重要性と可能性」 の司会を担当させていただきました。


現在、長野県におきまして「探究学習」 に関して微力ながらお手伝いさせていただいている身としては、 とてもいい機会を得まして、非常に濃密な2時間となりました。

 


当該ラウンドテーブルの趣旨は、以下の通りです。


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 「総合的な学習の時間」が学習指導要領で創設されて早20年。 「総合的な学習の時間」は、 身の回りにある様々な問題状況について、自ら課題を見付け、 自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、 よりよく問題を解決していく生徒の姿が期待されてきた。 しかしながら、これまでの単純な「教える-学ぶ」 という関係から新しい教師-生徒関係を想定しながら「 総合的な学習の時間」を作り上げていくことは、 決して平坦な道のりではなかった。その一方で、 知識基盤社会に進んでいくなかで、このような問題発見- 解決型プロセスの学びに対するニーズは高まっている。例えば、 SSHやSGHに認定された学校では、多くの「探究」 の授業が実施されるようになっている。 そして新学習指導要領では、高校においてさまざまな教科で「 探究」を冠した科目が設置され、「総合的な探究の時間」 もスタートする。


「探究」と称する形で中等教育の学習過程における問題発見- 解決型プロセスを導入することは目新しく感じるかもしれないもの の、本来、 研究者が行っている研究プロセスには組み込まれているものである 。特に、社会科学の研究では、 自らの問題関心に基づいた課題発見と解決のプロセスの修得が独立 した研究者たるためには必須とされている。 このような社会科学の研究プロセスの導入を高校段階の探究活動に 組み込むことは、中等教育における問題発見- 解決型学習の実施円滑化にとどまらず、 生徒たちが卒業した後の大学などでの研究活動や創造的な職業キャ リアの形成にも大いに役立ちうるはずである。


本ラウンドテーブルでは、『課題研究メソッド』(啓林館) を著した岡本尚也氏をはじめ、 上記のような問題意識を共有する社会科学の研究者と現職教員たち による中学校・ 高等学校において行なった教育実践についての報告を基調として、 探究的な学習をより良くしていく方向性を研究者と現職教員の垣根 を越えて議論する場としたい。
当日の進行は、以下の予定である。はじめに、企画者の相澤から、 本ラウンドテーブルの趣旨説明と、大学教員の視点から「 課題研究」「中高現場での社会調査実習」 について報告が行われる。児玉は、中学高校教員の視点から「 課題研究」「中高現場での社会調査実習」について報告を行う。 岡本からは中高現場における「課題研究」 についてのより詳細な報告がある。そして後半では、 これらを受ける形での自由討論を予定している。
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なお、私の方で今後の論点として検討すべき事柄として、 次のような点を提起させていただきました。


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・「探究的な学び」と「探究学習」と「課題研究」の異同は何か
・「探究的な学び」の阻害要因は何か(組織体制、文化、 規範など)
・「探究的な学び」の評価は、どのようにしていくか( プロセス評価、ポートフォリオ、パフォーマンス評価、 ルーブリック評価)
・「探究的な学び」の評価の「調査書」 への変換をどのように考えたらよいのか
・「探究的な学び」と既存の「教科目」 や教科外活動との関係をどのように考えたら良いのか
・「探究的な学び」を通して、何が残るのか( 非認知的能力自己肯定感、自尊心など)
・「探究的な学び」と認知能力・ 非認知的能力との関係はどのようなものか
・教育課程における妥当な「時間配分」の標準はあるのか
・小・中・高・大学における「探究的な学び」の質の違いは何か
・「課題研究」 のメソトロジーを学ぶことの意味とモチベーションの維持の関係を どのように考えるか
・「プレゼン至上主義」「這い回る経験主義」 の再訪をどのように考えるか
・「個人研究」と「共同研究」のバランスをどのように考えるか
・「課題解決学習」と「課題発見学習」 の関係をどのように考えるか
・「大きな問い」を「小さな問い」 へと因数分解することを方法論としてパッケージ化することは可能 か
・「課題研究」の普遍化・一般化の先にあるのは、規格化・ 陳腐化か
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上記の論点に関して今後も定点観測をするとともに、 アクションリサーチもしていけたらと考えております。


企画者の相澤真一先生(中京大学)、報告者の児玉英靖先生( 洛星中学・高等学校)、岡本尚也先生(一般社団法人Glocal Academy理事長)、そしてご参加いただいた会員の皆様、 お疲れ様でした。 これを機会に引き続きよろしくお願いいたします。

【書評】荒井英治郎「樋田大二郎・樋田有一郎『人口減少社会と高校魅力化プロジェクト―地域人材育成の教育社会学』」『月間高校教育』2018年9月号,学事出版

【書評】荒井英治郎「樋田大二郎・樋田有一郎『人口減少社会と高校魅力化プロジェクト―地域人材育成の教育社会学』」『月間高校教育』2018年9月号,学事出版

 


『月刊高校教育』2018年9月号に、
『人口減少社会と高校魅力化プロジェクト―地域人材育成の教育社会学』の書評を書かせていただきました。


これまでの地方郡部の教育に対する「通説」は、①意識・能力の高い教員によって行われる特徴的な教育実践は単発に終わり、結果として教員の異動によりその実践は消える、②また、教育の成果が上がれば上がるほど、優秀な生徒は地元を去っていく、というものでした。

 

これに対して、本書は、教育社会学の方法論によって、今やUターン・定住促進・地域活性化・高校魅力化の先進地域となっている島根県の離島・中山間地域における高校魅力化プロジェクトを「地域人材育成」の観点から分析したものです。

 

 

本書を通じて、島根における高校魅力化プロジェクトの全体像を把握できるだけでなく、自身の学校の「過去」と「現在」を振り返り、「未来」を展望する機会を得るに違いありません。今後、パターン・ランゲージ(良い実践の秘訣を共有するための方法)の役割を担っていくであろう本書をぜひご一読ください。

 

 

人口減少社会と高校魅力化プロジェクト――地域人材育成の教育社会学

人口減少社会と高校魅力化プロジェクト――地域人材育成の教育社会学