信州大学 教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【特集論文】「日本初の『信州型フリースクール認証制度』がめざすもの-当事者性の確保と行政の伴走による「共創」の実現-(特集:不登校の子どもの学びの場)」『指導と評価』2025年7月号,33-35頁

【特集論文】「日本初の『信州型フリースクール認証制度』がめざすもの-当事者性の確保と行政の伴走による「共創」の実現-(特集:不登校の子どもの学びの場)」『指導と評価』2025年7月号,33-35頁

 

図書文化編集部からご依頼いただき、『指導と評価』に「日本初の『信州型フリースクール認証制度』がめざすもの-当事者性の確保と行政の伴走による「共創」の実現-」と題した論考を寄稿させていただきました。

 

不登校現象を、子ども本人の問題として矮小化したままでは大人の責任放棄の誹りをまぬがれず、多様な居場所と学びの機会を具体的に創出し、子どもの暮らしに根ざしたものへと育てていかなくてはなりません。

 

これに対して、長野県は、不登校児童生徒等の多様な学びの場の確保・充実を図るため、県内のフリースクール等民間施設を認証し、財政支援等を実施する「信州型フリースクール認証制度」を日本で初めて創設しました。

 

私は、制度創設にあたり設置された会議の座長を務め、ここ数年、納得解を導き出していく「共創」は、手間も時間もかかりますが、このコストを大人が払わずして、多様化する子どもたちを包摂するシステムの構築は実現しえないという気持ちから尽力してきました。

 

以下、項目となりますが、制度設計時に考慮したポイントを掴んでいただけるのではないかと思います。
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1 制度設計のポイント
(1)エビデンスの確保
(2)当事者性の確保
(3)公開性の確保
(4)行政による伴走支援

2 制度運用のポイント
(1)地域・社会資源の活用
(2)自由と多様性の尊重
(3)運営経費に対する支援
(4)運営体制に対する支援
 ①研修制度の構築
 ②サポート人材の活用
 ③FSプラットフォーム(協議会等)の設立支援
 ④FSの情報公開・発信に資する専用ポータルサイトの構築

おわりに
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以下、「おわりに」部分の一節です。

 

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 信州型フリースクール認証制度は、当事者(子ども・保護者)の意見を聴きながら、不断のコミュニケーションを通じて制度改善に取り組む「共に育てていく制度」として位置づけられている。「認証」という言葉が一人歩きしているが、同制度の目的は、すべての子どもの「学習権の保障」にある。また、同制度には、子ども・保護者・地域・学校・行政・FS・居場所関係者の関係を再構築していくことが期待されている。事実、制度発足一年目から、認証FSを交えて、認証制度の改善ワークショップ、研修の内容充実ワークショップ、補助制度の見直し検討等にかかわる連絡会等が開催され、「共創」の機運は高まりつつある。

 

 納得解を導き出していく「共創」は、手間も時間もかかる。しかし、このコストを大人が払わずして、多様化する子どもたちを包摂するシステムの構築は実現しえない。

 

 制度設計段階では、制度により自由度が失われるのではないか、類型する必要はあるのか、FSどうしが比較されるのではないか等の懸念も示された。いまだ存在していない制度を前に当然の反応である。この意味で、学校外の学びの場はどうあるべきか、子どもや保護者の思いを軸に関係者で対話を続け制度を支えていくことは、制度構築後にこそ必要となろう。認証制度は、公立学校の受け皿ではなく、学校と学校外の学びをつなぎ「触媒」としての機能も果たしうるのであり、不断の対話は、公教育のあり方を問い直し、再創造していく契機ともなるのである。

 

 長野県の認証制度は「唯一最善の制度」ではない。当事者性・公開性の確保を模索した長野県の挑戦事例を先例とし、今後、自治体の文脈に応じた最適な制度が構築されていくことを切に願う。まずは困り感を共有することで絡まった糸をていねいにほぐし、対話の土壌づくりから始めることをお勧めしたい。関係とは、はじめからあるものではなく、つなぎ、結び、深めていくものだからである。

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ご関心のある方はぜひ手に取っていただけたら幸いです。

 

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