信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【書評】荒井英治郎「アンディ・ハーグリーブス、マイケル・フラン『専門職としての教師の資本』」『月刊高校教育』2022年6月号

【書評】荒井英治郎「アンディ・ハーグリーブス、マイケル・フラン『専門職としての教師の資本』」『月刊高校教育』2022年6月号
 

 『月刊高校教育』からのご依頼で、アンディ・ハーグリーブスとマイケル・フランの著書『専門職としての教師の資本』の書評を執筆させていただきました。

 

https://www.gakuji.co.jp/script/magTop.php?fieldcd1=810 

https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b595835.html 

 

・教育の水準が高度化すればするほど、子どもの学びは教師の質に左右されます。
・しかし、競争や不安を煽ることで、質が担保される保証はありません。
・自己犠牲に伴うサービス残業は、低コストで一定の成果を得られるかもしれないが、バーンアウトを誘発します。
・学業成績等に連動させた給与体系をチラつかせる戦略は、ごく一部の教師を動機づけるに留まります。
・教職バッシングは市民の一時的なストレス解消になりえても、教師の力の平均値はあがりません。

 

ではどうしたらいいのか。

 

本書は、①「人的資本」、②「社会関係資本」、③「意思決定資本」の3つから構成される「専門職の資本」というアイディアを軸に、学校に「協働の文化」を醸成していく方策を論じています。

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①「人的資本」=教師の潜在能力である専門知(子ども・教科に関する理解・知識・スキル)
②「社会関係資本」=チームやグループの文化・関係性・ネットワークの質(信頼感・同僚性・協働性)
③「意思決定資本」=子どものウェルビーイングのあり方を専門的見地から的確に判断する自律性
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「すべて」の学校の「すべて」の教師と「すべて」の子どものために、どう教育システムを変革していくべきか。透明性を担保した組織としての自律性を重んじ、実践を省察・検証・探究する機会を保障していくことの戦略のありようを読み取っていただけたらと思います。

 

ご関心のある方は、ぜひご一読ください。貴重な機会をどうもありがとうございました。