信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【いただきもの】三田地真実「学生の行動を軸に見据えて、『機能するグループワーク』を企画・実施するためにー行動分析学とファシリテーションの観点から」『法政大学教育研究』第9号,2018年


【いただきもの】三田地真実「学生の行動を軸に見据えて、『機能するグループワーク』を企画・実施するためにー行動分析学ファシリテーションの観点から」『法政大学教育研究』第9号,2018年


三田地真実「学生の行動を軸に見据えて、『機能するグループワーク』を企画・実施するためにー行動分析学ファシリテーションの観点から」『法政大学教育研究』第9号,2018年


星槎大学の三田地先生から『法政大学教育研究』第9号をお送りいただきました。

 

所収されている「学生の行動を軸に見据えて、『機能するグループワーク』を企画・実施するためにー行動分析学ファシリテーションの観点から」に関しても一読させていただきました。

 

 本論文は、「グループワークの無機能化」の罠に対して、その種の状況下では何が起きているのか、そして、状況に対していかなる手立てが考えられるかというとに対して、行動分析学の分析枠組みを活用して論じ、場づくりの技術たる「ファシリテーション」の有用性を主張するものとなっています。

 

 機能しているグループワークの特徴(①複数の学生が集まっている、②相互作用がある=話をする、③何らかの教育的効果をもつ、③-a教師側が設定した目標、③-b教師側が設定していない何らかの効果をもたらすゴールフリー)を挙げた上で、活動スタイルを、①話し合い(合意形成必須)、②学び合い(合意形成不要)、③教え合い(合意形成不要)を3つに整理されており、体感はしているものの暗黙知化されていることがらを可視化していただいたような内容で、とても刺激を受けました。

 

インストラクションデザインや行動分析学、さらにはファシリテーションに関しても改めて学んでみようと思います。

どうもありがとうございました。

【いただきもの】大迫章史「戦時下におけるカトリック学校の動向に関する研究ー校長の邦人化の動きに着目して」『カトリック教育研究』第35号,2018年10月

【いただきもの】大迫章史「戦時下におけるカトリック学校の動向に関する研究ー校長の邦人化の動きに着目して」『カトリック教育研究』第35号,2018年10月

 

このたび、仙台白百合女子大学の大迫先生からお送りいただきました。

 

 当該論文は、カトリック学校の学校史等の史資料を活用しながら、戦時下におけるカトリック学校の動向を論じたものです。日本天主公教教団の成立や戦時下における天皇制国家のカトリック認識の分析を通じて、文部省が日本のカトリック協会をローマ法王庁の支配から独立させる意図があったことなどを明らかにされています。校長の邦人化に焦点を当てながら、プロテスタント学校とカトリック学校の比較を行っております。

 

史実に基づく分析に大きな刺激と示唆をいただきました。ありがとうございました。

 

【講演】「これからの放課後子ども総合プラン・放課後児童クラブのあり方を考える」(放課後子ども総合プラン全体研修会)

【講演】「これからの放課後子ども総合プラン・放課後児童クラブのあり方を考える」(放課後子ども総合プラン全体研修会)

 

11月15日、長野市芸術館リサイタルホールにて開催された「放課後子ども総合プラン全体研修会」の場で講演をさせていただきました。

 

 テーマは、「これからの放課後子ども総合プラン・放課後児童クラブのあり方を考える」です。

 

 2017年12月に、これまで「従うべき基準」として定められた「放課後児童支援員」の資格と配置基準を「子どもの安全性の確保等一定の質の担保をしつつ地域の実情等を踏まえた柔軟な対応ができるよう」「参酌化」することを「地方分権の場において検討し、平成30年度中に結論を得る」と閣議決定されたわけですが、現在、指導員の資格と配置基準の「参酌化」が大きな論点となっています。また、人手不足の解消策として提案されている基準緩和ではありますが、他方で、常勤配置のための国の補助金化はなされているものの、処遇改善は足踏み状態であるのが実態です。

 

「放課後」は、遊び等自由な活動を行う時間・空間であるとともに、学校を終えた子どもの気分転換やくつろぎ、休息の時間・空でもあります。権利条約の理念に基づきながら、子どもの最善の利益を考慮して「育成支援」を推進することが、放課後児童クラブには求められています。

 

潜在的待機児童」(2935校区。小学校区数の15.4%)の存在も前提とすると、「待機児童ゼロ」=「放課後生活の充実」ではないわけですが、「家庭」でも「学校」でもない場で、遊び・生活する子どもたちの日常に、大人はどのように向き合うか、改めて問われていると思います。

 

ご参加いただいた皆様、お疲れ様でした。

 

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【書評】荒井英治郎「佐藤真久・広石拓司『ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ』」『月刊高校教育』2018年12月号,学事出版。

【書評】荒井英治郎「佐藤真久・広石拓司『ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ』」『月刊高校教育』2018年12月号,学事出版。

 


『月刊高校教育』(2018年12月号)に、佐藤真久・広石拓司『ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ』の書評を執筆させていただきました。

 


SGDs時代における地球規模の「複雑な問題」は、複数の要素から構成され、かつ各要素が相互作用の関係にあり、さらに時間の経過とともに状況が変化していく特徴を持ちます。従って、何が問題で、何が原因なのかを特定したり明確にすること自体が困難を極めます。


私たちは、問題解決のプロセスを「社会現象の論理的分析→現象の分解→原因の特定→原因を除去する解決策の実施」と、問題を構成要素別に分割・単純化し、その原因を除去することで論理的に解決できるはずだという幻想に未だ囚われているきらいがあるりますが、この要素還元主義的・線形的な方法では、解決した気分に浸ることはできても、本来の課題解決は、実のところ遠のいてしまいます。

 

 では、「複雑な問題」は、どのような視点で解決していけばよいのでしょうか。

 

こうした課題に直面している方はぜひご一読ください。「探究的な学び」の本格化は、教員のティーチングや生徒のラーニングのあり方を大きくシフトさせます。問題解決の前提・捉え方・考え方・進め方のシフトを提唱する本書は、高校における「ラーニング・シフト」の方向性を具体的に示すものといえるでしょう。

 

 

【講演】「これからの学校危機管理のあり方を考える」@佐久学校事務研究協議会秋期研修会

【講演】「これからの学校危機管理のあり方を考える」@佐久学校事務研究協議会秋期研修会

 

11月13日、佐久市教育会館にて、佐久学校事務研究協議会の秋期研修会の場でお話しさせていただく機会を得ました。

 

テーマは、「これからの学校危機管理のあり方を考える」です。

 

「果たして、危機管理能力は、自然と身につくものなのか」という問いに対して、「整理」と「整頓」、「準備」と「用意」との違いから、学校危機管理の基礎・基本を捉える視点を提案させていただきました。

 

他の都道府県では、学校管理職と学校事務職員とがともにマネジメント研修等を受けるということが多くなっていることもありまして、今回は、あえて学校管理職向けの研修内容を学校事務職員風にアレンジをして内容を再構成してみましたが、やはり学校事務職員独自の視点について、教育業界はもっともっと吸収すべきだと感じました。

 

ご参加いただいた皆様どうもありがとうございました。

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【論文】荒井英治郎「 18歳選挙権時代における主権者教育の課題と展望」伊藤良高編『 教育と福祉の基本問題―人間と社会の明日を展望する』晃洋書房, 2018年

【論文】荒井英治郎「 18歳選挙権時代における主権者教育の課題と展望」伊藤良高編『 教育と福祉の基本問題―人間と社会の明日を展望する』晃洋書房, 2018年

 


熊本学園大学の伊藤良高先生にお声掛けいただきまして、「 18歳選挙権時代における主権者教育の課題と展望」 と題した論文を執筆させていただきました。

 


 最高法規としての日本国憲法はこれまで改正されることなく維持さ れてきたのに対して、 選挙制度は代議制民主主義を駆動させるエンジンの1つとして幾度 となく変更されてきました。このような中、 2015年6月19日に「公職選挙法等の一部を改正する法律案」 (平成27年法律第43号。以下、改正公職選挙法)が可決・ 成立し、 選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたが( 2016年6月19日施行)、70年ぶりの制度変更は、 日本憲政史上エポックメーキングな出来事として理解していいと思 います。
 そこで、今回は、第1に、 主権者教育をめぐる制度環境の変化として、 18歳選挙権の政策過程と制度の変更内容を概観し、第2に、 主権者教育の論点として、 若者の投票率と政治的中立性の確保に関して論じ、第3に、 主権者教育の課題と展望を論じました。特に、 課題と展望に関しては、① 投票権の獲得だけをもって主権者と即断しては今後の形骸化は免れ 得ず、「主権者教育」を「有権者教育」 に矮小化してはならないこと、②今後の主権者教育には、投票の「 量(率)」だけでなく「質」 を高める取り組みこそが求められること、③ 公共政策上の課題解決の方法として、 行政の審議会や協議会等の委員に「若者枠」(子ども枠) を創設することも検討されてしかるべきであることを論じました。


 「日本の若者は政治に関心がない」という俗説に踊らされ、 短絡的に若者の投票率の「低さ」を嘆き、「子ども」と「大人」 の境界線や距離感を明確化していく議論にいかなる意義があるか疑 問なしとしません。流行の「世代論」 は学問的に重要ではありますが、 それだけでは未来社会の指針とはならず、 世代間の架け橋を模索する思考方法としては不十分な点が少なくあ りません。さらに、「シルバー・デモクラシー」 論の過度の強調は、 結果として不毛な世代間対立を生じさせ市民の分断を招来させます 。そこで、「政治参加」と声高に叫ぶのではなく、「大人」 の方から若者の地域参加や社会参加の多種多様な方法に向き合い、 等身大の若者の「現在」に寄り添い、 その声を公共的な場に再設定していくことが、「緊急」で「重要」 な公共政策上の課題として今まさに求められているのではないかと 考えています。

 


ご関心のある方はご一読ください。


なお、以下は、目次となります。


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 第I部    人間形成における教育と福祉の理論


 第1章    教育と福祉の史的考察――educationという"福祉"― ―
 第2章    子どもの成長と基盤を育む「食」の福祉的意義とその役割
 第3章    子どもの貧困における保育・幼児教育の課題
 第4章    高等学校における教育と福祉に関する現状と課題
 第5章    介護福祉教育と介護福祉実践の課題と展望


 第II部    現代における教育の基本問題――動向と課題―


 第6章    「国民の教育権」説再論―― 教師の教育の自由をめぐる憲法理論の再構築―
 第7章    学校教育における宗教教育のあり方に対する視点―― 宗教教育の史的考察をふまえて―
 第8章    教育と社会運動――教育格差問題を考える―
 第9章    現代保育・幼児教育政策の動向と課題
 第10章    幼児期における科学教育に関する現状と課題
 第11章    中国都市における乳児期の家庭保育・教育の現状と課題
 第12章    敏感すぎる子どもの育ちを支援するために
 第13章    教科書検定をめぐる近年の動向と課題――中学社会科「学び舎」 教科書を中心に―
 第14章    18歳選挙権時代における主権者教育の課題と展望


 第III部    現代における福祉の基本問題――動向と課題―


 第15章    ひとり親家庭の支援と課題
 第16章    乳児保育と保育者の役割と課題
 第17章    共同保育の意義と可能性
 第18章    保育所における保育士の役割と専門性
 第19章    保育者の現任研修プログラム構築―― ある自治体の加配保育士研修を例にして―
 第20章    児童虐待対応における保育現場の役割
 第21章    地域における子育て支援と福祉コミュニティ形成
 第22章    地域子育て支援拠点事業の動向と課題
 第23章     子どもの自己有能感を高める感覚の偏りに配慮した集団活動の展開 ――感覚統合理論を取り入れた水遊びの分析から―
 第24章    地域での子どもの居場所支援活動の機能と今日的課題
 第25章    当事者/支援者は「対等」になり得るか―― 発達障害当事者会との連携を中心とした「舞台構築支援」 の実践と役割葛藤―
 第26章    ソーシャルワーカーに対する期待と養成教育の課題
 第27章    地域包括支援センターとコミュニティスーパービジョン


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【研修】キャリアアップ研修②「長野県の教育課題と学校マネジメント―学校組織における「中堅教員」の役割―」@長野市教育センター

【研修】キャリアアップ研修②「長野県の教育課題と学校マネジメント―学校組織における「中堅教員」の役割―」@長野市教育センター


本日の午後は、先週に引き続き、長野市教育センターにて、中堅教員等を対象とした「キャリアアップ研修」の講師の仕事でした。

 

本日は、「長野県の教育課題と学校マネジメント―学校組織における「中堅教員」の役割―」ということで、以下の3点をゴールに設定しました。

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①今後の学校の自律性を下支えする学校組織マネジメントの「イロハ」を学ぶ機会を提供すること
②具体的には、近年の学校における危機管理上の課題を「リスク」という観点から整理・解説すること
③ケース・スタディの分析と、ご自身の勤務校の現状把握を行いながら、今後勤務校においてどのような学校改善をしていくことができるかをイメージすること
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歴史家トーマス・カーライルは、「経験は最良の教師である」、心理学者V・E・フランクルは「人は意味を求める動物である」
と述べました。

以下のメッセージが少しでもお伝えできたらと考えております。

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・「キャリア」は、簡単に貯まっていくものではなく、手間暇かけて、自分で/他者とと協働しながら、育てていくものであること
・「失敗」と「成功」を繰り返しながらでしか、人間は成長しない。
・能力は持っているだけでは意味はなく、発揮してはじめて意味を持つ。
・Late and Fast(遅く始めて速くやる)ではなく、Early and Slow(早く始めてゆったりやる)ことが重要であること
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参加してくださった先生方、 先週に引き続き、また長時間にわたりお疲れ様でした。