信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室

信州大学教職支援センター 荒井英治郎研究室に関するブログです。

【論考】荒井英治郎「『18歳選挙権時代』の若者と地域連携ー『有権者』から『主権者』へ、『政治参加』を『地域参加』『社会参加』からー」長野の子ども白書編集委員会編『長野の子ども白書2017』2017年,30-31頁


荒井英治郎「『18歳選挙権時代』の若者と地域連携ー『有権者』から『主権者』へ、『政治参加』を『地域参加』『社会参加』からー」長野の子ども白書編集委員会編『長野の子ども白書2017』2017年,30-31頁

 

 

『長野の子ども白書2017』に、寄稿させていただきました。
主に5本柱で構成されています。


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●「18歳選挙権時代」の到来

●未完のプロジェクト:「有権者」から「主権者」へ

●「生の政治」と向き合う:投票の「量」から「質」へ

●「政治的教養」の涵養:「政治参加」を「地域参加」「社会参加」から

●高等教育機関の課題と地域連携
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これまで「18歳選挙権」関係の仕事は、研究というよりは社会貢献あるいはアウトリーチ的な位置付けて行ってまいりましたので、文字化することはほとんどありませんでしたが、ちょう18歳選挙権時代の到来から月日がある程度経過したこともありまして、これまで考えてきたこと、そしてこれから考えていきたいことなどをまとめさせていただきました。

以下の目次にありますように、私の論考はともかく他の論考は長野の「現在」を知る上でとても有益な情報が満載かと思います。
ぜひご一読ください。

https://naganonokodomo.jimdo.com/本書の内容/
https://naganonokodomo.jimdo.com

【研修】「学校組織マネジメントーチーム学校の創造」@長野市教育センター

【研修】「学校組織マネジメントーチーム学校の創造」@長野市教育センター

 

 

長野市教育センターにて、「学校組織マネジメントーチーム学校の創造」という研修の講師として登壇させていただきました。

 

「学校組織マネジメント=(教育)法的思考 +(教育)実践的思考」という方式が成り立つか定かではありませんが、

様々なケースの検討を通じて、日々の教育実践を

 

・「教科目」や「校務分掌」からの視点ではなく、

・「学級組織」や「学年組織」からの視点ではなく、

・「学校組織」という視点で課題解決の方法を考え、選択肢の幅を広げることを体感していただきました。

 

学年主任や教務主任、そして教頭先生に至るまでご参加いただきましたが、
長時間にわたる研修お疲れ様でした。  

 

【講演】「学校・家庭・地域の連携」@寿地区地域づくり協議会児童福祉部会

【講演】「学校・家庭・地域の連携」@寿地区地域づくり協議会児童福祉部会

 

 

5月24日に寿地区地域づくり協議会の児童福祉部会(長野県松本市寿公民館)にてお話をさせていただく機会を得ました。

 

「地域包括ケアシステム」の構築(平成37年)を前に、

地域づくり協議会の児童福祉部会では、

 

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①どのような「テーマ」に焦点を当てて活動を展開していくか(子どもと大人の関係、学校と地域の関係、家庭と地域の関係、少子高齢化と地域など)

 

②どのような「方法」で学んでいくことができるか((視察、講義、地域イベント、ワークショップ形式、体験活動など)

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を考えていく上での話題を提供させていただきました。

 

今後も話題提供のみならず具体的なお手伝いも微力ながらさせていただけたらと考えています。

【書評】荒井英治郎「斎藤美奈子『学校が教えないほんとうの政治の話』」『月刊高校教育』2017年6月号,学事出版,94頁。


荒井英治郎「斎藤美奈子『学校が教えないほんとうの政治の話』」『月刊高校教育』2017年6月号,学事出版,94頁。


『月刊高校教育』2017年6月号に、斎藤美奈子さんの『学校が教えないほんとうの政治の話』の書評を書かせていただきました。

 

 「資本主義VS社会主義」という20世紀の図式が「新自由主義VS社会民主主義」に取って変わって久しく、ネット空間を主として展開される「罵詈雑言」の「公用語化」の勢いは留まることを知りません。

 

 国内外のあらゆるレベルの政策決定が、政策決定者の時流的「情動」に依存する傾向も顕著で、本来「異常」かつ「例外」事項である現象が長期に継続することで、非日常が日常化・恒常化、われわれの感覚も無意識のうちに馴化しつつあります。

 

 こうした社会状況と政治情勢に対して、ヤングアダルト向けの本書が提案するのが、自分の思考の「ホーム&アウェイ」を明確化し、「ひいきの政治チーム」を見つけようというものになっています。

 

 

とても読みやすい本ですので、ぜひご一読ください。

 

 

月刊高校教育 2017年 06 月号 [雑誌]

月刊高校教育 2017年 06 月号 [雑誌]

 

 

【講演】「「18歳選挙権」時代における主権者教育の現状・課題・展望」@平成29年度長野県選挙管理委員会連合会委員・職員研修会

 4月25日に長野県庁(講堂)におきまして、「「18歳選挙権」時代における主権者教育の現状・課題・展望」と題した講演をさせていただきました。

 

これは、平成29年度長野県選挙管理委員会連合会委員・職員研修会の一環としご依頼いただいたものです。


公職選挙法の改正に伴う選挙権年齢の引き下げに伴い、主権者教育のあり方の検討が本格化していますが、 さしあたり過日の参院選における長野県の投票率、とりわけ高校3年生相当の高い投票率は、県・市町村レベルの選管・教委が1年以上の時間と労力を費やし啓発活動に力を入れた成果の表れであるといってよいと思います。

 

ただ「一過性」の啓発で終わらないように継続性をもたせ、かつ、啓発の方法にも一層の工夫を重ねていくことが重要となることは言うまでもありません。

 

また、全体の投票率が54.70%であったのに対して、20代が35.60%に留まった点、19歳を好例とする若年層の投票率が相対的に低かったことはやはり看過できません。

 

 

こうした中、当日は、以下のようなコンテンツで90分お話させていただきました。

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「選挙」とは?「若者」とは?

●主権者教育をめぐる環境の変化

●主権者教育の現状

●主権者教育の課題

ケーススタディの共有

●主権者教育の展望 ————————————————————————————————————


既存の選挙制度不在者投票期日前投票など)のボーター・フレンドリー化の検討は今後も必要となりますが、若年層の政治参加のあり方は、全国的に模索の段階にあります。

 

引き続き、大学関係者としてなりうることに地道に取り組んでいけたらと考えております。

貴重な機会をどうもありがとうございました。

 

【論文】荒井英治郎「教員の研修権」佐々木幸寿編『学校法(教師のための教育学シリーズ3)』学文社,2017年4月,214-227頁。

【論文】荒井英治郎「教員の研修権」佐々木幸寿編『学校法(教師のための教育学シリーズ3)』学文社,2017年4月,214-227頁。

 

東京学芸大学佐々木幸寿先生にお声かけいただき、
第13章として、「教員の研修権」に関する章を執筆させていただきました。
http://www.gakubunsha.com/book/b286136.html

 

 教育界といえども、その行為は、例外なく法令に基づいて行われ、ときに保障され、ときに処分の対象となり得ます。他方、「教育法規」という領域には特別法が多いことが物語るように、教員だけ「特別扱い」されていることが少なくありません。

 

このことは、知識の教授だけでなく子どもとの人格的な触れ合いを通じて個性・能力に応じた適切な指導を行うことが教員には要請されるという、その職務と責任の特殊性が理由とされてきました。

 

 では、不断の自己革新が求められる教職にとって、資質向上の方法論の代表格である「研修」をめぐる法的争点は、いかなる課題を提示してきたのか。

 

私の章では、法の理念と実態、教育界と世間の「まなざし」の間に生じる葛藤を意識した上で、教育実践に軸足を置いた「教員の研修権」のあり方を論じました。

 

 私の章では、
①教員研修法制の構造と現行の研修制度を概括し、
②「教員の研修権」をめぐる法的争点として、
・研修権の権利性や職務命令研修の強制性
・勤務場所外研修の承認要件、
・「自宅研修」や「教育研究集会への参加」のあり方
などに関して、行政解釈や判例の紹介を通じて検討し、教育実践・学校経営上の課題と今後の展望を論じました。

 

 

構成は、以下の通りです。
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第13 章 教員の研修権
第1 節 はじめに―教職の特殊性と教員の資質向上  
第2 節 教育研修法制の構造―研修の責務と自己研修  
第3 節 「教員の研修権」をめぐる法的争点  
第4 節 おわりに―「説明責任」時代における教員の自己革新と社会的承認 
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私の章はともかく、他章は学校と法の関係を問う上で必要不可欠な古くて新しいポイントに焦点を当てて論が展開されています。ぜひご一読ください。

 

 

なお、全体の章構成は、以下のとおりです。

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序章 国家と教育と法

第1 節 国家と教育  
第2 節 「学校法」と「学校法学」  
第3 節 学校法を学ぶための基礎知識  

第Ⅰ部 学校関係法を学ぶ

第1 章 日本国憲法―教育の基本理念に関する法律①―
第1 節 基本的人権の性質と国民の基本的人権享有(第11 条)  
第2 節 個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重(第13 条)  
第3 節 法の下の平等(第14 条①)  
第4 節 公務員の選定罷免権・全体の奉仕者(第15 条①,②)  
第5 節 思想及び良心の自由(第19 条)  
第6 節 信教の自由(第20 条①,②,③)  
第7 節 学問の自由(第23 条)  
第8 節 表現の自由(第21 条①,②)  
第9 節 教育を受ける権利,義務教育(第26 条①,②)  
第10 節 公の財産の用途制限(第89 条)  

第2 章 教育基本法―教育の基本理念に関する法律②―
第1 節 教育基本法改正  
第2 節 教育基本法の内容  

第3 章 学校教育に関する法律①
―学校制度,学校組織経営,教育課程と教科書―
第1 節 学校制度と法規定  
第2 節 学校組織と学校運営  
第3 節 教育課程と教科書  

第4 章 学校教育に関する法律②
―児童生徒・特別支援教育・健康教育・学校事務―
第1 節 児童生徒の身分の取扱い  
第2 節 特別支援教育  
第3 節 健康教育(学校保健,学校安全,学校給食)  
第4 節 学校事務(帳簿管理)  

第5 章 教職員に関する法律
第1 節 教職員の任命  
第2 節 服務  
第3 節 分限と懲戒  
第4 節 免許・資格,研修  

第6 章 教育行政組織,制度に関する法律
第1 節 教育行政とは  
第2 節 国と地方の教育行政機関  
第3 節 教育委員会による学校の運営  

第Ⅱ部 学校法

第7 章 教育法の変化と学校法という視点
第1 節 現代における教育法の変化  
第2 節 学校法という視点の重要性
  
第8 章 学校法の課題を考える
第1 節 我が国の学校法が抱える法的課題  
第2 節 学校法学において追求されるべき法理  
第3 節 学校における法的教育実践  

第Ⅲ部 教育課題に関する法

第9 章 いじめと法
第1 節 教育課題の現状:いじめの実態  
第2 節 いじめ事件における一般的な法的責任  
第3 節 いじめ防止対策推進法  
第4 節 教育課題に見られる法的な争点
  重大事件に見る学校法の視点(大津市立中学校いじめ自殺事件)  
第5 節 教育実践と法的対応の問題 

第10 章 体罰と教育実践―最高裁判決と体罰法制―
第1 節 学校教育における体罰の禁止と包括的支配権  
第2 節 学校教育法の規定と「懲戒」「体罰」  
第3 節 行政実例における「体罰」,通知の変化  
第4 節 最高裁判決にみる「有形力の行使」と「体罰」  
第5 節 法的教育実践への視点  

第11 章 18 歳選挙権と政治教育
第1 節 政治的教養の教育  
第2 節 教育基本法の統一的解釈  
第3 節 高校生等の政治的活動 
第4 節 主権主体の育成  

第12 章 学校と学習塾
第1 節 学習塾の興隆する社会  
第2 節 学校と学習塾をめぐる一般的な論点 
第3 節 学校と学習塾をめぐる法的争点―和田中「夜スぺ」裁判―  
第4 節 学習塾との連携が認められた背景  
第5 節 子どもの学びをどのように保障するのか  

第13 章 教員の研修権
第1 節 はじめに―教職の特殊性と教員の資質向上  
第2 節 教育研修法制の構造―研修の責務と自己研修  
第3 節 「教員の研修権」をめぐる法的争点  
第4 節 おわりに―「説明責任」時代における教員の自己革新と社会的承認 

第14 章 教師の労働と法
第1 節 教員の服務  
第2 節 教員の労働基本権  
第3 節 教員の労働条件 
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学校法 (教師のための教育学シリーズ)

学校法 (教師のための教育学シリーズ)

 

 

 

【授業方法】「『ソクラテス・メソッド』と『グループ・ワーク』の併用」『教職支援センターニューズレター』第5号(2017年春号)


【授業方法】「『ソクラテス・メソッド』と『グループ・ワーク』の併用」『教職支援センターニューズレター』第5号(2017年春号)

本務校で所属している教職支援センターで季刊発行されている『ニューズレター』に授業紹介として、私の授業にて採用している方法について、以下のような内容を書かせていただきました。

 

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教育学(教育行政学・教育法学・教育経営学)を専門とし、「教育」を取り巻くヒト・モノ・カネを研究している私の担当科目(教職科目)は、「教育学概論」、「教育行政学概論」、「教育法学概論」、「教育経営学概論」、「教育社会学概論」、「現代社会と子どもの学習」、「学校教育の歴史と現状」などです。バラエティに富んだ授業を担当していますが、ほぼ全ての授業を通じて一貫しているのは、ソクラテス・メソッドを用いて「問いを重視した対話型授業」を行っている点と、その媒介ツールとして「グループ・ワーク」を併用している点です。

 

以下、2つの方法について日頃から意識していることを述べたいと思います。

 

第1は、「ソクラテス・メソッド」です。
このメソッドは、教員が一方的に講義を行うのではなく、学生と学生、学生と教員の間のディスカッション形式を軸としながら授業を展開させていくというものです。諸説ありますが、このメソッドは、①「テーマ設定」、②「論点マップ」、③「クエスチョンハンドリング」、④「論点整理」から構成されると説明されることが多いものです。①「テーマ設定」では、学生にとって身近なテーマを選択し、「具体的な問い」を複数設定します。授業では、個別具体的な問いから抽象的な問いに至るまで、様々な角度から「問い」を提示します。②「論点マップ」では、「問い」に対して想定される議論の展開を描き、論点をマッピングしていきます。学生の皆さんは就学前教育、初等中等教育とこれまで豊富な教育経験を体感・蓄積してきていますが、その教育を取り巻く、あるいは方向づけている制度・法・ルールにはどのようなメリットとデメリットがあるのか、また主にマスメディア等を通じて構築され、巷で溢れる「教育問題」は誰にとっての「問題」であるかなど、問題認識に至る過程とその要因、問題の構造を論理的に考える機会を提供するように心がけています。③「クエスチョンハンドリング」では、グループから出された意見や視点を時間の許す限り丁寧に拾い上げます。この段階では、次に述べる「グループ・ワーク」の取り組みが成否を握るカギとなります。④「論点整理」では、議論の全体の構図を再度描きながら、グループから出された意見の共通点や相違点、さらには取り上げられなかったアプローチや見解を紹介し、学生個人の意見を全体の構図の中に位置付けるようにしていま す。

 

第2は、「グループ・ワーク」です。

グループワークの方法については、授業の特性や受講人数の多寡によって柔軟に変えていますが、私がグループ・ワークを活用する理由は、①全体像を考える、②分析的に考える、③他の視点で考えるといった議論における多様な視点をぜひとも習得してもらいたいと考えているためです。学生の皆さんがこれまで受けてきた教育経験は、多種多様であり学生にとっては唯一無二のものであることに間違いありません。ただ他方でその教育経験は絶対的な「正しさ」を有するものであるとは限りません。従って、「教職」をキャリア選択の1つに位置付けている学生には、ぜひ個人の教育経験を一度相対化してもらいたいと考えています。この点に、特定のテーマに基づいて、他の学生と意見交換をすること、すなわち、グループ・ワークやグループ・ディスカッションの意義があると考えています。なお、より教育効果を引き出すために下図のような多様な方法論を取り入れて授業展開を行っています(森時彦他編『ファシリテーターの道具箱』ダイヤモンド社,2008年、より引用)。

 

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教育方法論に関する専門的トレーニングを本格的に受けてきたわけではない中で、試行錯誤している毎日です。高大接続が謳われる中で、現場の諸先生方からも多くの知見を摂取できたらと考えています。