中村文夫さんから、『子どもの貧困と教育の無償化ー学校現場の実態と財源問題』(明石書店,2018年) をお送りいただきました。どうもありがとうございます。
現在、地域連携関係で、地域における子どもの実像に触れる機会がとても増えてきていることもあって、一気に、でも丁寧に読ませていただきました。インプットさせていただいた知見を踏まえて、具体的な制度設計のサポートを微力ながらしていけたらと考えています。
以下は、出版社による内容紹介です。
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先進諸国の中でもきわめて高い教育費負担が課される日本だが、政府の側においてもその軽減に向けた議論が活発化している。教育財政に長年関与してきた著者が、子どもの貧困問題の解決と公教育の無償化への道筋を具体的なデータをもとに論じる。
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目次は、以下の通り。
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1 はじめに――扉を開くと、不都合な真実が現れる
公教育を支えてきた私的負担
少子化の課題
子どもの貧困の課題
グローバル化の課題
公私負担の境界と課題
2 無償化に向けた諸課題
2-1 「集金袋」の思想
学校で集められている補助教材費
補助教材費は広義の授業料
2-2 学校給食費の公会計化
藤沢市教育委員会職員の学校給食費着服の教訓
学校給食費の公会計化に向けた新たな局面
参議院総務委員会で公会計化答弁
発展的な課題
2-3 学校給食費の無償化――滑川町の事例
学校給食費無償化への拡大
人口は増加している、だからこそ
比企・滑川の歴史地層
滑川町のまちづくり
まち・ひと・しごと創生総合戦略
「滑川町人口ビジョン」
滑川町町政・教育・福祉政策
普遍主義に立つ学校給食費無償化
「平等・公平」のその先に
2-4 PTA会費問題に見る学校財政の脆弱性
ドラえもんの四次元ポケット
コンプライアンス
根本的な解決を目指して
2-5 学校徴収金にPTAが関わる実態
学校給食費等の徴収の在り方
PTAの関与の実態
塩尻市に見る改善の方策
2-6 就学援助制度――東京都の事例
授業料のみ無償による貧困への影響
東京都では就学援助は5人に1人
周知方法は要改善
多様な認定基準の活用
客観的な基準(生活保護基準に一定の係数をかける場合)を1.3倍以上に
認定基準で変わる就学援助率
子どもの貧困対策の推進に関する法律の視点
2-7 入学時の物入り
ランドセル配付
中学生になると制服が必須
新入学児童生徒学用品費の拡充
入学準備費用の公的補助
3 幼小中学校から大学まで公教育の無償化
3-1 資質・能力に応じた学歴学力保障
戦後教育で求められた人格や資質内容
資質・能力に応じる学力観
全国学力学習状況調査
現代の「村を育てる学力」
3-2 義務教育の無償化・子どもの貧困化
ヘックマンの幼児教育重視
日本の就学前教育
義務制では、財政負担割合は1:8:1
真の意味のインクルーシブ教育
3-3 高校生の貧困と授業料無償化
高校段階の課題
高校生の貧困と生活保護
大綱に見る教育支援の効果と限界
想定されてこなかった大学進学
もう一つのハードル
高校授業料無償化(「高等学校等就学支援金制度」)
戦後高校教育の解体――市場化によるG/L分離別学体制
高校の再編と教育産業
都市部G/L人材育成
教育の産業化
教育機会の平等を保障する公立高校
3-4 高校における保護者負担――岩手県立学校の事例
高校における保護者負担額
高校独自の徴収金項目
学校配当予算の2、3倍の保護者負担
3-5 大学等の再編成と奨学金
私立大学の危機
国立大学法人による変質
奨学金という借金
4 市場化・民営化のなかの教育費
4-1 英米の教育市場化の実態
アメリカ われらの子ども
アメリカ 公教育の歴史
トランプ政権 最悪の教育バウチャー
イギリス 公設民営学校の拡大
4-2 教員の多忙化の底にあるもの
教員多忙化解消
教職員の身分、待遇の変遷
義務教育費国庫負担制度の終わりの始まりか
「チーム学校」というピラミッド型学校経営
2015年12月中教審三答申の背景
青い鳥はいるのか
トップランナー方式という暴風雨がくる
4-3 教育政策と教育費無償化
公教育の無償化は実現しなくてはならない
公教育の無償化の歴史
教育財源へのアプローチ
子育て費用ねん出のアプローチ
文部科学省の姿勢
財源確保への考察
5 まとめにかえて――学校から始める普遍主義の子どもの貧困対策
学校徴収金の諸問題の解決策
就学前から高等教育までの無償化
教育機会の平等への新機軸
参考文献
あとがき/初出一覧
索引
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