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【キーワード解説】荒井英治郎「教育委員会制度改革」日本学校教育学会編『これからの学校教育を担う教師を目指す─思考力・実践力アップのための基本的な考え方とキーワード』学事出版,2016年

【キーワード解説】荒井英治郎「教育委員会制度改革」日本学校教育学会編『これからの学校教育を担う教師を目指す─思考力・実践力アップのための基本的な考え方とキーワード』学事出版,2016年

 

 

毎回のことながら遅れての報告となりますが、日本学校教育学会が編集した当該書籍に「教育委員会制度改革」に関するキーワード解説を行いました。

 

教育委員会に対する制度改革論議はこれまでも行われてきましたが、平成26年に約60年ぶりに地方教育行政の組織及び運営に関する法律が改正されました。改革論議の引き金となったいじめ自殺への教委の姿勢に対する批判は、当該自治体の行政運営だけでなく、教育委員会制度にも向けられ、改革論議が国レベルで本格化したわけですが、当初、①公選首長と教育委員会の関係、②教育長と教育委員(長)の関係、③教育委員会事務局の改革(前例踏襲主義・指導主事依存体質への批判)等の課題が設定されたのに対して、②③は後景に退かれ、①に関わる教育行政の「責任の明確化」と「政治的中立性の確保」へと論点が収斂したことが、今次の政策過程の特徴でした。

 

法改正の趣旨は、①教育の政治的中立性の確保、②教育の継続性・安定性の確保、③地方教育行政における責任体制の明確化、④迅速な危機管理体制の構築、⑤公選首長との連携強化、⑥地方に対する国の関与の見直しと大別できますが、キーワード解説では、①従前の教育長(常勤)と教育委員長(非常勤)を一本化した新たな「教育長」(常勤)の設置、②教委による教育長・教委事務局へのチェック機能の強化と会議の透明化・活性化、③執行機関(首長と教委)同士の協議・調整の場としての「総合教育会議」の設置、④首長に対する教育・学術・文化の振興に関する目標・方針を記載した「大綱」の策定権限の付与、⑤国の地方への関与の見直し等について概括しました。

 

今次の改革で、は戦後改革で重視された制度原理(政治的中立性、継続性・安定性、専門性と民主性の確保)が再編対象となったわけですが、とはいっても今次の法改正をもって改革が完了したと解するのは早計です。改革論議の途中では、教育行政責任を首長に移し教委を首長の附属機関とする案も検討されたことが示唆するように、執行機関としての教育委員会の存在は自明でなくなっています。

 

当面の運用課題として、教委における教育長の専断防止の方法、総合教育会議における執行機関同士の意思決定の方法等の在り方が挙げられますが、首長・教委の意思疎通の円滑化や相互連携、民意を反映した教育行政の推進に寄与し、教育行政の質(子どもの最善の利益の尊重と教育現場への支援体制の強化)を保証することになるか、教委の一挙手一投足が問われていることは間違いありません。

 

私自身もいくつかの自治体における制度設計に関わらせて頂いておりますが、上記のことを踏まえながら、緊張感をもって注視しているところです。

 

この他にも同書は多様なテーマに関するキーワード解説が行われておりますので、ご関心のある方はご一読ください。

 

これからの学校教育を担う教師を目指す―思考力・実践力アップのための基本的な考え方とキーワード

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