信州大学 教育基盤構築センター 荒井英治郎研究室

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【論文】「2020年国勢調査にみる長野県の義務教育未修了者」『基礎教育保障学研究 別冊』第2号,2025年8月,99-106頁。

【論文】「2020年国勢調査にみる長野県の義務教育未修了者」『基礎教育保障学研究 別冊』第2号,2025年8月,99-106頁。

 

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 ウェルビーイングの実現を謳う日本において「幸せに生きるために、学ぶ」ことは、贅沢な ことか。学ぶことは不安と心配の日常から、人間としての尊厳を取り戻す歩みと重なる部 分が少なくなく、当事者にとって「学ぶこと」は「生きること」に直結している。人はなぜ学ぶのかという本質的な問いを投げかける存在に、夜間中学等の制度の意義があるといってよ く、生存権や学習権の保障にとどまらず、幸福追求権の実現を射程に含めた人権概念を基 軸とする制度設計・運用が求められている。

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このたび、『基礎教育保障学研究 別冊』第2号に、「2020年国勢調査にみる長野県の義務教育未修了者」と題した論考を執筆いたしました。

以下、アブストです。

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1. 研究の目的
・2020年国勢調査のデータを用い、長野県における義務教育未修了者(15歳以上で「小学校卒」または「未就学」)の実態を明らかにする。
夜間中学や多様な学びの場の設置に向けた基礎資料とする。

2. 義務教育未修了者の全体像
・長野県全体で 18,486人(約1.05%)。全国平均(0.83%)より高い。
「小学校卒」:17,150人(その89%が85歳以上)「未就学」:1,336人
・高齢者が大多数だが、現行の義務教育を学び直したい層や外国籍住民の存在も確認される。

3. 地域別の特徴
・北信:5,323人(長野市が最多2,408人)
・東信:3,660人(上田市が最多1,090人)
・中信:3,894人(松本市が最多1,701人)
・南信:5,609人(飯田市が最多1,321人、率1.56%)
・村部で特に未修了率が高い(例:栄村5.08%、野沢温泉村3.40%)。

4. 教育委員会の取組
●夜間中学設置検討会議(令和5年発足)
・当事者62人中61人が通学希望。40〜50代が多く、外国籍ではブラジル出身者が目立つ。
・ニーズは上田市松本市周辺で集中。通学時間30分以内希望が65%。
・支援者調査では396人分の潜在ニーズを把握。

不登校児童生徒等の学びの継続支援懇談会
フリースクール関係者や保護者とともに、多様な学びの場の意義や課題を議論。

5. 新たな方向性
・令和6年4月に 「信州オープンドアスクール創造会議」 が設置。
夜間中学と「学びの多様化学校」を併設し、インクルーシブで柔軟な学びの場を構想。
上田市軽井沢町が設置検討を表明、令和9年4月開校を目指す。

コンセプト:
学校に行けなかった人の学び直し支援
外国籍・外国ルーツの人の学習ニーズへの対応
不登校児童生徒の居場所・学びの選択肢拡大

6. 結論
・義務教育未修了者の存在は、高齢者層にとどまらず外国籍や不登校経験者にも広がっている。
・「学ぶことは生きること」に直結しており、学習権の保障のみならず幸福追求権の実現を目指す制度設計が求められる。
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なお、当該別冊には、他の都道府県のデータ等も記載されいます。

以下のサイトと重ねて参照ください。貴重な機会をありがとうございました。

https://map.jasbel.org/nagano/


[別冊データ]
https://drive.google.com/file/d/1Dve8lQxgK6-oHqGWgA2mX3CATMWJSeJF/view?fbclid=IwdGRjcAMgg3ljbGNrAyB6KmV4dG4DYWVtAjEwAGJyaWQRMXZqYXRlQ3VLUmx5eW1SNEsBHhZfKOhwfMWDHMLZFH9M47MlsTRxTWL8FTlai8fpanierczIx2UyKNJY5zUI_aem_PD8cPo9cxBlgho0ZyYW4Fw

 

[基礎教育保障学会]
https://jasbel.org