信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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「参議院長野県選出議員補欠選挙アンケート2021」の結果

参議院長野県選出議員補欠選挙アンケート2021」

 

過日行われた「参議院長野県選出議員補欠選挙」を前に、大学生対象のアンケート調査「参議院長野県選出議員補欠選挙アンケート2021」を実施いたしました。

 

ご協力いただきました信州大学長野県立大学長野大学松本大学上田女子短期大学の学生の皆さんには心から感謝申し上げます。

アンケート調査の結果の概要をとりまとめましたので、ご関心のある方は以下からアクセスください。

参議院長野県選出議員補欠選挙アンケート2021(結果概要)
http://kyoushoku.shinshu-u.ac.jp/arai/social/アンケート/)。

なお、以下のような観点から概要をまとめさせていただきました。

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①約6割の回答者が、政治に対して、「とても関心がある」、「ある程度関心がある」と答えていることから、「若者は政治に全く関心がない」、「だから選挙には行かない」という理解は早計である。若者は、政治に全く関心がないわけではない。

②他方で、参議院・長野県選出議員補欠選挙に関しては、「とても関心がある」、「ある程度関心がある」の合計が、30%弱という結果になっている。 回答者の中には、長野県出身ではない若者、進学に伴い県外から引っ越ししたばかりの若者が含まれているが、地方レベルの選挙の結果が中央レベルの日本政治の政治的構造にどのような影響を与えることになるのか、また、そのことが自分自身の日常生活にどのような影響を与えることになるのか、「選挙」と「国づくり」、「選挙」と「日々の生活」という相互関係の回路をリンクさせて政治現象を捉えるには至っていない。 日常生活と政治との架け橋のあり方を模索していく必要がある。

③投票時に重視する政策・課題に関しては、多い順番から、「少子化対策子育て支援」(30.9%)、「経済対策」(24.6%)、「年金など社会保障」(13.3%)、「医療の充実」(9.4%)となっており、逆に少ないものとして、「憲法改正」(2.5%)が挙げられる。 「少子化対策子育て支援」や「経済対策」は、当事者性が高い政策として明確に位置づけられていると捉えられるが、「憲法改正」に関しては、政権与党がこれまで重視してきたほど若者にとって重要な争点とはなっていない。

④現在の政権に対しては、支持・不支持が拮抗している(支持:28.0%、不支持:23.5%)。 「わからない」(48.5%)という回答に関しては、内閣が成立したのが2020年9月16日で半年足らずということもあり、まだ評価し難いと判断している可能性がある。 別の解釈としては、「わからない」という回答は「なんとも言えない」、「現時点で特定の評価を下すことが困難である」ということを意味し、若者が冷静な判断軸を持っていると捉えることもできる。

⑤政府の感染症対策に関しては、「評価している」(27.0%)、「評価していない」(55.6%)、「わからない」(17.5%)と、否定的な評価が大勢を占めている。 否定的評価は、2020年度の一斉休校など、意思決定者の判断によって自分たちの行動が実質的に制限・制約されてきたという、若者の実感から導き出されたものであると理解できる。事実、過去に実施したアンケート調査(「信州大学松本キャンパス大学生活アンケート2021」 )からも、現在の大学生の日常生活に「単独」「巣ごもり」傾向があることが確認でき、コロナ禍で人間関係を構築する機会を奪われ、キャンパスライフを充分に堪能できていないという結果が示されている。 また、「わからない」の回答は、感染症の拡大が世界共通のものであり、いずれの国でも有効な打開策を講じることができていないことから、現時点ではコロナ対策を「政策」として評価することが困難であるという認識からなされたものであると推察できる。

東京五輪パラリンピックの開催に対する考えは、「開催すべきである」(30.3%)、「中止するべきである」 (31.1%) 、「再延期するべきである」 (29.9%)と拮抗している。 「復興五輪」に関しては、若者の間でも歓迎ムードが潜在的に存在してはいるが、度重なる緊急事態宣言を見るにつけ、是が非でも開催しなければならない理由について合理的かつ論理的な説明がなされていないという印象を持っている可能性がある。また、一度延期した経験を踏まえれば「再延期」も可能であり、感染症が落ち着いた段階で仕切り直しを行い、復興五輪を堪能したいという思いを持っているとの解釈もできる。 自分自身の生活にとって身近で切実なコロナ対策を優先すべきであるという考えとともに、日々厳しい練習を行っているアスリートに五輪・パラリンピックという大舞台に立ってもらいたいという他者への思いとのジレンマも看取できる。

⑦支持政党に関しては、「特に支持している政党はない」が7割を占め、若者の多くが「無党派層」であることを改めて印象付ける結果となった。

⑧若者の多くは、国の政策のありようが、自分自身の生活、特に行動範囲等に大きな影響を与えることを身をもって体感するに至っている。 このことからすれば、感染症対策等は、今年の衆議院選挙も含め、今後予定されている選挙に対する当事者性を高め、投票行動を主とした行動変容のきっかけとなりうる。 「シルバー・デモクラシー」や「観客民主主義」という指摘、若者に対する「沈黙の有権者」という揶揄も存在している中で、若者の生活実感、政治的関心、投票行動の3者の回路のあり方を問い直していく必要がある。

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アンケートの結果に関しては、 テレビ信州のyoutubeサイトでも解説しています(番組開始後48:25)。

https://www.youtube.com/watch?v=G4N7_k3uHec

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