信州大学 教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【研修】「教職員のウェルビーイングと校務DX」@枚方市教育委員会「笑顔の学校」プロジェクト交流・研修会

【研修】「教職員のウェルビーイングと校務DX」@枚方市教育委員会「笑顔の学校」プロジェクト交流・研修会


2025年11月10日、枚方市教育委員会からの依頼で、「笑顔の学校」プロジェクト交流・研修会の場で「教職員のウェルビーイングと校務DX」と題した講演をオンラインで行いました。
教職員のウェルビーイングの向上と校務DXは、教職員の活力が児童生徒の活力につながるという文脈を通じて成立しうるものです。

当日は、以下の問いを軸に、論を展開しました。
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Q:「あなた」にとって、ウェルビーイングな働き方は、どんな「状態」でしょうか?
→多様な幸せの形(「ありがとう」が増える、授業づくりに時間を割ける、残業が少ないなど)のあり方を考える問い
Q:ICTや校務DXは、誰の負担の「軽減」になっていますか?それとも負担の「形を変えている」だけでしょうか?
→デジタル化が目的化していないか、現在地を考える問い
Q:デジタルの力を使って、「教職員が元気な学校は生徒も元気な学校」にするために、何を増やし、何を手放せる(手渡せる)でしょうか?
→「効率」と「効果」と「人間らしさ」のバランスを考える問い
Q:学校「全体」でウェルビーイングを高めるために、管理職・推進リーダー・若手がそれぞれできることは何でしょうか?
→立場ごとの役割意識を促し、組織開発的な取組を考える問い
Q: 「デジタル」でできることと「人」にしかできないことの境界線を、あなたの校務
の中で、どのように引くことができるでしょうか?
→AI・DX時代の学校・教員の本質的価値(人に寄り添う・判断する・育てる)を考える問い
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今後、来たるべき動向として、①「教職調整額」の増額(現在の月給の4%から、2026年1月より毎年1%ずつ引き上げ、2031年1月には10%まで段階的に増額。1972年の同法施行後、初めての処遇改善)、②「学級担任手当」の加算(学級担任の負担を軽減し、処遇を改善)、③「学校の指導・運営体制」の充実(校務の総合的な調整や若手教員の指導を担う「主務教諭」という職位を新たに設けることが可能に)、④「働き方改革」の推進(教育委員会に対して、教員の長時間労働を解消するため、業務量を管理し、健康を確保するための「業務量管理・健康確保措置実施計画」を策定・公表することを義務付け)が予定されていますが、ますます肝となっていくだろうと予想されることが、多様な教職員の多様な「働きがい」をどのように組織として包摂していくことができるかという点です。

 


講演では、「やりがい」の分解と統合を目的として、以下の叩き台を素材としてお示ししました。
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●「やりがい」の分解・統合
① 成長実感型(自己成長・自己効力感)
内容:授業力・児童生徒理解・リーダーシップなど、自分が以前よりできるようになった、知識・スキル・人間性が高まったと感じるときに、やりがいを感じるタイプ
例:「授業改善で子どもの反応が変わった」「自分の言葉かけが少し上手くなった」
鍵:振り返りや共有の文化、自己研鑽を支える時間と風土


② 貢献実感型(他者・社会への役立ち感)
内容:子どもの成長や笑顔、保護者・地域からの感謝など、自分の行動が誰かの役に立ったり、社会に良い影響を与えたときに、やりがいを感じる
例: 「あの子の表情が明るくなった」 「地域に貢献できた」
鍵:成果を共有する場、感謝やねぎらいの文化


③ 達成・挑戦型(目標到達・成功体験)
内容:難しい学級運営、行事運営、研究テーマなど、困難な目標を設定し、それを達成できた達成感から、やりがいを感じるタイプ
例:「大変だったが運動会が成功した」「授業改善案が実を結んだ」
鍵:挑戦を後押しする風土、リスクを許容する管理職の姿勢


④ 自律・裁量型(自分の意思で動ける実感)
内容:他人に強制されず、自分で考え選び、行動できていると感じるときに、やりがいを感じるタイプ
例:「自分の判断で進められた」「信頼されて任された」「学年で工夫した取組を自分たちで設計できた」
鍵:過度な統制を避け、裁量を尊重する組織文化


⑤ 共感・関係型(つながりや信頼の中での喜び)
内容:仲間・子ども・同僚・保護者などとの関係性やチームワークの中に、やりがいを感じるタイプ
例:「みんなで乗り越えられた」「信頼し合える関係がうれしい」「互い
に相談し合える関係が心強い」
鍵:対話の機会、感情の共有、支え合いの仕組み


⑥ 意義・使命型(価値観や信念との一致)
内容:自分の仕事や行動が「自分の信じる価値観」「生きる目的」とつながっているときに、やりがいを感じるタイプ
例:「この仕事は自分の使命だ」「子どもの可能性を信じることが自分の原点だ」「この学校の理念に共感している」
鍵:学校ビジョンの共有、理念を語る場づくり


⑦ 美的・創造型(表現・創造の喜び)
内容:授業づくり・教材開発・学校行事の企画など、何かを創り出したり、美しく整えたり、表現する過程そのものに、やりがいを感じる。
例:「形になっていくのが楽しい」「集中して没頭できた」「新しい取組を形にできた」
鍵:挑戦を称える風土、成果を広げる発信の機会
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私たちは、色々なタイプのやりがいを組み合わせて、生きています。職場づくりの観点からは、どのタイプのやりがいを支える環境があるかを意識することがポイントとなります。


貴重な機会をどうもありがとうございました。