信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室に関するブログです。

FD合宿(1日目)

かなりのタイムラグの記事になりますが、
先週水曜日から木曜日は1泊2日でFD合宿に参加してきました。

参加者は、本学の各学部のFD担当者の皆様。
私のような若輩者は担当者ではなく、
あくまでピンチヒッターで参加することになりました。

1日目のメモは下記の通りです(後日アップします)。

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平成21年度信州大学FD合宿
2009年9月16日(水)〜17日(木)13時00分〜
生坂村営やまなみ荘
:講師(愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室 佐藤浩章氏)


●アイスブレーキング
GD:現在、どのようなFD関連の問題が生じているのか?
(例)
・授業アンケートのフィードバック
・FDへの参加者が少ない
・カリキュラム再編へつなげることが難しい(カリキュラム改善)
・研修には参加してくれるが、授業参観への参加率が低い
・ゼミナールの活性化
・目的不明な研修会が多い


●FDの定義
・FD=Faculty Development

信州大学のFDポリシー】
信州大学は、教育組織としての向上を目指して、教育組織を単位とする授業担当者集団でのFDを重視します。
信州大学は、教員個人としての教育力や資質向上を目指して、研修プログラムを組織的に支援します。

【愛媛大学のFDの定義】
「教育・学習効果を最大限に高めることを目指した
①授業・教授法の改善(ミクロ・レベル)
②カリキュラムの改善(ミドル・レベル)
③組織の整備・改革(マクロ・レベル)
への組織的な取組」

※各学部で何をどこまで扱うのか、その定義を再確認・再吟味・共有することが重要


●FDの歴史
【1980年代】
・一部の教員、組織が教授能力の向上の必要性を主張

【1990年代】
・政策主導のFD推進(FD義務化、GP、外部評価等)
・各大学に、FD委員会もしくはFDを主たる業務とするセンターが誕生

・海外(米国、英国、ドイツ)では、
1960年代後半から1970年代にかけての学生運動への大学側の対応としてFDが始まった


●FDを普及させた要因
①政策誘導
・規制緩和とセットで外部評価+FDの必要性が主張された

②大学の大衆化
・大学・短期大学進学率の上昇
・大学・短大合格率の上昇
大学全入時代の到来
・高校、企業からの評価

③大学のグローバル化
(諸外国と連携した教育の質の保証)

④組織内要因
(教職員の人員増が見込めない状況下で求められる教育の質向上)
(業績評価に対応する能力開発支援策の必要性)


●能力開発の種類
①自己啓発
・個人の目標達成を支援するもの。能力開発の基本。

OJT(On the Job Training)
・業務をしながら上司が指導するもの。

③職場外研修
・業務から離れて、能力開発に専念させるもの。

※日本のFDは③が多いことが特徴。本来は、①②を重視すべき。


●FDの問題点
①授業や教員の多様性・個別性への未対応
・教員の既有知・経験や科目特性といった文脈への未対応

②日常へのフィードバックが希薄
・短時間の講演やセミナーでは、日常の教育改善に繋がらない。
・行動変容には時間と手間をかけなければならない。

③授業・教授法のみに焦点があてられている
・輪番制のFD委員の限界
・講演会・公開授業のマンネリ化
・ファカルティ・ディベロッパーの確保・育成の必要

④考えること(Teaching)のみに焦点があたっていて、学ばせること(Learning)につながっていない
・教えること=学びではない。

⑤FDに関わるスタッフの専門性が不足しているために深まらない


●これからのFD
・Off-JTからOJT・自己啓発へ
・啓発型から支援型へ
・大人数対象から個別対象へ
・一時型から継続型へ
・教えから学びへ
・FD担当者の専門性向上による内容・手法の高度化・多様化


●FDの体系化
①階層別研修(TA研修、新任教員研修、一般教員研修、管理職研修)
②職能別研修(授業改善研修、カリキュラム・プログラム改善研修、学生支援研修)
③課題別研修(国内調査研修、海外調査研究、プロジェクト研修)


●FD担当者の業務
【FD実施組織の機能とFD担当者に求められる役割】
・プログラム→プログラマー、講師
・サービス→コンサルタント
・調査→研究者
・開発→開発者

【FD担当者に求められる専門性】
<知識>
①学習心理学
②成人教育論
インストラクショナルデザイン(教育工学)
④組織論
⑤調査論
⑥高等教育学

<技能>
①インストラクショナルスキル(教授技法
②コンサルティングスキル
ファシリテーションスキル(会議等での議事進行、議論促進技法
④教材開発力
<態度>
①ニート(身なりや言動のきちんとさ、丁寧さ)
②誠実さ
③前向きさ
④社交性
5ストレス耐性


●FD参加者の動機
【動機の種類】
①自己を成長させたい(積極的参加)
②学生の学習到達度・満足度の向上を目指したい(積極的参加)
③業績評価を向上させたい(積極的参加)
④周りに言われて仕方なく参加している(消極的参加)

※昇進・採用・年次評価における教育業績評価の実施システムは不可欠
(ティーチング・ポートフォリオ等の利用)
※Tenure・Promotion・Foods and Drink!
※研修参加者の動機は何かを考えて、参加したくなる研修を企画する。


【層別の動機】
①積極的参加層(2割)
②消極的参加層(6割)
③批判的参加・不参加層(2割)

・どこにターゲットを置くかは、大学の置かれた文脈に依存する。
※③は管理者の仕事、FD担当者の仕事ではない。Don't Touch!

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FDのイロハもわかっていない私ではありましたが、
担当講師の佐藤先生とも色々な話や情報共有をさせていただけて
大変勉強になりました。


【先日の一手】

小野方資「『教員免許更新制』政策の形成過程」『駿河台大学論叢』第38号,2009年。

移動のバスの中で読んだもの。大変興味深く読ませていただきました。
政権交代後、免許更新制については見直しが必至とされていますが、
特定の時代の特定の政策領域における特定の政策を積み上げることは、
最終的には政策決定構造を析出することにつながるとするならば、
このような政策別のワンショットの論文もとても重要だと再認識しました。
あとは、同時期の他領域での政策変容と比較することで、座標軸が多層化し、より深みが出て来るのだと思いました。