信州大学 教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【論考】「新たな物語を紡ぐ─『越境』と『アンラーン』(第11回 学校変革!自由と可能性の解放─先生のマイプロジェクト)」『教職研修』2025年2月号,2025年,46-47頁。

【論考】「新たな物語を紡ぐ─『越境』と『アンラーン』(第11回 学校変革!自由と可能性の解放─先生のマイプロジェクト)」『教職研修』2025年2月号,2025年,46-47頁。

 

教育開発研究所の『教職研修』2025年2月号に、「新たな物語を紡ぐ─『越境』と『アンラーン』」と題した文章を寄稿いたしました。

 

本連載は、先生の幸せ研究所が2022年に行った「先生のマイプロジェクト」の参加者のうちの9名が「自由と可能性の解放」の過程をリフレクションし言語化を試みるものでした。ここでの自由とは、「自己決定していいと知っていること」、可能性とは、「実現する力が自分にはあると思えていること」と説明されています。筆者は、「観察者」としてそのプロセスに立ち会い、2023年には個別インタビューも実施しました。ライフヒストリーや教職キャリアを振り返る対話の場には、日々迷いながらも、現在地を的確に捉え、描きたい未来を見据える言葉が溢れました。等身大の自分に真摯に向き合い、他者への敬意も忘れない姿勢は、極めて真性なものだったのです。立場は違えども、現場は違えども、共通する要素は、過程としての「越境」と、結果としての「アンラーン」でした。


●「越境」と「アンラーン」

第1に、参加者の「自由と可能性」を解放したきっかけとなったのは、「越境」でした。日常と一味違う場(キックオフは、焚火に集い未来を語るための宿泊型ミーティング施設)で、普段の同僚と異なる他者と、いつもと違う時間の流れに身を委ねながら多様な価値観を交差させて紡がれた対話のプロセスが、稀有な「越境」体験となったのです。

 

第2に、マイプロ参加者が実践したのが、「これまでに身につけた思考のクセを取り除く」 と説明される「アンラーン」です。

アンラーンの実践は、時に「自己否定」にもつながりますから、心地のよい時間とは限りません。喧伝される「アップデート」は言うは易し、行うは難しです。特に、教育関係者は、過去の成功体験に縛られることで既存の価値観に固執してしまう「コンピテンシー・トラップ」(有能さの罠)にハマりがちです 。他方、変化を歓迎する風土が醸成された学校からは、「学習する組織」としての胎動を確かに感じることができるでしょう。アンラーンの実践は、「個人」から「組織」へ波及するのです。

 

●「ストーリー」と「ヒストリー」

「平凡」とも思われる誰かのヒストリーは、別の誰かのヒストリーと出会うことで、問い問われ、紐づけられ、「非凡」なストーリーとして紡がれていきます。

誰かの「物語」(ストーリー)が、私たちを勇気づける「歴史」(ヒストリー)として時代に刻まれていく。これまでの当たり前を問い直し、新しい当たり前を共に創っていく「マイプロジェクト」の輪に加わり、「未完のプロジェクト」である終わりなき教育の旅を謳歌してはいかがでしょうか。

ご関心のある方は、連載とともに、ぜひお読みいただけたら幸いです。