信州大学 教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【校内研修】「「働き方改革」のマインドセットー「働きがい」と「働きやすさ」の両立を目指す学校は、何から、どのように始めていくか」@宮田村立宮田小学校

【校内研修】「「働き方改革」のマインドセットー「働きがい」と「働きやすさ」の両立を目指す学校は、何から、どのように始めていくか」@宮田村立宮田小学校


2025年11月19日、宮田村立宮田小学校にて、「「働き方改革」のマインドセットー「働きがい」と「働きやすさ」の両立を目指す学校は、何から、どのように始めていくか」と題した校内研修をワークショップ風にお届けしました。

 

今回は、働き方改革の中でも「マインドセット」部分に焦点を当てて、主に教員の「働き方改革」と持続可能な学校組織の構築に焦点を当てた内容としました。

 

特に、「働きがい」と「働きやすさ」の両立を目指すための「立ち止まる」ことの重要性や「アンラーン(学びほぐし)」の実践を提案すると同時に、長時間労働に陥りやすい教員や職場の特徴を紹介と、それを改善するための外科的・漢方的治療(改善策)を提示しました。さらに、改革を推進する上での「ワーク・エンゲイジメント」の向上や、組織内での対話、信頼構築の必要性といった具体的なアプローチについてもご紹介しました。

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1. 働き方改革の出発点

・忙しさの中で失われがちな「立ち止まる時間」を取り戻し、価値創造の源泉を再確認する。
・学校組織には「慣性(前例踏襲)」が強く働くため、アンラーン(学びほぐし)が不可欠。
・ 改革は「嫌・不安・違和感」と向き合うところから始まる。

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2. 教員政策と学習指導要領のこれから
・国レベルでは、勤務時間管理の徹底、健康管理の重視、「意識改革+行動改革」を同時推進。
・教員の業務は「学校の業務/学校以外でもできる業務/教員の専門性が必要な業務」に再整理され、取捨選択が求められている。

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3. 「働き方改革」との距離感
・1~7段階の“温度差”がある(レイヤーズ・コンセンサス)。
・「改革は理想論」「自分の業界は特殊」「改革後を想像できない」などの心理が抵抗の背景。

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4.「贅肉」と「筋肉」
●贅肉(削るべき慣習・属人的業務)
・無自覚に続く慣行、属人化した仕事、話し合われない「当たり前」。
●筋肉(残す・鍛えるべき仕事)
・子ども理解、対話と協働、ケース会議、地域連携、教科専門性の向上。
・組織で進める改革には、多様な価値観を前提にした「対話」の仕組みが必須。

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5. 長野県の働き方改革
・量的アプローチ:客観的勤務時間管理(在校等+休日勤務+持ち帰り)。
・質的アプローチ:ストレスチェック・活き活き×やりがい職場調査。
・目標は「働きがいがあって、働きやすい職場」の実現。

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6. ワーク・エンゲイジメント
●3要素
①活力(Vigor)
②熱意(Dedication)
③没頭(Absorption)

・心身の健康・職務満足・創造性・組織貢献・離職抑制に寄与する。
・個人の資源(自尊心・柔軟性など)と仕事の資源(支援・裁量・役割明確化など)の強化が鍵。

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7. 長時間労働の3タイプ
①完全燃焼タイプ:責任感が強く青天井で働く
②不安憂慮タイプ:自信のなさや不安から長時間に
③何でも屋タイプ:業務が自然集中し“できるだけやる”に陥る
→ いずれもアンラーンが必要。

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8. 職場の問題構造
長時間労働を生む職場の特徴
①業務の属人化
②特定者への業務集中
③ノウハウ共有不足
同調圧力の強さ

●改善策
・外科治療(キャップ・カット・効率化):定時退勤日、行事精選、ICT化、アウトソーシング
・漢方治療:文化づくり、見える化、協働意識、成功体験の共有。

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9. 信頼と対話が改革のキードライバー
・信頼=信用×親近感÷不安感
心理的安全性(発言量の平等・感受性の高さ)がチームの土台。
・対話には「雑談/討論/議論/対話」という4つのモードがあり、目的に応じて使い分ける。

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10. 良い組織の条件(Googleの5因子)
心理的安全性
②相互信頼
③明確な構造
④仕事の意味
⑤仕事のインパク
→ 学校組織にもそのまま応用可能。

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11. 教師の成長とキャリア
・教育は「現在志向」(今の充実)×「未来志向」(価値創造)。
・成長の源は「やや難しい仕事」「任され仕事」「達成感」。
・キャリアは「早く始めてゆったりやる(Early & Slow)」が大切。
・余白(Bathroom/Bus/Bed/Bar)が創造性を生む。

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12. まとめ:働き方改革=生き方改革=あり方改革
・目的は「子どもと向き合う時間」「豊かな教職人生」「持続可能な学校」。
・その実現の鍵は、①現状理解 → ②ロードマップ共有 → ③実行力 → ④対話と納得 → ⑤効果検証という「持続可能な組織づくり」のサイクル。

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今回お伝えしたかったポイントは、以下の4つです。

まず一つ目は、立ち止まることの重要性です。
私たちは、日々の忙しさの中で、自分の働き方や価値観を振り返る時間を失いがちです。しかし、立ち止まることは思考停止ではなく、「気づき」を取り戻す行為です。前例踏襲の慣性が強い学校だからこそ、「これは学校外でも通用するか?」と問い直すアンラーンが大切になります。

二つ目は、働きがいと働きやすさの両立です。
長野県でも、勤務時間の客観管理やストレスチェックなどの取り組みが始まり、教職が持続可能な仕事となることが求められています。その鍵となるのが「ワーク・エンゲイジメント」、つまり活力・熱意・没頭の3つが満たされた状態です。
これを高めるには、個人の工夫だけでなく、職場全体で役割の明確化や支援の充実、心理的安全性のある風土を整えることが不可欠です。

三つ目は、信頼と対話の文化づくりです。
学校組織が機能不全に陥る最大の要因は、信頼の欠如です。
信頼は「信用×親近感÷不安感」という方程式で積み上げられます。そのためには、雑談・議論・対話を意図的に使い分け、お互いの当たり前や価値観の違いを理解しようとする姿勢が求められます。心理的安全性が高い職場は、失敗を責めず、意見が尊重され、結果として子どもへの教育の質も高まります。

最後に、働き方改革は「生き方改革」であり「あり方改革」です。
子どもと向き合う時間を守りながら、教師として、そして一人の人間として、持続可能な働き方を一緒に模索していくことが、未来の学校をつくります。

貴重な機会をありがとうございました。