信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【報告】「中学校夜間学級設置における課題検討会」答申

平成28年度におきまして、座長を拝命しておりました「中学校夜間学級設置における課題検討会」の答申がとりまとめられました。


 中学校夜間学級は、戦後の混乱期において義務教育を修了できなかった者の就学機会を保障する場として、これまで大きな役割を果たしてきましたが、就学率の上昇に伴い在籍生徒数は大きく減少していました。

 しかし、教育をめぐる環境が複雑化・多様化する中で、近年では、様々な事情から本国で義務教育を修了しないまま日本で生活を始めることになった外国籍の者など、多様な背景を持った者たちが中学校夜間学級において将来設計等のために日々懸命に学んでいる状況にあります。
 そして、最近では、夜間学級に対して、形式的に中学校を卒業していても不登校などの理由で十分に教育を受けることができなかった者たちの“学び直しの場”としての役割も期待されているところです。これに対して、長野県では中学校夜間学級は設置されていませんでしたが、文部科学省の委託を受け、中学校夜間学級設置における課題検討事業を立ち上げ、検討会、先進地区の県外視察等を実施し、多様な学習機会の確保についての協議を行いました。


以下は、当該検討会の「まとめ」部分の引用です。

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 これまでの調査結果の分析や本県における課題の整理を踏まえ、入学希望既卒者、学齢超過の外国籍の者の受け皿として中学校夜間学級を設置することについては、現時点でのニーズは確認されなかった。  

 本県では、当面既存の支援策のさらなる充実をどのように図っていくことができるのかという観点から、今後の検討を進めていくことが望ましいと考える。例えば、外国籍児童生徒に対する支援策としては、県内の一部の自治体で取り組まれている「特別の教育課程」による日本語指導の充実を図ること、地域における関係機関との連携の下で市町村教育委員会NPO団体等が放課後等に実施している学校外での日本語指導の充実を図ることなど、多様な方法が想定される。ここでは、既存のネットワークを活用し情報共有を図るとともに、さらなる啓発活動や研修支援などを行っていくことが求められる。この他、不登校児童生徒への対応に関しては、子どもたちの相談や学習の場としての役割を果たしている「中間教室」等の取り組みを充実させていくことなど、現在、県内において様々な支援策が検討されていることから、その検討結果を踏まえた上で、さらなる体制強化を図る必要がある。その上で、中学校夜間学級については、国から「各都道府県に少なくとも1校ずつの中学校夜間学級の導入を検討する」との方針が示されていることを踏まえ、今後の動向を注視しつつ、他の都道府県の取組や県内の潜在的なニーズの把握に継続的に努めることが必要である。 —————————————————————————————

 

他方で、「国への要望」として以下の内容も記載いたしました。

 

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 他県の先行している中学校夜間学級では、在籍生徒の8割は学齢超過の外国籍の者であり、日本の社会に円滑に適用できるよう日本語指導や、中学校程度の学習が行われている。今後、グローバル化の進展により、外国籍や外国由来の者が増加することが見込まれ、これらの者が必要な知識や技能を習得し、日本において社会的・経済的に自立することが、社会の安定や発展に重要と考えられる。

 現在、公立学校において学齢期の外国籍児童生徒に対しては、「特別の教育課程」による日本語指導などの支援が行われているが、学齢超過の外国籍の者に対しては、このような支援は行われていない。  

 今後、本県の市町村が中学校夜間学級の設置を検討するにあたっては、日本語の習得を含めた必要な知識・技能を習得できる「特別の教育課程」を構築するとともに、本県では中学校夜間学級での教職経験者が皆無であることと関わって、中学校夜間学級の円滑な導入を進めていくためには、専門性を持った教職員の確保・育成、必要となる教職員の配置や施設設備に対する財政措置などについて、国において検討がなされるよう要望していくことが必要である。 —————————————————————————————

 

「夜間学級」をはじめとした多様な教育機会の確保のあり方の検討は、これで終わりではなく、むしろ、上記のような現状認識を前提としながら、改めて本格的に検討すべきことと感じています。

引き続き、当該テーマに関しては自分なりの観点で国の動向も含めキャッチアップしていきたいと思っております。