信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

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【書評】荒井英治郎「金子奨・高井良健一・木村優編『「協働の学び」が変えた学校』」『月刊高校教育』2018年6月号,学事出版

荒井英治郎「書評:金子奨・高井良健一・木村優編『「協働の学び」が変えた学校』」『月刊高校教育』2018年6月号,学事出版

 


学事出版さんの『月刊高校教育』の2018年6月号に書評を執筆いたしました。


 2018年3月、高等学校学習指導要領が公示されました。「社会に開かれた教育課程」という新たな理念の下で、車の両輪である「主体的・対話的で深い学び」と「カリキュラム・マネジメント」をどのように実現・確立していくかは、教育現場の喫緊課題となっています。しかし、その実現過程を具体的にイメージすること、それを実現するためのリソースを集約していくこと、実現後の学校のあり方を展望することなど、未来の教育に対する見通しと心積もりをどの程度の教育関係者がなし得ているかというと疑問なしとしません。

 

 本書は、「対話」、「協働」、「特別支援教育の視点」を媒介とした学校改革のダイナミクスを通時的・共時的に論じた挑戦の物語です。14人の元・前・現職の教職員のエピソードが紡ぐ、新座高校の実践は、(わずか)10年で、学校を協働して学び合う互酬的・互恵的な対話空間へと変えました。この「事実」が物語る授業観・学習観の転換を前に、教育関係者はまずもって自己の実践を省察する必要があります。

 

ご関心のある方はご一読下さい。

 

 

「協働の学び」が変えた学校 : 新座高校 学校改革の10年

「協働の学び」が変えた学校 : 新座高校 学校改革の10年

 

 

 

 

【講演】「教職員の働き方改革のこれまでとこれから」『平成30年度第3回上高井校長会』

5月9日に、平成30年度第3回上高井校長会(須坂市上高井教育会館)にて、「教職員の働き方改革のこれまでとこれから」と題した講演をさせていただきました。


須坂市の小中学校の校長先生、そして市教委の皆さんは熱心に耳を傾けてくださっただけでなく、講演後も多数の質疑応答をいただき、様々な議論をさせていただきました。

 

働き方改革をめぐっては、

・業務のあり方の境界線の是非(外部化、分業化、協業化、システム化)
・給特法(限定4項目)の見直し(①給特法廃止、②教職調整額の見直し(増額、支給率に差、特別手当(部活動手当)支給)、③代替休暇の措置など)

・教員内問題(正規/非正規の待遇格差)
・スタッフ間問題(SC、SSW、SSS、部活動指導員、特別支援教育支援員、日本語支援員など)

 など法制的にも実務的にも課題はありますが、現場レベルあるいは管理職のマネジメント領域で対応可能な部分も少なくありません。その一助となればと思っています。

 

貴重な機会をどうもありがとうございました。

 

 

【分担執筆】小山茂喜編『教育実習安心ハンドブック(よくわかる教職シリーズ)』学事出版,2018年

【分担執筆】小山茂喜編『教育実習安心ハンドブック(よくわかる教職シリーズ)』学事出版,2018年

http://www.gakuji.co.jp/book/978-4-7619-2476-8.html

 

先日、信州大学教職支援センターの同僚が中心となって、教育実習に関する書籍を刊行いたしました。

 

私は、「コラム」として、以下の項目に関するキーワードを解説させていただきました。

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●「安心・安全な学校」
●「守秘義務の遵守」
●「政治的・宗教的に中立性の確保」
●「体罰の禁止」
●「「組織」としての学校」
●「地域とともにある学校づくりの推進」
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初学者たる教職課程履修者にとっても理解しやすいように「リーダーフレンドリー」を心がけて編まれた本ですので、ぜひご参照下さい。

 

なお、ご関心がある方は、この際できるだけお分けしたいと考えていますので、荒井までご連絡ください。
(手元の在庫がなくなってしまった際はご容赦ください。)

 

また、このたび同僚が同時刊行した以下の書籍も、「介護等体験」の専門家でない研究者でも指導を展開していく上でとても有益な内容になっているかと思いますので、ぜひご参照ください。

 

庄司和史『介護等体験安心ハンドブック(よくわかる教職シリーズ)】学事出版,2018年

http://www.gakuji.co.jp/book/978-4-7619-2477-5.html

 

よくわかる教職シリーズ 教育実習安心ハンドブック

よくわかる教職シリーズ 教育実習安心ハンドブック

 

 

 

介護等体験安心ハンドブック (よくわかる教職シリーズ)

介護等体験安心ハンドブック (よくわかる教職シリーズ)

 

 

【いただきもの】貝塚茂樹『戦後日本教育史』放送大学教育振興会,2018年

【いただきもの】貝塚茂樹『戦後日本教育史』放送大学教育振興会,2018年

 


武蔵野大学貝塚先生から送付いただきました。

 


いわゆる「通史」を歴史的事実のみの記述で終わることなく、随所にユーモアあふれる引用や事例、当時の時代状況の説明方法を散りばめることによって、とても読みやすいものでした。

 


日々「重箱の隅を突くような研究」(通称、重箱研究)ばかりしているのに対して、頭の整理をさせていただく機会をいただきました。

 


ちょうど、授業において、歴史に関心を持つ学生が多数出てきているため紹介などさせていただこうと思っております。

 


「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」(ヴァイツゼッカー

 


「歴史のない理念は空虚であり、理念のない歴史は盲目」(5ページ)

 

 

 

どうもありがとうございました。

 

 

戦後日本教育史 (放送大学教材)

戦後日本教育史 (放送大学教材)

 

 

【いただきもの】岡本全勝『明るい公務員講座 仕事の達人編』時事通信社,2018年

【いただきもの】岡本全勝『明るい公務員講座 仕事の達人編』時事通信社,2018年

 

 

時事通信社の坂本健一郎さんから御送付いただきました。どうもありがとうございました。

 

こちらは、「明るい公務員講座」の第2弾として位置付けられるものでして、今回は「仕事の達人編」となっています。
とても読みやすい文体になっていますので、第1弾とともに、ぜひご一読ください。

 

以下は、出版社ホームページから。

http://book.jiji.com/books/publish/p/v/1009


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公務員の「働き方改革

★ 「仕事で悩んだときにどうするか。上司を説得する方法。後回しになっている仕事を進める方法など。小さいけれど大事な経験こそビジネス書には書かれていない。読んでなるほどと思ったら、実践してほしい。」
2018年4月5日付 日本経済新聞夕刊 著者コラムより


経験を積み、技能を磨いて、上の職位を目指すためにはどうすればよいか。
仕事を続けていくうちに、できる職員とそうでない職員との差が出ます。どこが違うか。
煎じ詰めれば、早く良い成果を出すかどうかです。

経験を積めば、同じ仕事を早くできるようになります。しかし、毎日その仕事を繰り返しているだけでは、「できる職員」にはなりません。技能を身につけることと、心構えが必要です。

仕事を続けていくと、難しい仕事にも出会います。良い成果を出すためには、正しい判断をしなければなりません。そのために、知識と考える力を養いましょう。解決案ができたら、上司や関係者に説明しなければなりません。考えたことを他人に伝えることは、意外と難しいのです。

 さて、できる公務員になるためには、仕事ができるだけではダメです。「あの人は仕事はできるけど、人間としてはなあ」と言われるようでは、良い公務員ではありません。良き社会人であり、良き家庭人であり、良き地域住民でなければなりません。
(「はじめに」より一部を引用。)


【本書内容より】
● 仕事には「能率」と「質」がある。
● 職場の技能を磨くのは「仕事術=ハウツー」と「自己啓発=心構え」。
● 考える力、判断力、決断力は日々の仕事を通じて養われる。
● 住民に「あなたの税金でこの仕事をしています」と説明できるかどうかが判断の分かれ目。
● 「できる職員」は引き継ぎ書を見れば分かる。
● あなたが苦労したことはノートなどに書き込んでおき、半年に1度くらい整理する。
● 3大無駄は、①会議、②資料作り、③パソコン。

【本書目次】
第1章 仕事の達人になろう
第1講 できる職員
能率と質を上げる/参考になるビジネス書/本で学べることと学べないこと/今の仕事に上達する/なぜ仕事が進まないか/気が進まない仕事/邪魔を減らす/つまみ食いはいけない
第2講 第一人者になろう
おかしいと思う目/評論家になるな/逃げてはいけない/改善で力量を発揮する/課題を見つける
第3講 良い引き継ぎ書
引き継ぎ書の重要性/組織の力を向上させる引き継ぎ書/執務要領を改良する

第2章 無駄をなくすスマート仕事術
第4講 職場の無駄1 会議
何のための会議か/会議を開かない/参加者を絞る/時間を限定する/会議より結論/意見が出る会議/会議準備の無駄
第5講 職場の無駄2 資料作り
パソコンの落とし穴/パソコンが招く労働強化/書式を決めておく/パワーポイントを使うな/庁内説明資料と住民広報資料は別/体裁に時間をかけるな/時間はコストを伴う/不要な資料を作らせない
第6講 職場の無駄3 パソコン
電子メールの罪/むやみに送らない/表題を工夫する/仕事の邪魔をさせない/インターネットの罪

第3章 考える力
第7講 判断力を養う
考えることと伝えること/知識・経験・情報量、道筋を考えること/相談する人を知っている/判断の模擬訓練/さまざまな職場経験/判断の基準・3つの視点
第8講 知識の多さと視野の広さ
あなたの知識は時代遅れ/知識の高さと広さ/向上心を持ち続けよ/研修と自己啓発/新聞で社会を知る/斜め読みと熟読と/アリの目とタカの目/先を読む
第9講 勉強を続けよう
専門分野を持とう/勉強の苦しみと楽しみ/勉強のテーマはあなたの目の前に/自治体職員への期待/専門家と話そう/異業種交流の勧め/会うことの重要性

第4章 伝える技術
第10講 話す技術
話してみよう書いてみよう/話すことは難しい/おしゃべり・対話・討論/何を伝えたいのか/冷静に熱意を伝える/雄弁は銀、沈黙は金ではない/異論の同意/人前でしゃべる
第11講 書く技術
書くことは勉強/相手の立場に立った文書/図表の使い方/メモ取りは難しい
第12講 私の作文術>
文章作成を料理にたとえると/ブロックの積み上げ/手書きの力/封緘と宛名書き
第13講 人を動かす
人の話を聞く/優越感に浸っていては駄目/後輩を育てる/欠点を知る/相手を動かす

第5章 ワークライフバランス
あとがき

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明るい公務員講座 仕事の達人編

明るい公務員講座 仕事の達人編

 

 

 

明るい公務員講座

明るい公務員講座

 

 

【いただきもの】樋口修資・青木純一・坪谷美欧子編『支援スタッフで学校は変わるのかー教員との協働に関する実態調査から』アドバンテージサーバー,2018年

【いただきもの】樋口修資・青木純一・坪谷美欧子編『支援スタッフで学校は変わるのかー教員との協働に関する実態調査から』アドバンテージサーバー,2018年

 

日本女子体育大学青木純一先生から、刊行直後の著書をお送りいただきました。どうもありがとうございます。

 

こちらは明星大学の樋口先生がマネジメントされた科研プロジェクトの成果報告書です。実態調査として、ヒアリング調査とアンケート調査を併用していて、全面的に導入が模索されているいわゆる「支援スタッフ」のあり方を示唆する内容となっています。

 

個人的にも、今年度から「教職員の働き方改革2.0」として、各種支援スタッフ(部活動指導員やスクール・サポート・スタッフなど)の運用実態を調査研究していきたいと考えていますので、参考にさせていただこうと思っています。

 

ちなみに、現在考えているモチーフ・メニューは、以下の通り。

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①業務のあり方の境界線の是非(外部化、分業化、協業化、システム化)
②給特法(限定4項目)の見直しと勤務時間の上限規制の必要性
 ・給特法廃止
 ・教職調整額の見直し
  (調整額の増額、調整額の支給率差、特別手当(部活動手当)支給検討)
 ・代替休暇の措置
③教員内問題(正規/非正規の待遇格差)
④スタッフ間問題(SC、SSW、SSS、部活動指導員、特別支援教育支援員、日本語支援員など)

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何度も読み返してまいりたいと思います。どうもありがとうございました。

 

 

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【いただきもの】中村文夫『子どもの貧困と教育の無償化ー学校現場の実態と財源問題』明石書店,2018年

中村文夫さんから、『子どもの貧困と教育の無償化ー学校現場の実態と財源問題』(明石書店,2018年) をお送りいただきました。どうもありがとうございます。

 

現在、地域連携関係で、地域における子どもの実像に触れる機会がとても増えてきていることもあって、一気に、でも丁寧に読ませていただきました。インプットさせていただいた知見を踏まえて、具体的な制度設計のサポートを微力ながらしていけたらと考えています。

 



 

以下は、出版社による内容紹介です。 

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 先進諸国の中でもきわめて高い教育費負担が課される日本だが、政府の側においてもその軽減に向けた議論が活発化している。教育財政に長年関与してきた著者が、子どもの貧困問題の解決と公教育の無償化への道筋を具体的なデータをもとに論じる。 

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目次は、以下の通り。

 

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1 はじめに――扉を開くと、不都合な真実が現れる
  公教育を支えてきた私的負担
  少子化の課題
  子どもの貧困の課題
  グローバル化の課題
  公私負担の境界と課題

2 無償化に向けた諸課題
 2-1 「集金袋」の思想
  学校で集められている補助教材費
  補助教材費は広義の授業料
 2-2 学校給食費の公会計化
  藤沢市教育委員会職員の学校給食費着服の教訓
  学校給食費の公会計化に向けた新たな局面
  参議院総務委員会で公会計化答弁
  発展的な課題
 2-3 学校給食費の無償化――滑川町の事例
  学校給食費無償化への拡大
  人口は増加している、だからこそ
  比企・滑川の歴史地層
  滑川町のまちづくり
  まち・ひと・しごと創生総合戦略
  「滑川町人口ビジョン」
  滑川町町政・教育・福祉政策
  普遍主義に立つ学校給食費無償化
  「平等・公平」のその先に
 2-4 PTA会費問題に見る学校財政の脆弱性
  ドラえもんの四次元ポケット
  コンプライアンス
  根本的な解決を目指して
 2-5 学校徴収金にPTAが関わる実態
  学校給食費等の徴収の在り方
  PTAの関与の実態
  塩尻市に見る改善の方策
 2-6 就学援助制度――東京都の事例
  授業料のみ無償による貧困への影響
  東京都では就学援助は5人に1人
  周知方法は要改善
  多様な認定基準の活用
  客観的な基準(生活保護基準に一定の係数をかける場合)を1.3倍以上に
  認定基準で変わる就学援助率
  子どもの貧困対策の推進に関する法律の視点
 2-7 入学時の物入り
  ランドセル配付
  中学生になると制服が必須
  新入学児童生徒学用品費の拡充
  入学準備費用の公的補助

3 幼小中学校から大学まで公教育の無償化
 3-1 資質・能力に応じた学歴学力保障
  戦後教育で求められた人格や資質内容
  資質・能力に応じる学力観
  全国学力学習状況調査
  現代の「村を育てる学力」
 3-2 義務教育の無償化・子どもの貧困化
  ヘックマンの幼児教育重視
  日本の就学前教育
  義務制では、財政負担割合は1:8:1
  真の意味のインクルーシブ教育
 3-3 高校生の貧困と授業料無償化
  高校段階の課題
  高校生の貧困と生活保護
  大綱に見る教育支援の効果と限界
  想定されてこなかった大学進学
  もう一つのハードル
  高校授業料無償化(「高等学校等就学支援金制度」)
  戦後高校教育の解体――市場化によるG/L分離別学体制
  高校の再編と教育産業
  都市部G/L人材育成
  教育の産業化
  教育機会の平等を保障する公立高校
 3-4 高校における保護者負担――岩手県立学校の事例
  高校における保護者負担額
  高校独自の徴収金項目
  学校配当予算の2、3倍の保護者負担
 3-5 大学等の再編成と奨学金
  私立大学の危機
  国立大学法人による変質
  奨学金という借金

4 市場化・民営化のなかの教育費
 4-1 英米の教育市場化の実態
  アメリカ われらの子ども
  アメリカ 公教育の歴史
  トランプ政権 最悪の教育バウチャー
  イギリス 公設民営学校の拡大
 4-2 教員の多忙化の底にあるもの
  教員多忙化解消
  教職員の身分、待遇の変遷
  義務教育費国庫負担制度の終わりの始まりか
  「チーム学校」というピラミッド型学校経営
  2015年12月中教審三答申の背景
  青い鳥はいるのか
  トップランナー方式という暴風雨がくる
 4-3 教育政策と教育費無償化
  公教育の無償化は実現しなくてはならない
  公教育の無償化の歴史
  教育財源へのアプローチ
  子育て費用ねん出のアプローチ
  文部科学省の姿勢
  財源確保への考察

5 まとめにかえて――学校から始める普遍主義の子どもの貧困対策
  学校徴収金の諸問題の解決策
  就学前から高等教育までの無償化
  教育機会の平等への新機軸

 参考文献
 あとがき/初出一覧
 索引

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子どもの貧困と教育の無償化――学校現場の実態と財源問題

子どもの貧困と教育の無償化――学校現場の実態と財源問題