【書評】荒井英治郎「書評:溝上慎一『主体性総論』『月刊高校教育』2026年5月号,108頁
このたび学事出版さんの『月刊高校教育』(2026年5月号)に、『主体性総論』の書評を執筆させていただきました。
https://www.toshindo-pub.com/book/92005/
学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が謳われ、企業は「主体的に動く人材」を求め、ポストには「自分の頭で考えること」を喧伝するチラシが溢れるなど、「主体性」は、学校・企業・子育てとあらゆる場所で、私たちを包囲しています。
また、努力や選択の結果を個人に帰す自己責任論が跋扈する空気感の中で、「主体的であれ」との要求はときに圧力となり、主体性は責任の個人化を正当化する言説にいとも簡単に転化し得ます。耳障りのいい「主体性」概念は両義性を伴います。
これに対して、心理学、教育学、社会理論の視点から「主体性」概念の統合的理解を試みたのが、本書です。
本書では、主体性を「主体(人間)が客体(環境)に対して前のめりに働きかける状態」(142頁)と定義した上で、主体性を積極性や自発性等の心理特性として扱う通俗的理解を棄却し、その本質を状況の意味を自ら解釈し、関係の中で位置を取り、選択を引き受け、その結果に責任を持とうとする内面的構えに見出します。他者・社会との関係性の中で形成される動的なプロセスとして、主体性を捉えるのです。
学習者を自立・自律した個別の学習環境に突如放り込み、学びの帰結を学習者の姿勢・資質・性格のせいにしてしまう罠にハマっていないでしょうか。
興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。