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【共著論文】中島宏・荒井英治郎「『大学の危機』時代に考える学問の自由・大学の自治─東大ポポロ事件」山本龍彦・清水唯一朗・出口雄一編『憲法判例からみる日本─法×政治×歴史×文化』日本評論社,2016年,187-211頁。

【共著論文】中島宏・荒井英治郎「『大学の危機』時代に考える学問の自由・大学の自治─東大ポポロ事件」山本龍彦・清水唯一朗・出口雄一編『憲法判例からみる日本─法×政治×歴史×文化』日本評論社,2016年,187-211頁。

 


ご紹介が遅れましたが、山本龍彦・清水唯一朗・出口雄一編『憲法判例からみる日本─法×政治×歴史×文化』日本評論社,2016年に、山形大学の中島先生と共著で「東大ポポロ事件」に関する論考を執筆いたしました。

 

同書の「帯」に表記されてある

「【朗報】憲法判例が想像以上におもしろい件について」

がちょっとした話題(?)になっていますが、中島先生の憲法学的アプローチに対して、私の方は「教育学」のこれまでの蓄積から当該判例を再検討を行いました。

 

「学問の自由」は、広く国民一般に対して、「学問研究の自由」と「研究発表の自由」を保障しているのに対して、「教授の自由」については必ずしも保障するものではありません。「教授の自由」は、歴史的経緯とその本質(学術の中心として真理を追究すること)に鑑みて、大学に対して特権的に保障されていると理解されてきたわけです。これに対して、教育学分野(特に教育法学)においては、普通教育機関の「教授の自由」、換言すれば、学校教師、とりわけ初等中等教育段階の教員に「教育の自由」が憲法上保障され得るか、その根拠と範囲が長きにわたり理論的・実践的課題として提起・検討されきましたので、その研究的知見を紹介しました。

 

また、学問的活動の自由を意味する「学問の自由」は、3つの構成要素(学問研究の自由、研究発表の自由、教授の自由)から成り立ち、とりわけ学問研究の自由は「思想・良心の自由」(憲法第19条)から、研究発表の自由は「表現の自由」(憲法第21条)からも一部根拠づけられます。そして、こうした憲法原理は、「聖域」(サンクチュアリ)としての意義を有し、戦後以降の国家権力の対抗原理足りえたわけですが、現代教育改革の特徴は、戦後形成された教育制度のみならず、その制度を支える原理それ自体の再編を企図している点にあります。憲法原理でさえも、もはや例外ではありません。「他律的」に「自律的」な改革が促されていることは言わずもがなです。

 

「大学の自治」を揺るがす今日の状況下において、東大ポポロ事件判決は、「学問の自由」の制度的保障としての性格を有する「大学の自治」の原則の重要性を通時的に喚起させるという意味で現在もなおその重要さは失われていないと考えています。他方で、本判決は、結節点としての大学が高等教育・学術研究・社会貢献という要請に向き合いながら政府・(地域)社会・市場といかなる関係を取り結んでいくことができるのか、新たな政策環境に置かれた相互関係のあり方を問い直し、組み替え、改めて構想していく必要性も逆説的に喚起するものだと思います。

 

同書は目次からも明らかなように、憲法訴訟の解説と共にその背景から判例を眺めることができます。

 

ぜひご一読ください。

 

以下、目次を出版社のHPから転載しておきます(https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7227.html


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第1章 小説はプライバシーを侵害するのか
「宴のあと」事件  …………山田哲史・日比嘉高

第2章 社会や家族の変化に民法は応えるべきか
非嫡出子相続分最高裁違憲決定  …………白水 隆・宇野文重

第3章 「投票価値の平等」を阻むものは何か
「一票の較差」判決  …………徳永貴志・砂原庸介

第4章 憲法「土着化」プロセスにみえる「公務員」秩序とは
猿払事件  …………水谷瑛嗣郎・清水唯一朗

第5章 思想・良心に反する行為を拒めるか?
君が代起立斉唱事件  …………堀口悟郎・奥中康人

第6章 「神社は宗教ではない?」が示唆すること
地鎮祭事件  ……石塚壮太郎・藤本頼生

第7章 「お行儀のよいデモ行進」を目指して?
東京都公安条例事件  …………岩切大地・中澤俊輔

第8章 自分の好きなところに店を開くことができない?
薬局開設距離制限事件(薬事法事件)  …………山本真敬・小石川裕介

第9章 「大学の危機」時代に考える学問の自由・大学の自治
東大ポポロ事件  …………中島 宏・荒井英治郎

第10章 「最低限度の生活」を求めて
朝日訴訟  …………武田芳樹・山下慎一

第11章 私のものは「私だけのもの」か?
森林法事件  …………山本龍彦・出口雄一

第12章 日本の解散権は自由すぎる!?
苫米地事件  …………植松健一・小堀眞裕

第13章 「統治行為論」とは何か?
砂川事件  …………奥村公輔・中島信吾・吉田真吾
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憲法判例からみる日本 法×政治×歴史×文化

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