信州大学 教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【論文】荒井英治郎「第二期中央教育審議会における戦後私学行政問題と改善方策─第9回答申の審議過程に着目して」日本学校教育学会編『学校教育研究』第39号,2024年7月,100−115頁

【論文】荒井英治郎「第二期中央教育審議会における戦後私学行政問題と改善方策─第9回答申の審議過程に着目して」日本学校教育学会編『学校教育研究』第39号,2024年7月,100−115頁
 

 日本学校教育学会に投稿した論文「第二期中央教育審議会における戦後私学行政問題と改善方策─第9回答申の審議過程に着目して」が掲載されました。
 
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I033737478
 

本稿では、第二期中央教育審議会における第9回答申「私立学校教育の振興について」(1955年発表)の審議過程の検討を通じて、戦後私学改革の当時の評価と戦後私学行政問題に対する改善方策を分析しました。

 

 第二期中央教育審議会は、1955年2月21日に諮問を受け、同年9月12日に第9回答申を公表しています。審議の過程では、学校法人制度、私学行政制度、私学助成制度の内容を規定する私立学校法に対する評価を軸として、戦後私学行政問題に関する議論が集中して行われました。
 では、戦後改革を経験した当事者(文部省関係者、私学行政関係者、私学関係者、中央教育審議会委員)は、戦後私学改革をどのように評価していたのか、戦後私学行政の実態と共に実証的に明らかにすることを本稿の目的として設定しました。

 

 本稿では、先行研究で活用されていない中央教育審議会総会の速記録(国立公文書館所蔵)、文部省調査局企画課に在籍し中央教育審議会事務局を担当した石川二郎氏の『石川二郎旧蔵資料』(国立教育政策研究所教育図書館所蔵)、第二期中央教育審議会内に設置される第五特別委員会の主査を務めた森戸辰男氏の『森戸辰男関係文書』(広島大学文書館・横浜市所蔵)を検討対象に据え、分析の結果、戦後私学改革については一定の評価がなされたものの、山積する課題解決のためには行政監督の強化を通じた公共性の確保が必要であるということを、文部省関係者、私学行政関係者、中央教育審議会委員のみならず、戦後私学改革を牽引した私学関係者さえも強く認識・提起していたことを明らかにしました。特に、審議の過程では、私学の公共性の確保は、行政監督によってなしうるという理解が前提視されていた点は注目に値します。