ご紹介が遅れましたが、『月刊高校教育』(学事出版)の2016年9月号に、書評を執筆させていただきました。
私たちにとって、「戦後」とは何だったのでしょうか。戦後という歴史の1ページに、何を教訓として刻み、何を(無)意識的に忘却してきたのでしょうか。
家庭の社会経済背景が教育格差に大きな影響を与えていることが「暗黙知」化されつつある今日、貧困の世代間連鎖の解消は喫緊の当為問題です。しかし、解消方法には、多様な選択肢(就学保障を通じて未来の子どもの貧困の再生産を防ぐ、早期の就労保障を通じて家計負担の圧迫を軽減するなど)がありえます。では、「子ども」と「貧困」を結びつけ社会問題と捉える視座は、いつから、どのように用いられてきたのでしょうか。こうした「子どもの中の貧困」と「貧困の中の子ども」が織り成す戦後史を描いたのが、本書です。
本書で用いられた各種データは、50・60年代の社会調査を約2年かけて復元したものです。私自身少しばかりではありますが、戦後教育史資料のアーカイブの仕事をさせてもらっていますが、調査用紙を1枚ずつカメラ撮影し、1票ずつ入力する作業は、途方に暮れる作業であることは想像に難くありません。
しかし、こうした地道な作業から紡がれた「歴史像」に真摯に向き合うことではじめて、等身大の日本を直視した課題解決の方向性を見定めることができると思っています。
「子ども」は、家族・社会にとって、希望なのか、足枷・重荷なのか。そして、現代日本の教育制度は、「貧困からの脱出」に貢献しているのか、はたまた「貧困への転落」を促し、貧困という世帯状況を固定化させることに加担しているのか。
教育制度を社会制度の中にどのように位置付け、生活保障と教育保障を公共政策としてどのように講じていくか、今まさに問われています。
ぜひみなさまお手にとって『子どもと貧困の戦後史』をご一読ください。